彼は私を愛していたが、私の理想のタイプではなかったので、完璧な恋愛ができるように彼を転生させたのです。私は悪役令嬢になりましたか。
これはこのアンソロジーの最新話です。皆さんに楽しんでいただければ幸いです。
クモガワ・サヤカは17歳の女子高生だった。
学校一の美少女というわけではないが、愛らしい顔立ちをしている。
少しぽっちゃりしていて、見た目はまるでマシュマロのよう。
サヤカは乙女ゲームが大好きで、心の底から「イケメン男の彼氏がほしい!」と願っていた。
しかし、クラスの中に何人かいる美少年たちは、サヤカには目もくれなかった。
その高校の男子たちは皆、細くて背の高い“アイドル系美女”にしか興味がない。
ただ一人――コウジを除いては。
コウジは背が低く、ひょろっとした体型で、髪もぼさぼさのいわゆる「ヒキオタ」タイプ。
そんな彼は、密かにサヤカを想っていた。
それはもうバレバレで、実際にラブレターまで渡している。
だが、サヤカにとってコウジは「理想のタイプ」ではなかった。
だから彼女はフレンドゾーンに押し込み、返事もせずに避け続けていた。
傷つけたくなかった――でも、正直、気まずかった。
そして何より、彼女は未だに「イケメン男の彼氏」を手に入れられていなかった。
✧
ある日、テストの時間。
サヤカがペンを取り出そうとカバンを開けた時――
カバンの中の暗い奥に、それはあった。
それは、まるで星雲のかたまりのような光を放つ毛糸玉だった。
何百万もの色が混ざり合い、息を呑むほど幻想的な輝きを放っている。
その毛糸玉の正体は、「存在」――
無限に存在するパラレルユニバースと次元すべてをカバーして、そして四大神の一つ神だった。
四大神は合わせて、唯一の全能神「ゼンタイ」を形成している。
ゼンタイの姿は擬人化されたミアキス(史前の肉食哺乳類)を思わせる神獣。
ソンザイは毛糸の腕を伸ばし、サヤカに一本の奇妙なペンを手渡した。
それはまるでアニメのメカロボットのような形をしていた。
さやかは、それはすべて気の所為だけだと思った。
テストの後、家に帰ったサヤカは、自分の状況についてぼんやり考えた。
――コウジは優しい。でも、私の理想じゃない。
――でも、イケメン男の彼氏もできない。
ふと、心の中でつぶやいた。
「……コウジがイケメン男だったら良いなあ。」
そして、思いつきでその珍しいメカ・ロボットの姿を持つペンを使ってノートに物語を書いた。
――コウジが美少年に変わる物語。
✧
翌朝。
教室に知らない美少年が立っていた。
よく見ると、それは――コウジだった。
驚くサヤカ。
昨夜、書いた物語が現実になっていたのだ。
コウジは今や、まぶしいほどのイケメン男。
サヤカはすぐに彼との交際をOKし、二人は恋人になった。
✧
付き合い始めて数日。
サヤカはデートのたびに気づいていった。
――コウジは、実はとても面白くて、優しくて、
――ずっとそばにいてくれた、素敵な人だったんだ。
彼女はずっと「男たちの見た目」に縛られていた。
世界中の人間が、見えない鎖に囚われている。
**「見かけの世界」**の中で生き、
**「本質の世界」**を見ようとしないまま生きている――。
その時、サヤカは悟った。
あの毛糸玉の神は幻ではなく、本物だった。
この奇跡はあのペン――「ソンザイのペン」の力によるものだったのだ。
✧
しかし、この力は危険すぎる。
誰かの手に渡れば、世界が歪むかもしれない。
そして何より――
彼女はもう願いを叶えてもらう必要はなかった。
「……ありがとう。もう、大丈夫。」
サヤカはノートに、最後の物語を書いた。
――メカロボット型のペンは、世界を旅する賢者となり、
人々に「本質の世界」を教える旅に出る――と。
✧
翌朝。
ペンは机の上から消えていた。
世界のどこかで、白髪の旅人が歩き始めている――
人々に、見えないものを見る力を授けるために。
この物語を楽しんでいただければ幸いです。次の物語もすぐにアップロードします。
 




