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カーニバル異世界

これはこのアンソロジーの最新話です。皆さんに楽しんでいただければ幸いです。

並行世界 Z1950AND において――

小柄にして痩身なる一人の御仁、名をショウタロウと申す。彼は日本にて行われし剣術の大競技において第二位を獲得し、その後、休暇の折にフィンランドの地を旅することとなった。


ショウタロウは古き幻想文学を愛する者にして、殊に古代ゲルマンの言葉に通じており、彼の胸中には常に「己の育ちし世界には、魔法や幻想の原始の輝きが失われている」との感慨があった。


されば彼、定められた観光の道を離れ、独り歩み行くうち、幾つかの謎めいた言葉を見出した。彼はこれを解き明かし、遂に知られざる村――ウクルトと呼ばれる地に辿り着く。


その村には、女性たちばかりが住まいしていた。小柄なる者、豊満なる者、ふくよかにして麗しき者、そして母性を纏う者……されど男の姿は一人としてなかった。時はちょうど奇怪なる祭の只中であり、まるで古き劇にて男が女役も男役も演じしように、この村においては女らがすべての役を演じていたのである。


舞台は存在せず、村そのものが舞台と化していた。彼女らは皆、様々なる装いをまとい、吸血姫より古代エジプトのスフィンクス、遥かなるアラビアの姫君に至るまで、奇なる姿を演じていた。


やがて、一人の女――中世の騎士の姿を装う者が、森の妖精に扮した小柄にして豊満なる爆乳の女を抱きかかえ、木の高塔の頂へと連れ去った。すると幾人かの女たちがショウタロウに向かい、声を揃えてこう告げる。


「おお、日出づる国の勇士よ!

森の妖精は、ならず者の騎士フドスモルドシュタットに攫われた。

そなたこそ、救い出すべき英雄なり!」


そう言いながら、彼らはショウタロウに一振りのスポーツ剣を授けた。


かくしてショウタロウは挑み、ならず者の騎士と刃を交える。無論すべては祝祭の演技に過ぎぬが、勝敗は真剣なり。ショウタロウは見事勝ちを収め、妖精に扮した女は彼に接吻を授けた。


その後、村のすべての女たち――騎士役を演じた者までもが夜を徹して歓びの祭を分かち合い、酒と歌と舞に満ちあふれた。


祭りの後、妖精に扮した豊満の女はショウタロウと語らい、他の女らも交えて夜を過ごした。彼女は彼にこう語る。


「わたしたちウクルトの女たちは、古きファンタジーの真なる理解者のみを招くため、あの謎を道のほとりに残しておいたのです。

あなた、気に入りました! どうやら、あなたはわたしたちと同じ人格のように思えます。

永遠に、この地に留まってはくれませんか?」


その場にいた女たちも皆、賛同の声を上げた。ショウタロウは己の幸運を信じられぬ思いで、その誘いを受け入れる。


――かくして夜更け、ショウタロウが眠りにつこうとした時。森の妖精に扮していた女は、静かに彼の傍に歩み寄る。


彼女は己の真なる名を明かした。


「わたしの名は――ラウラ・リティラ」


そう告げると、彼女は彼に口づけを与え、深き契りの証としたのであった。

この話を楽しんでいただければ幸いです。次の話をすぐにアップロードします。

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