勇者と女勇者は結婚した
これはこのアンソロジーの最新話です。皆さんに楽しんでいただければ幸いです。
成瀬川綾人と清宮山綾香は、新婚ほやほやの夫婦だった。
十八歳の綾人は背が低く、細身の青年。
三十六歳の綾香は、美しく成熟した熟女で、豊満な体つきをしていて、すごく爆乳でした。
しかし、二人にはそれぞれ――互いにまだ打ち明けていない秘密があった。
綾人は、伝説の巨獣の守護者。
そして綾香は、誰もその存在を知らない《イザナギの洞》の守護者だった。
イザナギの洞は、この世のあらゆる未来――善も悪も――をその奥底に秘める、計り知れない価値を持つ場所。
長い長い時を経て、洞窟そのものは意思を持つようになり、敵を求めて世界をさまよい続けていた。
太陽を飲み込んでも生き残るほどの存在。だが、これまで一度も、戦うに値する相手に出会ったことがなかった。
それの存在は誰も知らないですから。
――そして、その夜。
新婚初夜の風呂場で、ついに《イザナギの洞》は《ヨルムンガンド》と対峙した。
湯気の中で始まったのは、天地を揺るがす一騎打ちだった。
そのとき、綾人は気づいてしまう。
綾香は――バンシー(妖精)だったのだ。
美しく透きとおる声を持つ綾香だが、彼女の「バンシーの叫び」は近所中を震わせた。
イザナギの洞とヨルムンガンドの戦いは、互角の末、決着がつかぬまま夜が明けた。
翌朝、怒れる近所の住人たちが次々と家の前に押しかける。
「いくらバンシーでも、夜中にそんな大声を出すなんて!」
そう叱られても、綾香は変えられない。
バンシーであることは、彼女の本質そのものだった。
――そして、二夜目。
イザナギの洞とヨルムンガンドは、再び浴室で激突する。
その瞬間、綾香は前夜を超える叫び声を放った。
その声は、風のように、光のように、町全体を包み――
町は、まるで一枚の布をひっくり返すように、
小さな新しい世界へと姿を変えた。
この物語を楽しんでいただければ幸いです。次の作品をすぐにアップロードします。




