犠牲になった王女と部外者
これはこのアンソロジーの最新話です。皆さんに楽しんでいただければ幸いです。
アンソニー・ジョンソンはロサンゼルスのアパートで、薄暗い光がブラインドの隙間から差し込むのを見つめていた。街は休むことなく動いているが、彼だけがいつもずれているように感じた。
思春期の学校の廊下を思い出す。耳に残る言葉。
「細いやつ、ゲイに違いない」
「俺たちみたいには絶対になれない」
幼い頃から、アンソニーはコミュニティが求める「アフリカ系アメリカ人の理想像」、すなわち筋骨隆々で支配的な男性像に合わなかった。繊細な感性、細身の体格、内向的な性格は欠陥と見なされてきた。自分はどこにも居場所がないのではないかと、常に思った。
しかし、心の奥では何かが抵抗していた。絵画、ファッション、アート──それが彼の避難所であり、生き延びる方法であった。しかし、愛するものさえも、孤独を埋める道具なのか、本当に愛しているのか、疑問が残る。
遠く東京のアパートで、仲島音女は鏡の前で自分を見つめていた。目は何かを探している。受け入れられる感覚だ。
12歳から急成長した体。胸は異常に大きく、学校では男子たちの注目の的になった。彼らの視線は、欲望や嘲笑しか映さなかった。大人もさりげなく距離を置き、両親でさえ、その巨乳に戸惑いを隠せなかった。
音女は完璧な娘、優等生、理想の友人になろうと努めた。しかし18歳の時、気づいた。完璧さは偏見を消さない。
そこで彼女は受け入れた。自分の身体も運命も。グラビアアイドルとして世界に名を馳せ、魅力を誇示し、同時に客観的に評価される存在となった。
ある下着雑誌がロサンゼルスでの撮影に招待した。光とカメラの間で、アンソニーと音女は出会った。
互いに認め合うような瞬間、そして安堵。二人のアウトサイダーとしての共鳴が生まれた。
しかし、世界は冷酷だった。近所の人々の視線、ささやき。
「見ろよ、ゲイの彼氏がいる」
「こんな娘、彼の彼女になるわけがない。友達のフリだろ」
一つ一つの視線や囁きが、アンソニーの胸に刺さる。しかし、それは同時に、二人が世界から拒絶される運命にあることの確認でもあった。
アパートで、アンソニーは問いかける。
自分の心は本当に愛なのか、それとも孤独を埋めるための渇望なのか。
彼のアイデンティティは常に揺れていた。人々はゲイだと決めつけるが、彼自身は答えを持っていない。
音女もまた、自分は愛される資格がないと感じる。
胸の大きさが人々の嘲笑を呼び、出会う男性は彼女を「人」として見ない。
どの褒め言葉も空虚に響き、善意の行動すら疑念に変わる。
ある夜、アンソニーは決意した。足取り重く、音女のアパートへ向かう。
彼女は穏やかな笑顔で迎えたが、その瞳には恐れと期待が交錯していた。
アンソニーは息を整える。
「音女…俺は自分が何者かも、何を感じているのかもわからない。でも、君と一緒にいたい。孤独を埋めるだけじゃなく、君がいると生きる意味を感じられるんだ」
音女はその瞳を見つめる。初めて、自分が見られているのは物体としてではなく、人としてであることを感じた。
唇が震える。
「アンソニー…私も…私もあなたを」
二人は唇を重ねた。
その瞬間、現実は崩れた。
接吻は単なる愛の行為ではなく、二人の人生、孤独、承認、絶望と希望が収束する点となった。
二人の身体は融合し、魂は絡み合い、鋼鉄の溶けた巨大な混沌の神として生まれ変わった。
その存在は制限も境界も持たず、世界に広がる。
光る金属の破片一つ一つが、彼らの自由、偏見からの解放を象徴する。
しかし、その混沌の中に、互いを認め合う糸は残る。孤独や排斥に抗った二人の愛の証である。
この話を楽しんでいただければ幸いです。次の話をすぐにアップロードします。




