プールの恋人
これはこの選集の3番目の物語です。皆さんが楽しんでくれたら嬉しいです。
この物語は、並行世界「W4T38」で起こった出来事である。
かつて、小さな町に「ペニー・ノラスコ」という名の少女がいた。
その姿は清らかで、その肌は水のように滑らかだった。
水泳の才能を持ち、町の人々からは「水の妖精」と呼ばれていたが、本人はそれを特別だとは思っていなかった。
しかし、ある日を境に、彼女の運命は大きく変わった。
水泳中、ターンの動作で、ペニーは「繊細な体の一部」を失ってしまった。
医学的には、体表の小さな結合組織が切れただけのこと。病気でも異常でもなかった。
だが、町の人々は科学を受け入れなかった。
「プールに汚されたんだ」
「もう純潔じゃない」
「今や彼女は水のものだ」
誰ともなく、ペニーは「プールと結婚した女」として噂され、嘲笑の対象となった。
その中で、ある男が現れる。
名前はアンドリューズ・ジョンソン。
彼は痩せぎすで背は高いが、自信がなく、職も友人も恋人もない。
母親と二人で小さなアパートに暮らしていた。
アンドリューズはペニーのことを「もったいない女」だと思った。
「この小柄で巨乳な女を欲しがる男がいない? 望まれていない? じゃあ、俺にもチャンスがあるかもな。良い男がいない今がチャンスだ」
そう考え、彼はペニーに声をかけ、優しさを装い、ぎこちない笑顔を見せ、彼女の隣に座った。
ペニーは、それを黙って受け入れた。
9ヶ月後、ペニーは妊娠していた。
アンドリューズはその子供たちが自分の子でないことを知っていた。彼女と肉体関係を持ったことは一度もなかったからだ。
それでも彼は、ペニーと結婚した。
そして双子が誕生した。
子供たちの肌は常に湿っており、触れれば水の袋のようにふわりと柔らかかった。
髪は短く、黒く、まるで水の中で育ったような質感だった。
それを見た町の人々は互いに顔を見合わせ、こうささやき始めた。
「プールの子だってさ」
「本当に水のものになったんだな」
アンドリューズは言葉を失った。
言いたいことは山ほどあった。
だが、その7割は混乱で、残りの3割は、プールへの疑念だった。
あの65リットルの水音、濡れた洗濯物の匂い、無表情のままの微笑み——
アンドリューズは次第に確信していった。
「彼女は俺を裏切っている……プールと……?」
だが、それは本当に裏切りなのだろうか?
かつて彼は、ペニーを「汚れた女」だと見下し、彼女を受け入れることで「恩を与えた」と思っていた。
「ラッキーだ! 誰も欲しがらないセクシーな女を俺が独占できるなんて」と、そう自惚れていた。
だが今、彼は気づいてしまった。
自分は何も勝ち取っていないのだ、と。
「俺は……プールに負けたのか……」
皆さんが楽しんでくれたら嬉しいです。