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窯と発酵種

これはこの選集の2番目の物語です。皆さんに楽しんでいただければ幸いです。


パラレルワールド D00008には、ジュリアンという男がいた。

彼はパン職人であり、小さな村でパン屋を営んでいた。


ジュリアンはアンワネットという妻と暮らしていた。彼女は豊満で気品のある女性で、その包み込むような美しさと穏やかな笑顔は、村の誰もが知っていた。


パン屋には、フェルナン・センリック・ヴァマールという若者が見習いとして働いていた。少年の頃から店で修行を積み、今では立派な腕前を持つ青年である。


村人たちは毎朝パン屋に列をなし、ジュリアンのパンは次々と売れていった。サクサクしたクロワッサン、しっとりとしたブリオッシュ、香ばしいバゲット。パンと引き換えに、コインもまた止めどなく流れてきた。


アンワネットは過去5年間で5人の子どもを産んだ。ジュリアンはそれを誇らしく思っていた。彼にとって、人生の幸運は二つあった。


一つは、絶えず香ばしいパンを焼いてくれるオーブン。

もう一つは、絶えず子どもを産んでくれる妻だった。


ジュリアンはよく言っていた。

「俺の人生には二つの宝がある。パンを作る窯と、子を作る窯だ。」


だが、彼は知らなかった。

その五人の子どもの本当の父親は、自分ではなかったということを。


フェルナンとアンワネットは長年、密かに愛し合っていた。

フェルナンの想いは単なる肉体的なものだったかもしれないが、彼の目にはアンワネットがまったく違う存在に映っていた。


フェルナンはアンワネットを、単なる「器」などとは思わなかった。

彼女はまるで、パン作りに欠かせない“発酵種”のような存在だった。


変幻自在に形を変え、いかなる可能性も秘めた存在。

美しさ、力強さ、やさしさ——それらをすべて内包した、無限の可能性を持つ女性。


対照的に、ジュリアンは彼女をただの「出産機械」として見ていた。

だからこそ、彼はその“代償”を受けることになった。


彼のオーブンは立派だったかもしれない。

だが、家の中にあった“もう一つの窯”は、別の職人の手によって愛情深く扱われていたのだった。

この物語を楽しんでいただければ幸いです。次の物語もすぐにアップロードします。

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