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【高速家事スキル】を隠す少女は、食料難の孤児院を最強の料理で救う  作者: 紫陽花


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冒険者組合へ

 優菜は、完成させた携帯食料を手に、ロンドの街の冒険者組合を訪れた。組合のロビーは活気にあふれていたが、優菜の姿を見た瞬間、周囲の冒険者たちはざわめいた。彼らの多くは、優菜がギルド連合から嫌がらせを受けていることを知っていた。


 組合マスターのバルカスは、優菜の来訪を驚きながらも奥の部屋に通した。優菜は試作品を机に並べ、「ロンドの新しい冒険者用携帯食料」だと説明した。


 その携帯食料は、手のひらに収まる、筒状の携帯食料だった。サイズは大人の握りこぶしより一回り大きく、中身は金属製の容器に詰められていた。この容器の密閉に用いられているのは、硬い紙を加工した特殊な素材で作られた蓋で、軽量でありながらも頑丈な造りになっている。優菜は容器を指し示しながら説明した。


「これは、長期遠征でも半年以上、最高の風味と栄養価を保てるようにした料理です。通常の保存食では考えられない、濃厚なミルククリームを使った伝統の煮込みをそのままパッケージしました。蓋を外せば、そのまま火にかけて温めることもできます」


 バルカスは信じられないといった様子で、小さな試作品を手に取った。彼はこの街で何十年も冒険者を見てきたが、料理を長期保存できるなど、聞いたこともなかった。


 優菜の勧めもあり、バルカスは恐る恐る一口試食した。


 次の瞬間、バルカスの顔は驚愕に染まった。それは、単に「腐っていない」というレベルではない。濃厚なミルクの甘み、肉の深い旨味、そして懐かしいハーブの香りが口いっぱいに広がり、さきほど作られたばかりのような完璧な味がしたのだ。


「な、なんだこれは……馬鹿な!」


 バルカスは立ち上がり、試作品を握りしめた。


「な、なんだこれは……!この濃厚なミルクと肉の深み、そして後から広がるハーブの芳醇な香り!俺は、こんなにも完璧な煮込み料理を口にしたことがないぞ!それが、なぜ、まるでさっき火からおろしたばかりの味で、半年も持つんだ!?」


 しかし、バルカスはすぐに冷静を取り戻した。


「すまない、優菜さん。半年持つという話は、実際に半年経ってみないと誰も信じられん。だが、この味は本物だ。すぐに販売はできないが、試作品をいくつか預からせてくれ。一週間後に、組合から正式に『一週間賞味期限保証』として発表させてもらう。一週間でも、これまでの保存食より格段に優れている。その後の評判を見て、徐々に保証期間を延ばしていくという形にさせてほしい」


「はい、それで結構です。よろしくお願いします」


 優菜は、組合の慎重な姿勢に納得し、頷いた。




 一週間後。冒険者組合から「ロンドの新しい携帯食料は、一週間は風味を損なわず保存可能」という発表が出されると、その圧倒的な美味しさと短期間とはいえ常識を覆す保存性は、街の冒険者たちに衝撃を与えた。


 優菜の携帯食料は、瞬く間にロンドの街の冒険者たちに広まった。価格は手頃で、品質は市場のどの保存食よりも優れている。優菜の店は活気を取り戻し、優菜を苦しめていた商会ギルド連合の物資の買い占めは、その経済的な意味を完全に失った。優菜の携帯食料さえあれば、遠征に食料を供給するギルドの独占は崩壊するからだ。


 この事態を重く見た商会ギルド連合の代表、ゼクトは激怒した。彼の背後には、ゲオルグが突き止めた通り、王都の巨大商会が控えていた。


「あの女、我々の縄張りを根底から崩しに来たぞ!ただのパン屋風情が、なぜ錬金術師にしか扱えないはずの技術を持っている!?」


 ゼクトは直ちに行動に移した。単なる嫌がらせでは効かない。彼は、優菜の技術が「危険な魔術」に基づくものだというデマを流し、さらに物理的な圧力をかけることを決意した。


 その夜、優菜の家の子どもたちが寝静まった頃、裏庭で火を熾した小さな精製場所が、ギルド連合の実行部隊によって完全に破壊された。

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