公現祭
これはこのアンソロジーの最新話です。皆さんに楽しんでいただければ幸いです。
ヤマトは痩せて背の低いニートの青年である。
モモカはぽっちゃり美人でや巨乳のニートであり、ヤマトの隣人であった。
二人はしばしば一緒に買い物に出かけるが、それは恋愛的な意味ではない。彼らは一日中、自分たちの問題を愚痴り合って過ごしていた。
ヤマトもモモカも家族から拒絶されていた。ヤマトの両親は、彼が日本の首相になることを望んでいたし、モモカの両親は、彼女が億万長者になることを望んでいた。しかし、二人はその期待に応えられなかったため、「失敗者」と見なされていた。
ヤマトはしばしば「理想の自分」を想像する。それは、日本史上最高の首相となったヤマトの姿である。
モモカもまた「理想の自分」を想像する。それは、日本人の女性億万長者となったモモカの姿である。
ヤマトとモモカの想像上の「理想の自分たち」は、月が地球の周りを回るように、一日中二人の周囲を回っていた。
ある日、ヤマトとモモカがカップラーメンを買うために近所のコンビニへ行ったとき、奇妙なことが起きた。
二人は「共有された幻視」を体験したのだ。
人類の残りはすべて消え去り、同時に自分の「理想の自分たち」も消えてしまった。
――ついに、モモカとヤマトは自由になった。
数秒後、すべては元に戻った。
人々は再び通りを歩いていた。
ヤマトとモモカは、それが幻だったのかと思った。
しかし、そのとき気づいたのだ。
「完璧なヤマト」も「完璧なモモカ」も存在しない。
現実に存在しているのは、ヤマトとモモカ自身だけである。
彼らは、誰かと競い合う必要などないのだ。
なぜなら、比較する対象など存在しないのだから。
こうして二人は悟った。
――「失敗」というものは社会が作り出した幻想に過ぎない。
人間にできることはただ一つ。
どんな速度であろうとも、前へ進み続けることだけなのだ。
この物語を楽しんでいただければ幸いです。次の作品を近々アップロードします。




