異世界で女勇者たちが神の天使になる
これはこのアンソロジーの最新話です。皆さんに楽しんでいただければ幸いです。
ソウタは日本のとある町に住む十八歳の引きこもりだった。
背が高く、細身すぎるの体。
彼の心はいつも暗く冷たい影に包まれていた。
両親は「厳しすぎる(厳しすぎる)」タイプの教育者で、成績が期待通りでなければすぐにソウタを罵った。
「お前なんか、何の価値もない」
「どうして他の子みたいにできないの?」
そんな言葉を浴び続け、ソウタの心は少しずつ壊れていった。
友達もいなければ、恋人もいない。
毎日が同じ灰色で、息をする意味さえ見失いそうだった。
そんなある日、空からふわふわと漂っていた「超微小の異世界」が、偶然ソウタの鼻の中に入った。
「へくしっ!」
大きなくしゃみとともに、異世界はソウタを吸い込み、彼の姿はこの世界から消えた。
気がつくと、ソウタは見知らぬ草原に倒れていた。
そこは「コクスタン」と呼ばれる異世界だった。
しかし──異世界に来たからといって、彼の人生が劇的に変わるわけではなかった。
友達もできず、仕事もなく、孤独な日々が続いた。
ソウタの人生は、こちらの世界でも「不幸」のままだったのだ。
ある日、彼は五人の勇者の女性と出会う。
名前はアイシャ、ファティマ、タイラリア、アーニャ、そしてサラ。
全員が「アカル・マエ」という神を信仰していた。
この神は「正義の神」。
悪は罰せられ、善は報われる──それが彼女たちの揺るぎない信念だった。
しかし、ソウタの過去を聞いたとき、彼女たちは言葉を失った。
「……今まで、本当に何もいいことがなかったの?」
「うん。一度も。」
彼女たちは心の奥底で震えた。
それは神の正義そのものを揺るがす話だった。
彼女たちは賢者のもとにソウタを連れて行き、記憶を読み取らせた。
そして、すべてが真実であると確認したとき──女勇者たちの信仰は静かに、しかし確実に崩れ始めた。
「善人が報われる世界」
それが揺らいだ瞬間だった。
その夜、アイシャ、ファティマ、タイラリア、アーニャ、サラの五人は、それぞれ眠れぬ夜を過ごしていた。
「もし神が彼を祝福してくれないのなら……私たちが彼の祝福になればいい」
みんな別々の場所でそう思った。
そして夜更け、彼女たちは一人、また一人とソウタの部屋へと向かった。
扉を開けると、互いに鉢合わせ──驚き、そして笑った。
みんな、同じ気持ちだったのだ。
「……ソウタ」
アイシャがそっとベッドに近づき、彼の手を握った。
「あなたの人生には、価値があるわ。あなたは愛されていい人なの」
ファティマが震える声で続けた。
「もし、あなたが望むなら……今夜、私たちはあなたと一緒にいたい」
ソウタは目を見開いた。
夢だと思った。
けれど、彼女たちの手の温もりは本物だった。
「……ぼ、僕なんかに……いいの?」
「ソウタが望むなら」
五人は声をそろえて言った。
涙が頬を伝い落ちる。
彼の人生で、こんなにも誰かに受け入れられた瞬間はなかった。
「うん……僕、望む……!」
その夜、五人の勇者たちはソウタと静かで温かい夜を過ごした。そして彼らはみんな枕を交わした。
互いの想いが重なり合い、優しく包み込むような時間だった。
暗い部屋の中、聞こえるのは静かな吐息と鼓動だけ。
ソウタはその温もりの中で、生まれて初めて「愛される」という感覚を知った。
彼は泣いた。
悲しみではなく、あふれる幸福の涙だった。
この話を楽しんでいただければ幸いです。次の話をすぐにアップロードします。




