表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/82

次のプロメテウス

これはこのアンソロジーの最新話です。皆さんに楽しんでいただければ幸いです。

イングランドに生まれた、小柄で痩せた青年── マルコ・ガーヴィー。

両親はアフロカリブ系であり、彼自身は医療用ナノボット研究の第一人者の一人であった。


彼の妻は、アフロカリブ、ユダヤ、そして香港の血を受け継ぐ美しい女性── ルシア・リン・マヘツ。

二人は幸せな生活を送り、生まれたばかりの娘と共に未来を夢見ていた。


だが、2024年。

マルコに告げられたのは、癌。

余命は三年…長くは生きられないと。


ルシアは絶望し、深い悲しみに沈む。

その時、マルコは決意する──自らの研究を、自らの身に施すことを。


彼が追い求めてきた理論。

ナノボットは、末期患者の肉体を新たに作り変える可能性を秘めていた。

それは夢物語に過ぎなかったはずだ。


だが今、彼は実行する。

ナノボットを自らの体に注入し、癌細胞を一つ残らず破壊し、

その代わりに人工のナノボット細胞を構築していくのだ。


やがて人間の細胞は消え失せ、

残るは「機械の肉体」のみとなるだろう。


──その時、自分はまだマルコ・ガーヴィーでいられるのか?

人間でいられるのか?

それすら分からない。


だが、彼には挑む理由があった。

妻のために。

娘のために。


研究に没頭する日々の中で、マルコの脳裏には人類の歴史が浮かぶ。

火の発見、火薬、そして月面着陸──人類が挑んできた偉大なる瞬間の数々。


そして、2027年1月25日、深夜零時。

月は満ち、光を放つ。


ナノボットは完成した。

注射器は彼の手にある。


その時、死が訪れた。

それは古の伝承の姿そのままに──

黒い絹に包まれた骸骨の顔。

そして鉄の大鎌は、まるで竜の爪のごとく輝いていた。


マルコは呟く。


「私は…戦わずに倒れるつもりはない。

 新しい時代は……今、始まる!」


彼は注射を打ち込む。


翌日。

ルシアと娘が家に戻ると、扉は開いていた。

胸騒ぎを覚えたルシアは、夫の研究室へと急ぐ。


そこには、夜空を見上げるマルコの姿。

彼はゆっくりと振り返り、静かに問いかける。


「……君は、私が誰だと思う?」

この話を楽しんでいただければ幸いです。次の話をすぐにアップロードします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ