第三十五話「ビビり」
前回のあらすじ
プライバシーの保護に失敗した初代たちの個人情報が漏れてしまった。
住所、趣味、職業、性癖がばれてしまった初代はぶちぎれた。
そしてドラゴンになったりした結果、国家権力に怒られた。
俺はビビりだ。
最低な男だ。
『国家権力が襲ってくる』
初代の言った言葉を要約するとこんな感じだ。
今は前回わやになってしまったサッカーの練習をしている。
学校の行事のため、気分はよくないが参加はしている。
浮かない気持ちを無視して空はあきれるほど晴れ渡っている。
「…」
上を向いて考え事をするのは皆良くやると思う。
歌にもあった気もする。涙がこぼれ落ちない様に。
涙は流れはしないけど今は上を向いていたかった。
----- 予感はしていた。
生まれつき勘はよかった。だからわかったことだった。
いづれ大きな事件が起こることは。
初代は俺の力を借りようとした。だが俺は断った。
正直俺は戦いたくはない。
しかし、俺の勘では俺が協力しない先の勘を一切読み取れなかった。
かといって、俺が本当に協力したところでどうなるというのだろうか。
俺はどうしたいんだ?
俺はどうすればいいんだ?
「佐藤!シュートいけ!」
バシッという音ともにボールは赤石から渡された。
トラップをしようと思ったが失敗してボールは通り過ぎていった。
「おいおい!しっかりしてくれよー!」
赤石の声も通り過ぎていった。俺は…俺は…。
「ほいっ!」
ドゴォ!赤石のパンチは俺の腹部にめり込んでいた。あ、あばらが…
こ…こいつ…
「ちょっと裏こいや。」
…やれやれ…
体育館の裏はよほどのことが無い限り音もない。静かなエリアだ。
「てめぇ…まだ気にしてんのか…?」
赤石の声は良く通っていた。
「そうかっかするなよ…」
「黙れ!どうしてだ!なぜ協力しないんだ!お前は何がしたいんだ!」
「国家権力だぞ!やめたっていいじゃないか!」
「ビビってるだけじゃねぇのか!」
「!!」
赤石の声は俺につきささる。
ビビる。怖がる。逃げる。
(佐藤…早く逃げろ…)
-----!!
「どうしちまったんだよ!何があったんだよ!」
「もう…いやなんだよ…」
「へ?」
「俺は勝ち目の無い戦いになんかでたくない!足を引っ張るだけだ!
俺には力がない!初代たちは戦いに行くんだろ!それならやらせればいい!
あいつらには力がある!でも俺は力なんてない!足手まといになるだけだ!
俺は…俺のせいでお前たちが傷つくのを見たくないんだよ…」
「言ってることが矛盾してるじゃねぇか!」
「しらねぇよ!」
しばしの静寂が訪れる。
「どうしちまったんだよ…!!」
「俺の父親…知ってるか?」
「…知ってる。片腕がなくなっちまってんだろ。」
「そうだ。あれは俺のせいなんだ。」
「…」
「体中に傷があるんだ。でもそれでも笑って俺の前に立ってくれる人なんだ。
…でももう見てられないんだよ。何の力になれない俺なんて…いるべきじゃないんだよ…」
「お前はただ逃げているだけだ!それだけじゃ何も変わりなんかしない!」
赤石の声が響いた後。
「そうですよ。」
小さいがよく響く声が聞こえた。耳だけを通過していくだけじゃなく、脳まで震わせて。
体中から聞こえるような声だった。
「「誰だ!」」
「怪しいものではありません。」
「マントにマスクして怪しくないと思える奴なんてこの世にはそうそういねぇ!」
「まぁまぁ… 私、【エレフォウン】と申します。簡単に言うと…まぁ【飛脚】ですか…ね?」
どういうことだ?展開が速すぎてついていけない。
「佐藤さん。あなたにお届け物です。」
「…差出人は?」
「あなたと同じ苗字…お父様?から。」
「…!?」
父親…!?あの父親から届け物?何だろうか。
封筒をエレフォウンは俺に渡す。
失礼かもしれないがものすごい速さで上の部分を破り捨てる。
中に入っているのは手紙だった。小さいメモ一枚。
書いてある言葉は俺の脳内に流れ込んでくるようだった。
…
「赤石。俺間違ってたよ。」
「え?」
「強くならなきゃだめだ!」
「え?え?何?急に百八十度意見変わってるん?」
「ウォォォォォォォ!!がんばるぞぉぉぉぉぉぉ!!」
「えっ、ちょっ!まってくれよぉ!」
「とりあえず球技大会を終らせるぞ!」
「お、おぅ!」
いても経ってもいられなかった。
俺たちは急いで運動場に向かった。
「さて…楽しくなりそうですね。」
コツコツ と足音が響いて、影はどこにもなくなっていた。
-----力を持ちたい。だから今を強く生きたい。俺は、立ち向かいたい。
活動報告にも書きましたが、
月曜日、金曜日、日曜日の定期更新を捕りたいと思っています。
まぁ書けたら書きますが