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愛されていると信じて  作者: m@ho
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春子の誕生会

春子の誕生会。幹事をした母にはストレスだった 。

源一郎が亡くなってから落ち込んでいる母を元気づけようと貞子が言い出した誕生日会。

豪の小学校の同級生に中国人三世がいて、家族で中華料理屋をしている。

春子の63才の誕生日会はここで行うこととなった。

「おめでとうございまーす」豪がプレゼントを渡している。カーネーションと春子の絵である。

「まあ、ありがとう。豪ちゃんは絵が上手ね。将来は画家かもしれないわね。」

「褒められてよかったわね。」豪は嬉しそうに自分の席にもどっていった。

ちょうど春子の横に座っていた貞子が何やらグリーンピースをより分けて、眉間にシワを寄せている。

炒飯にグリーンピースが入っていることに貞子が文句をつけているのだ。

「グリーンピースを除いて出してもらっているのを知らないの?お母さんが嫌いだから、昔から炒飯にはグリーンピース抜きじゃない。分かっていてわざと出しているんでしょ。折角のお母さんの誕生日なのに」貞子が直接言うのは珍しい。いつもは陰で春子に告げ口を言っているのだ。

「豊川家と混同しちゃうのよね?あなたも他の家に行ってれいば分かるわよ」貞子の夫は秋雄がまだお腹の中にいるときに亡くなっている。心配だからと春子が呼び寄せたままになっているため、結局貞子は織田の実家にいるのである。

春子宅、勝宅、貞子宅3軒は並んで建てている為、優子はなにか用事があると、春子と貞子に呼ばれるので心が安らがないでいる。

誕生日会が終わって、帰ってからも優子は春子家に呼ばれた。

珍しく勝もいたので優子は、「また、お母さんによばれたので、一緒に行ってくださらない?」

勝は少し驚いたように、コーヒーを置いて言った「ええ?僕も必要?」

「たまには、貞子さんが私にどんな風に言っているのか、実際に聞いて見てください」優子は、少し怒り気味に言う。

渋々たちあがって、「僕が行くと逆効果のような気もするけどな。豪に言ってくるね」言うのが終わるぐらいに、二階に上がり、木のコルクボードに「SUGURU」と書かれた扉にノックをし、扉を開けた。

漢字の宿題をしている豪に近づき、「お婆様に呼ばれたので、行ってくるね」豪の頭に手をのっけ勝が声をかけた。

「うん。わかった。」振り返り見上げて言う豪は少し心配気味の顔である。

勝は玄関に降り、「お待たせ」と一言言うが、優子は、無言で玄関を開け出ていく。

玄関を出て石を散りばめた庭を歩いていく。

春子邸の前に到着し、インターホンを押すと、何も反応なく玄関の電子錠が開いたので、勝と優子は目を合わせ、入っていく。

玄関を開けると貞子がいたが、無言でリビングに入っていく。リビングに入ると春子がソファーに座っている

二人が座るなり、「今日の誕生日会は、ひどすぎるわね。」貞子が言い出した。

「おい、おい、いきなり文句はひどくないか?優子なりにまとめて予約とかしてくれているのに、何で小さなことを大きくする?」温厚な勝が珍しく怒って言っている。

「優子さん、今まで、幹事とか色んな計画とかをしてもらっていなかったんだけど。勝の将来を考えると優子さんに仕切ってもらったり、支えをしてもらわないといけないと思っているの」春子が穏やかに言う。

「はい。」優子は顔を伏せがちに答えた。

「でもさ、グリーンピースが入っているのなんて、どうでもいいじゃない?除けばいいんだから。」勝が怒ったように言う。

「普通の席ならそうだけど、私の誕生日会だったから、残念なの。アレルギーだったらどうするの?お客さんにアレルギーとか聞いていて、謝って出してしまったら?そう言うことを言いたいの。ただ、口うるさくいっているだけじゃありません。あなたがそうだから、優子さんがわからないんじゃありませんか。」

「そんなつもりとは、全然知らなかった。貞子が無理に優子に押し付けているのかと思っていたし。まあ、優子も、分かっていると思うし、俺がメニューを確認しなかったのも悪いから。以上で良いかな?」

「私が押し付けたわけじゃないわよ。お母さんからの指名だったんだから。しかし、折角のお母さんの誕生日会なんだから、あんな大衆中華料理屋はやめてね。うるさくてかなわないわ。」

「だったら、今度からお前がすればよいだろう、どんな場所だって、関係ない。皆で祝う事が目的だから。貞子がくだらないことで、文句を言うことではない。」あまり怒らない勝がきっぱりと言ったので、春子も貞子もびっくりして、黙ってしまった。

「お祝いの席の幹事とか、初めての経験だったので、わからない事だらけで、ご迷惑かけてすみませんでした。こんどからは、貞子さんに確認させていただきますね。」優子が気を使い、申し訳なさそうに言った。

「そうよね。初めてだったし、しょうがないわね。みんなで仲良く食べたりするためだから、色々あっても、笑い事にしましょう。みんな、それでいいわね。」春子が無難に治めた。

貞子は渋々承諾して、「お母さんが良いならいいですよ。お休みなさい」と小声で言うと出て行った。

帰り道、優子がため息をつきながら勝の様子をみながら言った。「予想通りの小言だけど、お疲れさまも何も言わないのは異常よね。自分で呼んでおいて。今日のくだらない事を見てもらってわかると思うけど、貞子さんが扇動しているとしか、思えないの。」

「まあ、自分の味方にアピールしているのは確かかもしれないな。しかし、それでも家族だからね。優しい気持ちで対応しててよ。今まで通り。」

玄関に入りながら優子。「最近、イライラすると頭が痛くて、お先に寝させていただきますね」そう言うと先に玄関に入っていってしまった。

結婚当初は勝を支えると言っていた優子だが、豪が生まれて守る者が増えたからか、母になったからか、貞子とぶつかる事が多く、ストレスが溜まっているようであった。

すっかり暗くなり、庭に植えてある椿が月の光でほのかに赤く、玄関に入っていく二人を見守っているようである。


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