合理的な声の勇者
これはこのアンソロジーの最新話です。皆さんに楽しんでいただければ幸いです。
ヤマトは、自室で穏やかな午後を過ごしていた。
メグミ、マリカ、ミナ、ミサキ――かつては社会のために「道化」として身を捧げた完璧な元アイドルたち。
今はぽっちゃりとした、しかし美しい身体を持ち、自由に、心地よく、日々を過ごしている。
突然、家中が暗闇に包まれた。
停電だった。
ヤマトは目を閉じ、息を整える。
――またか。
彼は知っていた。
これは、彼が彼女たちと暮らし始めて以来、何度も経験した状況だった。
彼女たちは、集団主義的思考の暴政を打破するために日本社会における個人主義的自由の追求の必要性をヤマトが主張するビデオを見た後、スリムで完璧なアイドルとしての以前のキャリアを諦めたのだ。
その停電は一人の狂信的なファン――自分が愛した彼女たちが、アイドルとしての理想的な身体を捨て、自由を選んだことに「裏切られた」と感じる者が現れる合図だった。
ヤマトは静かに立ち上がった。
顔には落ち着きしかない。
彼は戦うのではない。言葉で狂気を打ち砕くために、準備を整えるのだ。
やがて、玄関の向こうで不穏な気配がする。
ファンが来た――怒りと執着に満ちた目を輝かせ、刃物を握っている。
ヤマトは深く息を吸い込み、ゆっくりと口を開いた。
「なぜ君は怒り、憎むのか？
愛したのは彼女たちの理想化された姿だけではなかったのか？
その怒りは、彼女たちを傷つけるだけでなく、君自身をも傷つける。
今、君が選ぶ道は明確だ――警察に自首し、自分の理性を取り戻すことだ。」
言葉は鋭く、しかし温かい。
狂気は一瞬にして揺らぎ、怒りがどんどん消える。
五分も経たないうちに、ファンは震える手で警察に電話をかけた。
ヤマトは静かに微笑む。
彼は守るのではない――ただ、言葉の力で秩序を取り戻すだけだ。
停電の夜が明けると、メグミ、マリカ、ミナ、ミサキはいつも通りの生活に戻っていた。
お菓子を分け合い、笑い、日光の下で身体を伸ばす。
彼女たちはもはや社会の理想など意識していない。
ただ、自分たちの望む形で生きている――ぽっちゃりで、幸福で、美しい。
そしてヤマトは、また次の暗闇に備える。
彼にとっては日常の一部。
ファンがどれだけ狂おうと、彼の論理と演説があれば、彼女たちを守る。
今日も、彼は出て行く。
また一度、言葉の力で狂気を沈めるために。
この話を楽しんでいただければ幸いです。次の話をすぐにアップロードします。
