オークの肉とマヨネーズ
優菜は、約束の場所である広場に着いた。大きな石の噴水のそばで、ルークとエマとコリン、そしてティナが優菜を待っていた。優菜を見つけると同時に、エマとコリンが歓声を上げて駆け寄ってきた。
ルークは、少し離れたところで、優菜の姿を静かに見つめて立っていた。
「優菜姉ちゃん!聞いて!銅貨五枚でね、すっごく甘い木の実を買ったの!コリンと半分こしたよ!」
「僕、焼いた肉の串を買った!ルーク兄ちゃんと分けて食べるんだ!」
子供たちは、優菜が渡した銅貨五枚をどう使ったかを、小さな冒険を成し遂げたように、誇らしげに報告した。優菜は、彼らが普段の生活では買えないようなごちそうを選びながらも、分け合って食べることを考えていることに、優しさを感じた。
「すごい! 上手にお買い物ができたね」
ルークは優菜を見て、口を開いた。
「優菜姉ちゃんがちゃんと戻ってきてくれると思ってたよ。約束したもんね」
ルークのその言葉には、過酷な世界で生きてきたルークの過去が見えたような気がした。優菜は、まっすぐにルークの目を見て、柔らかく微笑んだ。
「私たち家族でしょ。もちろん帰ってくるよ」
ルークは「家族」という言葉を聞いた瞬間、驚いたように目を見開いた。そして、自分に言い聞かせるように、
「うん、うん。もう僕たち家族だよね」
と嬉しそうに笑った。
「そういえば、ティナさんとルークは何を買ったの?」
ルークはポケットから小さな紙を取り出した。
「家には本がないから、絵を買ったんだ。絵本は高かったら買えなかったけど、これなら小さいミリーでもわかるだろう?」
自分のものを買わずに、みんなのことを考えて買ったお土産には、ルークの心のようにカラフルできれいな花が描かれていた。
「とっても素敵な絵ね。飾っておいたら、きっと家の中がもっと明るくなるわ」
ルークは、とても誇らしそうに頷いた。
「私は髪飾りを買ったの。優菜さんとお揃いにしたんだけどもらってくれるかな?」
ティナは小さな花の飾りがついた髪飾りを優菜に差し出した。
「ええ?私に?とっても嬉しい!ティナさんありがとう!」
優菜はティナから髪飾りを受け取り、大事に鞄にしまった。
「優菜さんは何を買ったの?」
ティナは、優菜に髪飾りを受け取ってもらえてほっとした様子で、優菜に尋ねた。
「まだ秘密だよ!楽しみにしてて」
みんな優菜が買ったものが気になったが、とても優菜が楽しそうに笑っているので、無理に聞き出すことはせず、楽しみに待つことにした。
「じゃあ、明日の仕入れもしてから帰ろうか。」
優菜たちは、再び市場の奥へ向かった。
優菜は、まずいつもの八百屋に向かい、傷物や規格外で安く売られている野菜を探した。これらは調理すれば、十分みんなの食事のかさ増しにできる。
「すみません、この傷のあるキャベツと、変形したカブをまとめて買いたいのですが、全部でいくらになりますか?」
店主は、優菜を常連客として認識していた。優菜の真剣な表情を見て、すべてを格安で譲ってくれた。優菜はさらに、常備菜の基本となるジャガイモと玉ねぎを多めに購入した。
次に、肉屋へ。優菜は干し肉の改良に使うため、筋が多く、煮込みにしか使えないような安い肉のブロックを仕入れた。支払いを終えた後、優菜は店主に尋ねた。
「すみません、安くて美味しいお肉はありますか? 少しくらい脂身があっても構いません」
店主は、優菜の尋ね方から、彼女があまり肉の種類に詳しくないことを察した。
「そりゃ、ガキにはオーク肉が一番だ。魔物だから、みんな敬遠しがちだが、筋はちと多いが油も甘くて旨いし、安いぞ。手間をかければ、豚よりおいしいぞ。こいつは明日のみんなの食事用だろ?サービスで多めに入れとくよ」
優菜は、オーク肉という単語に驚きつつも、それが安くて脂身が多いという点に注目した。オーク肉も購入リストに追加する。
(今日もみんなに美味しいご飯を作ろう)
それから優菜は、この世界の調味料のバリエーションの少なさに不満を感じていたため、まずは手軽に味が変えられる調味料、マヨネーズ作りのために卵と、精製度の低い油を雑貨屋で購入した。そして、販売用のパンを焼くために小麦粉を多めに買い足した。