いいわけのようなもの
何となく、中途半端というか消化不良で終わってしまった気がします。
この後も21世紀初頭まで続けることも出来ますが、どちらにせよ明確な結末に達しない可能性が高いので、今回はここで幕とさせていただきます。
これも劇的でない歴史を目指した結果だったのかもしれません。
で、今回何が結論だったかと言うと、一つは日本をいち早く「戦後日本」に近い状態にする事。
もう一つは、ロシア人を中心としたヨーロピアンによる東アジアに対する重みが、我々の世界よりも重く長く続くという事、になるでしょう。
第二次世界大戦の結末によっては多少の違いはある筈ですが、たとえ東西両陣営の欧州での境界線が史実と同じだったとしても、東アジアの受ける重みにはあまり差はないのではないかと思います。
我々の世界では、日本ががむしゃらに突っ走ったことで重みが少し軽くなりましたが、この世界の日本はいつも少し躓くばかりで、あんまり元気がありません。
必要以上に重荷を背負う気も、はね除ける気もありません。
有色人種世界を啓蒙する気も、あんまりありません。
その余波で、世界中特に東アジアの植民地の独立は5〜10年は遅れるでしょう。
東南アジア諸国の独立も、アフリカの独立と同時期になるんじゃないでしょうか。
しかも東アジアでは、共産主義になる国がさらに増えるかもしれません。
日本の苦労は、今後もずっと続く事でしょう。
なお今回は、朝鮮半島と万里の長城以北の地域が、ロシア人の重みに押しつぶされるという分かりやすい構図にしてみました。
冷静にシミュレートしても、最低でも朝鮮半島は、一度はロシア人の属国になっているでしょう。
また、日露戦争で日本が負けた場合、ロシア革命の頃にはね除けるだけの力も朝鮮民族にはない筈です。
半島南北分断統治などという勢力圏の棲み分けは、日露戦争頃の日露の国力差から考えてまずあり得ません。
基本的に、ロシアが朝鮮半島を押しつぶして終わりです。
イギリス、アメリカが文句を言っても、投射できる力が違うので分断はほぼあり得ないでしょう。
そんなものがあるのは、日本に都合の良い架空戦記の中だけだと思います。
1905年のアメリカには、まともな陸軍すらありませんからね。
そして重みの重心から少しだけズレている日本は、別の側から圧力をかけてくる陣営、つまりアメリカ又はイギリスのアングロ陣営の盾もしくは橋頭堡として利用され続け、日本側も自らの弱体からその役割に甘んじ続けるでしょう。
それが膨張傾向を持つ巨大大陸国家近傍の島嶼国家の宿命の一つであり、国家にとっての生存術となるからです。
そして二度の世界大戦で他人のために血を流すことで日本は生きながらえ、二度目の世界大戦が終わっても次なる覇権国家であるアメリカの盾として過ごすことを余儀なくされます。
座る椅子は多少立派になりますが、状況は常に同じです。
アメリカとロシアという巨大な勢力に挟まれ、自ら積極的な行動を控え続けると結果はだいたい同じになる筈です。
そしてこの世界では、日本人が本当に坂の上に至ったと実感する事は恐らくないのではと思います。
それでもこの後の日本は核兵器を自ら保有して、国連常任理事国として相応にデカイ面はしているでしょう。
日本的な情景、制度、精神風土の多くも、我々の世界よりも残されるかもしれません。
その代わり日本の経済的な発展は、最低でも10年程度は遅れるのではないでしょうか。
恐らく、余程の幸運が訪れないかぎり、高度経済成長もバブル景気も起きない可能性の方が高いでしょう。
周りに「お友達」が少ないことも、日本の発展の足かせになる筈です。
「それなり」には発展するでしょうが、「それなり」以上ではないでしょう。
立ち位置的には、私たちの世界でのフランスの冷戦時代が少し近いかもしれません。
そして冷戦時代においては、世界有数の経済力と核兵器を持った黄色い常任理事国、もしくは孤立した地域大国という地位の筈です。
なお、我々の世界と同じように冷戦崩壊を迎えるかは分かりませんが、恐らくソビエト連邦は史実程度にしか長続きしないので、ほぼ同じぐらいの時期に次の時代へと入ると想定してほぼ間違いないでしょう。
経済面、技術面で、我々の世界よりも厳しいですから、我々の世界よりも早くソ連が倒れている可能性も十分にあるでしょう。
そして日本の未来が明るいのかというと、この場合共産主義国だった北東アジア諸国が中央アジア諸国並でいいから民主化していれば、多少の希望があるかもしれません。
日露戦争敗北以後ロシア人に支配され続けたコリア民族も、ようやく独立できるかもしれません。
そこに住んでいるのは、キリル文字使ってロシア正教信じる人も多いから、我々の知るコリアとは大きく異なっているでしょうが、日本を妙に意識もしない、かもしれません(それでもキムチは食べてるだろう)。
北東アジアの元騎馬民族国家群のおかげで、仮に人民中華が中華中央の統一に成功してもかなり小柄になるので、もう少しやりやすい相手になっているでしょう。
もしかしたら、共産主義国同士で一度ぐらい大規模な局地戦争をしているかもしれません。
この世界では、日露戦争以後からいがみ合っている関係なので、相当恨みを溜め合っているでしょうからね。
ただこの場合、日本も色々と面倒を背負うことになるでしょう。
このように、冷戦中はともかく冷戦後は、我々の世界よりも多少やりやすい可能性はいちおう存在しています。
また一方で、このまま南北中国として分裂を続けた場合、南中国となる中華民国が1970年代ぐらいに高度経済成長を始める可能性があり、この場合日本の立場はさらに微妙になるでしょうね。
そしてどうなるにせよ、私たちの世界ほど日本が隆盛する事はないだろうというのが、一応の結論になるかと思います。
最後に、全体的な想定について少し書いて今回の平行世界を終えたいと思います。
日露戦争で躓いた後では、日本の圧倒的繁栄や派手な大戦争を自ら始めるといった「坂の上」に至ることは、極めて難しいのではないかと思います。
全体的な道のりがドラスティックでないと、坂の上には行けない筈です。
帝国主義全盛の時代に一度でも躓く事は、誰かの風下に立ち続ける可能性が高いことを意味します。
日本のような立ち位置の場合、挽回を取り戻すのは極めて難しい筈です。
先にも書いたように、アングロ勢力の風下に立ち続けなければいけないでしょう。
この流れは、1902年に日英同盟が成立した時点で、どのようにシュミレートしてもほぼ違わない筈です。
一度目の世界大戦まではイギリスの風下に立ち、その後は延々とアメリカの風下に立ち続けるでしょう。
独り立ちすることは、大陸勢力が全て大分裂でもしない限り恐らく許されません。
一部の架空戦記のように、うまく立ち回ればもっと発展できるのではという意見があるかも知れませんが、あれらはファンタジーもしくはメルヘンです。
帝国主義の時代のヨーロピアンを甘く判定しすぎています。
クラスの女子全員が美少女だというぐらいのファンタジーです。
書かれた作家さんも、その程度のことは分かって書いている筈です。
当然ですが、今回の想定ですら十分以上にファンタジーです。
実のところ、一度大きく躓いてしまうと第二次世界大戦より前では、「永遠の二等国」という立ち位置より上にはいけないでしょう。
正直、自主独立を維持できれば御の字というシュミレートが最も正しいかもしれません。
ある程度属国化される可能性も、十分以上に存在した筈です。
日露戦争後に、日本政府が債務不履行を宣言しなければならない可能性も十分以上に存在するからです。
債務不履行後にイギリスの衛星国になるというのが、可能性としては一番高いでしょうか。
少なくとも、アングロ勢力の経済的衛星国の地位に甘んじ続けなければいけないでしょう。
故に、対局に位置する近隣地域として、朝鮮半島には酷い目にあってもらいました。
帝国主義時代の白人国家ならば、平気で今回書いた事ぐらい酷いことする筈です。
とはいえ、20世紀に入ってからのジェットコースター並の史実日本の歴史が最良だったとは思えませんし、客観的に考えたら我々の世界の歴史は、普通に考えればあり得ない事ばかりが起きていますからね。
そうした所に、少しでも焦点を当てることが出来ていたのならと思います。
この度もお付き合いいただきありがとうございました。
今回は少し短めですが、これにて幕とさせいただきます。