二頭の高貴な雌トラの戦い
これはこのアンソロジーの最新話です。皆さんに楽しんでいただければ幸いです。
日本語叙事詩風
宇宙を覆う二柱の女神あり。
その名はアナスタシア、そしてヴァイオレット。
乳房は山より高く、銀河をも凌ぐ、
力は星辰を掴み、炎と氷を自在に操る。
されど、彼女らが争う理由は
王座にあらず、宝剣にあらず。
天地を揺るがす叡智にもあらず。
――ただ、一人の凡なる青年、
布団に籠もる引きこもり、名はハルト。
いかにして選ばれしや。
神託か、宿命か、愛の絆か。
否、いずれにもあらず。
天上にて二柱の女神は、
笑いもせずに試みた。
異国に伝わる「デティマリンデドピングエ」――
地において「じゃんけん」と呼ばれる、
子らの遊戯にすぎぬ手立て。
その結果、
同じ一人の青年に手が伸びた。
かくして宇宙は裂ける。
アナスタシアは銀河を砕きて槍となし、
ヴァイオレットは彗星を馭して戦車とす。
星々は爆ぜ、流星は雨のごとく、
彼女らの叫びに応えて落ち注ぐ。
黒き虚無――黒洞をも手に取り、
鋸のごとく振り回し、
天地を削り、銀河を刻む。
大戦は永劫にも似て、
英雄の歌にも劣らぬ尊き激闘。
だが、その勝者に与えられるは――
ただ一人の、怠惰なるハルト。
ああ、天地の歴史に記されし
最も壮大にして最も滑稽なる戦。
二柱の爆乳の女神が、
じゃんけん一つの遊戯より
同じ男を望み、
銀河を焼き、宇宙を裂き、
全てを賭けて戦いたり。
そして語り継がれる――
「報酬は布団に沈むひきこもり一人であった」と。
この話を楽しんでいただければ幸いです。次の話をすぐにアップロードします。




