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混沌を導く七人の調停者  作者: 稲光 アルキメデス
 終氷ノ黙示録

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13/20

終氷ノ黙示録 第参話

悲しいお話です。

魔力とか魔法って説明したほうがいいのかどうか、、、、、

幻想の女王は羽ばたき、舞った雪片によりグラキエルの視界は一瞬、白い霧に覆われ、空間の感覚を奪われた。やがて視界が戻ると、彼の巨躯は繭のような氷の膜に包まれ、動きが封じられ、混乱の色が浮かんでいた。


「幻術か.......」


「いいえ、それは幻術ではありません。あなたは繭となり余の子供となるのです」


神秘的な声が意識の中に直接入ってくる。

心地の良い声色だ。


「歌ってあやしましょう」

           《精哭》

小さな氷蝶の精霊たちが何千と現れ、優しい絶唱が白く突き抜けた空間に響き渡る。

精哭。その音色は魂を震わせ無力感を与えることにより戦意を喪失させる力を持つ。


「耳障りだ、静まれ」


怒りが牙を剥きすべてを飲みこむ。精霊の絶唱は止まり、静かに重力に従い落ちていく。氷蝶一匹一匹が魂の鼓動を止められたかのように、いや凍結させられたかのように。


「氷精霊の女王なんで期待していたんだがな、この程度とは残念だ」


空間に残る静寂は、氷の冷たさと女王の威厳を一層際立たせ、戦場は深い緊張に包まれた。

氷の繭が断ち切られ、グラキエルは這い出る。


「幻想の女王よ、この結界ではたいして動けないだろう。《零獄ノ檻》は術者以外の存在すべてが対象になるからな、それはこの結界の唯一の弱点でもある。まあ、上手く使えばそんなことないんだけどな」


「余にこの娘を殺せと言っているのですか」


「できないのか?」


「契約者が死ねば、余もまた命を失う......ゆえに、その道は許されぬ。精霊の契約というのはそのようなものなのです」


「そうか、それは良いことを聞いた」

刹那、尾の一閃がセレスをたたきつける。


「幻術ですよ、それは」


衝撃で吹き飛ばされたセレスの周囲を、無数の蝶が翻る。そのひとつひとつが、魔法によって作り出された幻の存在である。


「そろそろですか、あなたの敗北は」


突然、グラキエルの視界が歪み、魔力回路に異常が走る。身体のバランスは乱れ、普段の圧倒的な威圧感は影を潜めている。これは、グラシア・パピリオが羽ばたいた瞬間に仕掛けられていた能力の発動であり、その冷たくも美しい羽音が、敵の身体と精神に直接干渉し、力を封じる証であった。無数の幻蝶が宙を舞い、氷の結晶のように鋭く光るその羽先ひとつひとつが、圧倒的存在を縛る鎖となる。


「あなたは余をなめていた、油断していたのです。それが自らの首を絞めることになるとは」


これが、幻想の女王グラシア・パピリオがもつ固有能力。

《幻氷の庭園》である。


「さて、セレス様。とどめはご自分でやりますか」


「ありがとう......ございます」

ゆっくりと態勢を立て直すがいまだに足元がおぼつかず、踏み出すたびに膝がぐらつく様子だ。


 姉さん......私は、あなたの分まで生きる。そして、あの者に必ず制裁を下す。絶望の淵に沈められた全ての時間と、私たちの失われた日々を、1000年の時を経て今、取り戻す――だから、どうか安らかに......私に託して。


回想。


地方の片隅にひっそりと佇む田舎村――そこに暮らすセレスとレヴェナ姉妹の毎日は、決して豊かではなかった。貧しい暮らしの中で、日々を生き抜くしかなかったが、姉妹は互いに支え合い、小さな幸せを見つけながら暮らしていた。しかし、その平穏はある日、突如として破られた。空を覆う黒い影、耳を裂く咆哮――魔物の群れが村を襲い、家々は炎に包まれ、笑顔だった日常は一瞬にして瓦礫と化した。

 絶望の中、妹セレスは姉の手を握り締め、泣き叫んだ。その時、冷たい風のように現れたのが、若き魔導士グラキエルだった。鋭く光る蒼の瞳、氷の如き冷静さと圧倒的な魔力。彼は言葉少なに、しかし確実な力で魔物を退け、姉妹と村を救った。その姿は、ただの人間ではなく、まるで運命そのものが現れたかのように、姉妹の胸に深く刻まれた。

 戦いの後、村は瓦礫の中から立ち上がり始めた。日々の復興作業の中で、レヴェナの心に眠る魔力が少しずつ表れ、その力は瓦礫の片付けや作業を越え、村の人々を守る盾としての役割を示すようになった。その才能を見たグラキエルは、彼女を冒険者として導く決意を固めた。セレスもまた、姉の後ろ盾として、荷物持ちとして、パーティーに加わった。最初は微力な存在だった二人も、数々の試練と戦いを経て、パーティーは力をつけ、やがてS級冒険者として名を馳せるようになった。

 やがてレヴェナは「深淵の紅」、グラキエルは「深淵の蒼」と呼ばれるようになる。二人の力は確かなものであり、戦いに臨む者たちにとって畏怖の対象となった。しかし、誰も知らなかった。深淵の蒼の瞳の奥に潜む、さらなる欲望と野心を――力への渇望を。

 グラキエルは、己の限界を超えるべく禁忌の術に手を染めた。力を手にするための最後の一歩だった。しかし、運命は残酷だった。術の制御を誤り、彼の身体と精神は氷の悪魔――グラキエル・スコーピオンへと変貌してしまう。その時、止めようとしたレヴェナもまた、術の反動に巻き込まれ、醜く穢れた猿のような姿となった。姉妹の目の前で、かつての英雄は恐怖そのものに変わり、姉はその代償を背負うこととなった。

 セレスは泣きながら、姉を抱きしめた。そしてグラキエルを恨んだ、憎んだ、殺してやろうと思った。しかし、今のセレスには叶わなかった。自分に失望し、姉をかかえてその場を去ることしかできないでいた。

 醜く穢れた姿となった姉は、かつての輝きを失い、日に日に体が弱っていった。魔力は枯れ、呼吸は浅く、手に力も残らない。それでも姉は微かに微笑み、妹を励まそうとした。その姿にセレスの胸は締め付けられ、涙が溢れる。動かなくなるその瞬間まで、姉は希望を捨てず、ただ妹の未来を思っていた――命と魔力が尽きるまで、愛と誇りだけを胸に抱き続けていたのだ。

固有能力

その存在だけが有する能力であり、ほとんどは生まれつき持っていることが多い。中には二つ以上持っている存在もいるとかいないとか。

冒険者

ギルドというコミュニティに集まる依頼をこなしたり、未知の物を見つけたりして報酬をもらい、時には名声を高めたりなんかして生活をする者たち。

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