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プロローグ
人間の王族が治める、大陸で一番大きな国。
その辺境には広大な荒野が広がっていた。
そして、多くの商人たちがその果てを目指して旅をする。
商人たちは国や街を渡り歩き、商売の機会があれば小さな村や集落にも訪れる。
大きな商隊で移動する者たちもいれば、危険を顧みず単身で行商に歩く者もいた。
彼等が口々に噂するのは、荒野の果ての夢のような場所の話。
曰く、そこにはあらゆるものが集められている……無い物がないのだと。
曰く、そこでは飢えたり凍えたりする心配がないのだと。
曰く、そこでは誰もが可能性を与えられるらしいのだと。
ある者は、そんなうまい話がある訳がないという。
ある者は、いやいや俺はこの目で見てきたのだと胸を張った。
他のひとりは、知らないなんて商人としては三流だとまで宣った。
それは荒野の果てにある……………………百〔数多の〕貨〔品〕を扱う〔大きな〕店。
賢者が名付けたその場所は、百貨店というらしい。