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三途の川の渡し賃が値上げした/別ver

作者: 新流晃夜

それではわたくしの体験をお話ししましょう。


ふと気がつくと、わたくしは川のほとりを歩いておりました。


幅の広い川でしてね。


流れは速く、随分と深そうだ。


こちら側は石がごろごろしているのに、あちら側は花畑、こちら側はなにやらどんより曇っていて薄暗いのに、あちらは晴れていて明るい、てな具合で、どうにもあちらに行きたくてたまらない。


どうにかしてあちらに行けないものかと歩いていきますと、小舟が一艘あったんですな。


ほっかむりの渡し守がいましたもんですから、ひとつ渡してくれないかと頼んだんですよ。


そうしたら渡し守が、渡し賃をと言うもんで、ははあ、さてはこいつがあの有名な三途の川ってやつかと得心がいきまして。


ちょうど懐には財布もあった。


じゃあこいつでと六文渡したら、違うって言うんですよ。


なにがって?


渡し賃はもう六文じゃなくなったっていうんですよ!


そりゃあもう驚きますよ、ねえ?


だって三途の川の渡し賃っていったら六文だって相場が決まってるでしょう。


値上げしたなんて聞いたこともない。


そんなに持ち合わせもなかったもんだから、金が無いと言ったら、渡し守が言うんですな。


渡し賃がないなら帰んなよ、なんて。


それもそうかと思って背中を向けたが帰り方なんてわかりやしません。


どうやって帰ったらいいんだい。


聞こうと思って振り返ったら、目の前にいたのは妻と子供たち。


わたくしは布団で寝ていたんですな。


ぽっかり目を開けて、ここはどこだいなんて聞いたもんですから、妻なんて大泣きでして。


よくある話ですけとね、わたくしは頭を打って人事不省になってたってんです。


それにしたってねえ。


困るでしょう。


三途の川の渡し賃が値上げしたなんて。


こいつは次の時には十分用意しておかにゃならんってことで、妻と子供たちにもよくよく言い聞かせたんですよ。


わたくしが死んだ時には、ちゃんと渡し賃を入れといてくれって。


それから、世話になってる寺があるもんですから、そこでもこの話をしましたら、住職さんもそれは大変だと。


住職さんが檀家という檀家にこの話をしたんで、ここらでは死んだ時には六文じゃなく、多めに入れるのが普通になったって話で。


わたくし?


わたくしは妻に、勝手に渡るんじゃないと財布の中身を少なくされてしまいましたよ。

三途の川値上げ、バリエーションを思いついたので供養。

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