トム・ピプキンは異世界にテレポートした引きこもりからのメモを見つける。
これはこのアンソロジーの最新話です。皆さんに楽しんでいただければ幸いです。
トム・ピプキンの記録:「異世界転送局にて」
みんな、やあ! トム・ピプキンだよ。
さっき、とても奇妙なメモを見つけたんだ。だから今、**ヒキコモリやニートを異世界へ転送する神々の局(Bureau of Gods)**へ向かっているところさ。
ここがその本部の建物だ。
俺は今、神オスフェロ(Osfero)と会っている。
オスフェロの姿は――高さおよそ2メートルの鉄でできた立方体。
「よう、オス!! 久しぶり!」
「おお、トム! 久しぶりだな。今日はどうした?」
「妙なメモを見つけたんだ。」
「メモだって?」
「そう、これを見てくれ。」
オスフェロは俺の手からメモを受け取り、読み上げ始めた。
『この手紙を読む誰かへ。
俺は呪われているのかもしれない。
地球から異世界へ召喚されたんだ。そこは雪の降る世界で、住民たちの目はみんな紫色をしていた。
冒険者ギルドを探しに歩き出そうとした、その瞬間――俺は別の異世界に転送された。
次の世界は、灼熱の気候で、住民の目はみんな茶色。
通りを歩く巨乳の美女を見かけて、名前を聞こうとした瞬間、また転送された。
三つ目の異世界は、砂漠で、遠くにオアシスが見えた。
そこに人影があった気がして走り出したが、たどり着く前にまた転送。
四つ目の異世界は、雲の上に築かれた都市だった。
夜明け前のようで、薄暗い空に朝日が差そうとしていた。
誰かに話を聞こうと扉をノックしようとしたが、その前にまた転送された。
それからずっと、この奇妙な現象に閉じ込められている。
この手紙を読む者がいるなら、どうか助けてほしい。
敬具:キ……』
「これで終わりか?」とオスフェロが尋ねる。
「ああ、そうだ。」
「お前は“全てを見通す者”だろう。この手紙を書いたのが誰か、もうわかっているんじゃないのか?」
「そう簡単じゃないんだよ。」と俺は肩をすくめた。
「無限に存在する並行宇宙を同時に観察するってのは、百万台のテレビを一度に見るようなものさ。
理論上は探し出せるけど、それじゃあ面白くないだろ?
だからこうして、直接ここまで来たんだ。
で、どうなってるんだい?」。
オスフェロは鈍く光る立方体の体を微かに震わせて言った。
「どうやら、私たちのテレポート局の書類手続きにミスがあったらしい。
そのせいで、この特定のヒキコモリの転送にバグが生じたようだ。」
「君たちの局が、どうしてそんなミスを?」
「私たちは忙しすぎるんだよ、トム。
ほとんどの神々は、自分のノルマをこなすだけで精一杯だ。
わかるか? どれほどの数のヒキコモリやニートが、無数の地球のバージョンから毎日異世界に転送されているか?
空にある星の数より多いんだ。」
「……それは大変ですね。」
「昔はもっと酷かったんだ。」
オスフェロは低く響く声で続けた。
「以前は、我々の局が転生の仕事まで兼任していた。
その頃は、我々神々ですら眠る暇もなかった(まあ、眠る必要はないんだが)。
だが、『ヒキコモリとニートを異世界に転生させる神々の局』が新設されてからは、仕事量が半分になったんだ。
すべてはティシアナ様のおかげだよ。」
この物語を楽しんでいただければ幸いです。次の作品をすぐにアップロードします。




