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死体の山の上に立って、私は爆乳の女神に手を伸ばした

これはこのアンソロジーの最新話です。皆さんに楽しんでいただければ幸いです。

語り手:生川智宏


ナポリに降り立ってから五年。

いま、俺は海辺の砂に腰を下ろし、彼女と並んで一つの瓶から炭酸飲料を分け合っていた。

隣にいるのは――ゼゾッラ。

肉体の豊饒を体現する女神のような女。

俺の恋人。

俺のすべて。


本来なら、俺は歓喜に酔いしれ、天を仰ぎながら己の幸運を讃えるべきだろう。

日本人の凡庸な若者にすぎない俺が、この世の奇跡のような女を抱く資格を得たのだから。

だが、胸を満たすのは疲労の影だ。


原因は一つ。

――ゼゾッラの元恋人たち。


彼女はあまりに魅惑的で、あまりに多面的で、過去の男たちを幽鬼のように囚え続けている。

ゼゾッラ自身も言う。

「私は幾千もの人生を生きてきた。スイスの山岳を征服した登山家として。パリの街角で絵を描く画家として。アルゼンチンの舞踏場で情熱を燃やすタンゴの踊り子として……」

彼女の語る「過去の人生」は、彼女という存在の中に無数の貌を与え、その魂を幾重にも積み重ねている。


だからこそ、彼女を愛した男たちは、決して諦めない。

俺は彼らと幾度も対峙し、象徴的な「決闘」を重ねてきた。


ある者は画家――アルノー・ファリエール。

ゼゾッラを「永遠のミューズ」と呼び、再び筆の前に立たせようと執着した。


ある者は登山家――ドリアン・バルシャイス。

どんな山頂の景色もゼゾッラの輝きには及ばぬと叫び、彼女を奪還しようと挑んだ。


ある者は宇宙飛行士――ラッセル・ハムセン。

「ゼゾッラこそ、宇宙を渡る星々を凌ぐ天上の光」と信じ、彼女を取り戻したかった。


俺は彼らすべてを退けてきた。

だが、新たな影は必ず現れる。

ゼゾッラという女は、それほどまでに狂気を呼び寄せる。


波の音が夢想を断ち切る。

「智宏、行きましょう」

ゼゾッラの声。

その一言に、俺は再び現実へ引き戻される。


俺は彼女を見つめ、改めて悟る。

俺は愛している。

彼女を、幾千の命を飲み込んでなお燦然と輝く、この女神を。


たとえオリュンポスの神々が天より舞い降り、雷霆をもって俺を引き裂こうとも。

俺は戦い続ける。

この女を抱きしめるために。

この話を楽しんでいただければ幸いです。次の話をすぐにアップロードします。

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