ジェネシカ・女神たち
これはこのアンソロジーの最新話です。皆さんに楽しんでいただければ幸いです。
宇宙「01110011 01110101 01100101 11000011 10110001 01101111」において、
中村カイトはひとつの夢を見る。
その夢の中で、彼の名を呼ぶ声があった。
その声はあまりにも巨大で、ひとたび響けば全宇宙を粉砕してしまうほどの力を宿していた。
しかし、奇妙なことにカイトの心には恐怖は訪れず、むしろ安らぎと温もりが広がった。
それは、宇宙全体を覆う大きな枕のように柔らかく、母の懐のように心地よい声だった。
彼はその声に導かれるように、光となって宇宙を翔ける。
永劫の時を超え、幾千億の星々を抜け、ただひたすらにその母性的な声の源を探し求めた。
やがて、カイトは宇宙の果てへと辿り着く。
そこには奇妙な光景が広がっていた。
二つの透きとおるような巨大な柔らかい天体――まるで母の抱擁を象徴するかのごとき存在が並び立っていたのだ。
その大きさは宇宙そのものに匹敵し、柔らかに輝いていた。
カイトは二つの柔らかい天体の狭間へと身をすべり込ませる。
幾億の永劫を越えて進むと、その先に彼女がいた。
彼の前に現れたのは、美しく、ふくよかで、優しさを湛えた女神。二つの巨大な柔らかい天体は彼女のおっぱいだった
その名は――ジェシカ。
彼女こそ「創生の女神(ジェネシカ・女神)」の一柱であった。
その時、彼と彼女は何千年も話し始めました。
ジェネシカ・女神たちの役割は、多くの宇宙を生み出して、母乳のような精華を注ぎ込み、多くの宇宙を育み、進化へと導くことであった。
だが、女神は独りではその使命を果たせない。
必ずや伴侶となる「男」を選び、ともに宇宙の循環を紡ぐのだ。
ジェシカは言った。
「カイト、あなたを選んだのは私です。」
カイトは耳を疑った。
宇宙を生む女神が、自分のような人間を選ぶなど――あり得るのか。
彼は夢だと思い、自らをつねった。
だが、目を開けても、そこにはなおジェシカが微笑んでいた。
驚いたカイトは何度も己の頬をつねる。
一度、二度、十度……。
それでも、世界は消えなかった。
女神ジェシカは確かにそこに存在していた。
その瞬間、カイトは悟った。
――これは夢ではない。
――現実なのだ、と。
カイトが夢を見ている間に、ジェシカは彼を本当に彼女の前に連れてきたことが判明した。
こうして中村カイトは、宇宙の果てで女神ジェシカと出会い、
新たなる創世の物語の幕が開いたのである。
この物語を楽しんでいただければ幸いです。次の作品を近日中にアップロードします。




