ゆみちゃんとぼく!
ぼくはマロン! ゆみちゃんっていうヒト科のメスと暮らしていたイヌだよ!
ある朝起きたら身体が動かなくなってて、ゆみちゃんがぼくの名前をいっぱい呼びながら泣いてたんだ。
ぼくがいたずらするといつも怒ってたけど、そのあとでいっぱい遊んでくれたゆみちゃん。
ぼくはおじいちゃんになって、だんだん身体が動かなくなっちゃったけど、毎日なでなでしてくれた。
おいしいおやつをいっぱいくれた。いろんな遊びを教えてくれた。
ぼくはゆみちゃんが大好き! だから泣かないで、ゆみちゃん。またいっぱい遊ぼう。
今はちょっと眠いけど、すぐ元気になるからね。ああ、とっても眠いなあ。
「……マロン、マロン」
だあれ? 知らない声だ。ぼくを呼んでる。ゆみちゃん?
「マロン、あなたはあなたの生を全うしましたね。よくご主人に尽くし、たくさんの愛を与えました。あなたの生前の行いから、今後の行き先を選んでください」
だれだろう。むずかしくてよく分からないよ。ゆみちゃんに会いたいな。
「ゆみちゃんに会う、があなたの願いですね」
ゆみちゃんに会えるの? 会いたいよ!
「あなたの願いは聞き届けられました。転生後も人に尽くし、愛を与え、より良い生を全うしてください」
よく分からないけど、分かったよ! ゆみちゃんに会えるんだ!
「はい。純粋な魂に、より大きな愛が与えられますよう」
ーーー
あれ。あったかいなあ。ゆみちゃんのおうちかな? 匂いがちがう? なんだか暗いよ。怖いよお。
「ぴー」
あれ。ぼくの声変だよ。身体もなんだか変。ときどき後ろにくっついてたふわふわに食べられちゃったのかも。やだよお。怖いよお。ゆみちゃん助けてえ。
「ぴぅー」
「わわ、どうしよう。ミルクかな? ぬるま湯で溶けばいいの? 今行くからね」
ゆみちゃんだ! ゆみちゃんの声! 会いたかった! ゆみちゃん!
「ぴぅー」
ゆみちゃんの匂いだ。嬉しい。まだなんだか変な感じだけど、ぼく元気になったよ!
「はいはい。ミルクですよー」
ミルク? ミルクってなんだっけ。あ、おいしいやつだ。おいしい! おいしい!
「ふふ。そんなにがっつかなくてもなくならないよ。これ……マロンにも同じこと言ってたな……」
マロン? ぼくマロンだよ! ね、ゆみちゃん!
「ぴぅー!」
「……慰めてくれるの? 良い子だね。そうだ。まだ名前決めてなかったね。ミルクいっぱい飲むし、ミルク?」
ミルク? ミルクおいしいよ! ぼくこれ好き!
「ぴぅ!」
「じゃあ決まりね。これからよろしくね、ミルク!」
あれ? ミルクおしまいなの?