子供たちの奮闘
同じ頃、孤児院では優菜と残りの子供たちが、役割分担を実践していた。
優菜は、まずロディ(9歳)にホウシの葉を100枚摘むための場所と、丈夫な葉の見分け方を教えた。ロディは、優菜が時間のかかる「容器の準備」を自分に任せてくれたことに喜びを感じ、裏山へと向かった。
次に、優菜はエマ(11歳)とコリン(6歳)を川へ連れて行った。エマは優菜の指示通り、力強く根菜を洗い、傷んだ部分を切り落とす。
「エマ、素晴らしいわ。その調子で、土を完全に落としてね」
コリンはエマの隣に座り、優菜から与えられた『補助』の仕事に集中した。
「コリン、エマお姉ちゃんが洗い終わったホウシの葉、きれいにならべてね。しわにならないように、大事に並べるのよ」
コリンはまだ幼く、水で遊んでしまいそうになるのを必死で我慢した。しかし、優菜が「これは大切な仕事よ」と繰り返すことで、彼は責任感を抱いた。きれいに並べられたホウシの葉は、優菜がすぐに惣菜を包み始めるための『清潔な容器』となるのだ。
優菜は、子供たちが作業に集中し始めたのを確認すると、孤児院に戻った。
調理は、朝の仕込みと下ごしらえが終わったため、ひとまず一段落ついている。昨夜、今日から二十個作ると宣言したものの、子供たちの手伝いは今日からだったため、ホウシ草を追加で摘みにいったりと、今朝はいつもより早く起きて準備をした。昨日までなら、この時間も優菜はひたすら、掃除や洗濯、夕食や明日の総菜の下ごしらえなどに追われている。しかし、今は時間が空いている。
役割分担がうまくいってるということと、小さな子供まで手伝いをしてくれることに優菜は感謝した。そして、この機会に孤児院の環境改善に取り掛かることにした。
「調理以外の家事...修繕も『家事』に含まれるはずよ」
優菜は、破損した窓枠、軋む床板、そして雨漏りしそうな屋根の一部へと視線を向けた。優菜は、どこからか見つけてきた道具と、孤児院の裏に捨てられていた木の切れ端を手に取った。
【高速家事】が発動する。
カン、カン、カン!
彼女は通常なら大工が何時間もかけて行う作業を、驚くべき速度で進めていった。木材を切り、釘を打ち、ひびの入った壁に泥を塗り込む。その動作は、すべてが完璧に最適化されており、無駄がない。
誰もいない孤児院の中、優菜はまさに一人で修繕部隊と化していた。ロディがホウシの葉100枚を抱えて戻ってきた時には、優菜は調理場ではなく、磨き上げられた床板の上に立っていた。
「ロディ、すごい!ありがとう!」
「優菜お姉ちゃん、できたよ!しわのない、丈夫な葉っぱだけを選んできたよ!……あれ?優菜お姉ちゃん、床がピカピカになってる!」
ロディは、疲労を忘れて床を見つめた。優菜は笑って応えた。「うん。みんなが頑張ってくれたから、空いた時間で『お掃除』をしたのよ」