冒険者組合へ
読者の皆様へ
ここまで読み進めていただきありがとうございます。
とても嬉しいです!
ルークは、優菜から託されたコロッケサンドイッチの包みを胸に抱え、一人で冒険者組合へ向かった。
組合の重い扉を押し開けると、朝にも関わらず、組合内は既に賑わっていた。ごった返す冒険者たちの中から目的の人物を探した。
組合の奥のテーブルにライルはいた。パーティーメンバーだろうか、三人でテーブルを囲んでいた。
ルークはライルを見つけると、胸を張って彼らのテーブルへ向かった。
「あの、ライルさん!」
ルークの突然の呼びかけに、ライルは顔を上げた。ルークを一目見るなり、ライルの表情が柔らかくなった。
「おや、君は。昨日、ユウナと一緒にいたこだね」
「はい!僕はルークです!」
ルークは元気にライルに名乗った。
ライルは笑顔で頷き、テーブルを囲む二人に目を向けた。
「こっちは俺のパーティメンバーだ。昨日ユウナさんにぶつかったアレンと、こちらはリリアだ」
ルークは二人に会釈をした。アレンは少しバツの悪そうな顔をしたが、すぐに真剣な表情になり、ルークに頭を下げた。
「ルーク。昨日はユウナさんに迷惑をかけた。俺の不注意だ。すまなかったと伝えてくれ」
「うん!わかった、アレンさん!」
ルークは快活に頷くと、両手で持っていた包みをライルに差し出した。
「これ、優菜姉ちゃんからです!あの後、無事に買い物ができたんです。そのお礼だって!」
ライルが包みを受け取ると、ルークは続けて言った。
「これは、コロッケサンドイッチっていうんです。優奈姉ちゃんの作った特別なソースが入っていて、すごく美味しいんですよ!」
ライルは興味深げに包みを開けた。その瞬間、コロッケと特製ソースの複雑な香りが、周囲に広がり始めた。それは、この世界の食事では嗅いだことのない、食欲を強くそそる魅惑的な匂いだった。
ライルたちのテーブルに近い場所にいた数名の冒険者たちが、その匂いの変化に気づき、一斉に動きを止めた。
「なんだ、この匂いは?!」
「くっそ、腹が鳴っちまう!こんな美味そうな匂い、初めて嗅ぐぞ!」
「どこだ、この匂いのもとは!」
ざわめきと好奇心に満ちた視線が組合の奥に集まる。その匂いの中心にいたのは、ライルが手に持つコロッケサンドイッチだった。ライルのパーティーメンバーも、その見た目と香りに驚き、息をのんでいる。
ライルは周囲の騒ぎを気にせず、コロッケサンドイッチを一口食べた。その途端、ライルの顔が感嘆で満たされた。
「う、美味い!コロッケサンドイッチ初めて食べたよ!このソースと、パンの柔らかさ!昨日の疲れが吹っ飛ぶようだ!」
その様子を見て、アレンがゴクリと唾を飲んだ。
「おい、ルーク。その包み、他にもまだ残ってないか?」
リリアも前のめりになった。
「私たちにも分けてもらえないかしら?お願い!」
ルークは慌てて鞄の中に入っている包みを守るように、鞄を抱きしめた。
「あ、あの……これは、僕のお昼ご飯の分なんです。ごめんなさい……!」
ルークは、二人にも優菜が作った美味しいコロッケサンドイッチを食べてもらいたかったが、優菜が自分に作ってくれたものなので、断った。
「……そうか。ルークくんの分なら仕方ないな」
アレンは残念そうに肩を落とした。
その時、リリアがライルに声をかけた。
「ライル!一口だけ!ね、ちょっと味見させてよ!」
しかし、ライルは即座に残りのコロッケサンドイッチを丁寧に包み直すと、誰にも見えないように素早く自分の鞄の中にしまった。
「だめだ。これはユウナさんから特別にもらったものだ。それに、一口なんてあげたら、お前たちに全部食べられそうな気がするからな」
ライルはそう言って、笑った。
「ありがとうな、ルーク。お姉さんに、美味しかったと伝えてくれ。これで今日の依頼も頑張れそうだ」
ルークは、自分の役割を果たせたことと、ライルが喜んでくれたことに満足し、満面の笑みで組合を後にした。
リアクションをくださった方へ
執筆を進めるうえで、励みになっています。応援いただきありがとうございます。