小なるもの
これはこのアンソロジーの最新話です。皆さんに楽しんでいただければ幸いです。
宇宙的な神、バーヴィヤムは多元宇宙ほどの大きさを持つ存在であった。
その姿は紺碧の竜に似ており、頭部には肉も皮膚もなく、ただの髑髏があった。
空洞の眼窩には、青い炎が二つ揺れ、永遠の光を放っていた。
バーヴィヤムは多元宇宙を渡り歩く旅人である。
彼はある時、「55AR」と呼ばれる並行宇宙に存在する地球へと降り立った。
そこでは、第三次世界大戦が勃発していた。
西方の強国と東方の強国とが、力を尽くして互いを滅ぼそうとしていたのである。
バーヴィヤムは興味深げに、しばらくその戦争を眺め続けた。
東の陣営には、ハン・シンという名の詩人がいた。
彼はこの戦を「神々の戦い」と呼び、壮大な叙事詩を書き残した。
一方、西の陣営には、チャールズ・ホウルスキという作家がいた。
彼もまた詩を書き、その中でこの戦争を「宇宙的かつ神聖なる闘争」と描き出した。
しかし、バーヴィヤムの目に映る光景はまったく異なっていた。
人間たちがいかに自らの争いを高貴なものと語ろうとも、
その戦いは彼にとってただの「虫けら同士の争い」にすぎなかった。
多元宇宙を震わせることもなく、
宇宙の歴史に影響を与えることもない。
それは取るに足らない衝突であり、
無数の世界において塵ほどの価値も持たなかったのである。
バーヴィヤムは炎の瞳を細め、静かにこう思った。
「――人間とは、なぜこれほど自らを大きく見せたがるのか。」
そして、彼は再び果てしない旅へと歩み出した。
この物語を楽しんでいただければ幸いです。次の作品を近日中にアップロードします。




