コロッケサンドイッチ
次の朝、子どもたちは目を覚ますと同時に、昨日もらった新しい服に袖を通した。鮮やかな青いワンピースを着たティナと、黄色のスモックを着たマヤとミリーは、嬉しい気持ちを隠し切れないのか、グルグルと回ってお互いの洋服を見せ合っていた。
「優菜姉ちゃん、見て!すごく動きやすいよ!」
とルークが茶色の丈夫なズボンを叩いた。
優菜も、新しく作った自分の青いワンピースに袖を通した。動きやすいシンプルなデザインだが、生地がしっかりしているだけで、気分が引き締まる。
「うん、みんな似合ってるよ!」
優菜はキッチンに立ち、オーブンに目をやった。ルークが昨夜スタミナ保存食を作ってくれたおかげで、今日は朝の作業はいつも以上に余裕があった。
優菜は【高速家事スキル】を使い、金色の甘いパンを50個、コロッケ10個、シナモンロールを5個作った。丸く焼かれた黄金色の甘いパンは、全部で50個。
焼き上がったパンの中には、焦げ目にわずかなばらつきがあったり、形が少し崩れてしまったものが10個あった。優菜は黄金のパンとして品質に問題があり、売り物にならないパンをよけた。そして、その10個のパンの中央に切り込みを入れていく。
「今日は特別に、これを作るよ」
優菜は、千切りにした新鮮な野菜と、ソースをかけたコロッケをパンの切込みに挟んだ。コロッケサンドイッチの完成だ。全部で10個。
優菜はコロッケサンドイッチ二つを丁寧に包み、ルークに手渡した。
「ルーク、市場に行く前に、少し寄り道をお願いしたいの。冒険者組合に行って、この包みの一つをライルさんに渡してきてくれるかな?昨日無事に小麦粉を買えたことを伝えてほしいの。これはお礼の品よ。二つあるから、もう一つはルークのお昼ご飯の分よ。今日は私も一緒に市場に行くわ。私とティナさんは一緒に貴族街の入り口近くで、二人でパンを売るから、ルークはライルさんにコロッケサンドイッチを渡したあとは、そのままスタミナ保存食を売りに行ってほしいんだけど、一人で大丈夫かな?」
ティナは驚いた。
「え?今日は市場に一緒にいくの?」
「うん。たまには一緒に行ってお客さんの反応とかも見たいしね。」
ティナは自分がどのようにして、いつも優菜が作ったものお客さんに勧めているか、優菜にいいところを見せたいなと心の中で気合をいれていた。また、ルークは昨夜に続いて、一人ですべてを任せてもらえるということは一人前になったような気がして嬉しかった。
「優菜姉ちゃん任せて!一人で僕の作ったスタミナ保存食売ってくるよ!」
優菜は、ティナと優菜の昼食用とゲオルグさんへのお土産用として三つのコロッケサンドイッチを包み、ほかにも市場でお世話になっている人たちのためにお土産として、シナモンロール5個を包んだ。黄金色の甘いパン50個は大きな布にまとめた。
「残りの五つのサンドイッチは、お留守番のエマたちみんなの今日の昼食分だから、冷蔵庫に入れておくわね!」
優菜はエマたちにそう伝え、市場へ向かう準備を整えた。
優菜とティナは大きな荷物を二人で分け、戸口へ向かった。ルークはバックに、自分が作ったスタミナ保存所とコロッケサンドイッチ2個を入れ、二人に続いた。こうして、子どもたちは皆、新しい服に身を包み、それぞれの仕事へと向かった。