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君の世界  作者: TOMATO
2/10

恋情の交差

「浦田さんのことは…、やっぱり麻友ちゃんでいいのかなぁ?」

私の目の前で、私の憧れの人が…笑顔で喋りかけてきている。

嬉しくて、嬉しくて。

笑おうとも思ったわけではないのに、自然と笑みがこぼれた。

「いや、麻友でいい、寧ろ麻友でお願いしますッ」

気がつけば声もいつもより大きくなっていた。

「そう?じゃぁ麻友ね♪」

いつだって見てきた、その彼女は私に今…私だけに笑顔を向けていた。

だけど…。

「もう行けば?未来」

冷たい彩香の声が聞こえた。

え…?なんでそんな言い方…。

問い詰める前に未来が苦笑しつつ返答した。

「うん、ごめんね。私生徒会の仕事もあるし…本当にごめんね」

「バイバイ」

嫌だ。もう少し話しててもいいじゃないか。

頭の中で自分勝手な感情が巡る。

なんで、彩香はあんなに冷たいんだろう…。


「あのさぁッ!」

気持ちが先回りして、自分を突き動かしていた。

不思議そうに振り返る未来に近づき、初めて彼女に触れた。

とは言っても、手を軽く掴んだだけ。

それでも、緊張はピークだった。

「メ…メールとかしてもいい……?」

乾ききった口から出る言葉。どうしても上手く喋れない。

未来はじっと私を見据えている。

しばらくして、またさっきまでの笑顔に戻り、

「じゃぁ、彩香からアド聞いてもらってもいいかな?今メモ帳なくってさぁ~」

未来のまったりとした口調がいつもどおりに流れる。

「ぁ…ありがと………//」

「じゃあね!」

未来は、足早に去っていった。

頬が赤らんでいるのが自分でも感じられた。



その日の夜。

いつものように布団にダイブして、携帯を開く。

…アドレス。聞いてみるか。

ぱぱっと、彩香にメールを打った。

『未来のアド教えてくれない?』

単純な内容だった。

直ぐにでも返信は来るだろう。

そう思って、少し目を閉じる…。

すると、案の定。手早く返信が来た。

『嫌だよ。教えない。私は…………麻友が好きなの。格好良くて、いつでも優しくて。抱きついたりしてもちゃんと受け止めてくれて。麻友が好き。だから未来には何も譲るつもりはないから。未来にどんなに辛い過去があったからって、未来が泣いたって、私はわがまま言うようだけど誰にも麻友は渡したくないの』

「え…ッ。っ……!?はぁ…!!?」

思わず声を出していた。

な…、どういう話の転換ッ!?

急に告白なんて…それも女子から…。


「…ん?」

気になる言葉があった。

”辛い過去”…?

彩香はどこまで未来を知ってるんだ?

よく考えると私はやっぱり彼女の何も知らなかった。

あんなに未来が好きなのに。どうしてなんだろう。

…………………好き?

私が?未来を…?

何も考えずに出た言葉だった。

好きなのか、自分は未来のことを。


もう…、隠して自分を誤魔化すのはやめようか。

そうだ、おかしな愛情かもしれない。

でも…もう隠さない、逃げない、誤魔化さない。

私は未来が好き。

初めて見たあの時から、ずっと彼女だけを見ていたじゃないか。

まだ彼女のことは何も知らない。

彩香よりも。でも、これから知っていくことはできるんだ。きっと。

だから諦めない。

彩香が私のことを好きと言ってきても、揺らぎもしない。

これから、…いや、これからも彼女を見続けよう。


『ごめん。気持ちにこたえられそうにない。私は未来が好きだから。嬉しかったよ、ありがとう。』


心からの、謝罪と、気持ち。

いつか未来を振り向かせる、そう自分に誓えた気がした。

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