第六話 奏太との思い出の場所
俺と奏太の生まれ育った場所へ…
俺は霊石の2人と電車の中で揺られていた。
奏太は今なにを考えているんだろうか。
電車の中は乗客者は少ない。まぁ元々の住んでいる人が少ないからだろう。でも
駅が開通しこれから、すこしずつ増えていくのかな。
そうしてたくさんのお店が建って行くのかな。
そう思うと、この前までテレビで見て「復興なんて全くしていない」と感じていたのに、今は「復興進んでるんだな…」と実感する。
外から見える景色。俺の知っている景色では無いけど、懐かしく思えてしまうのはなぜだろう。窓から見える景色と、俺の記憶の景色は面影もなく違うのに。
きっと、本能なんだろう。犬や猫にもあるような。
アナウンス「次はぁ〜海原〜海原です。お出口はー」
奏太「懐かしい響きだね」
相之助「ああ。降りるか。」
ずいぶんと立派な駅だな。元々あんな無人駅だったのに。駅前なんて、小さな商店とちょっとしたスーパーがあって…とかだったのに、今の駅は沢山の店が出迎えてくれるじゃねぇか。
姫花と奏太は霊石袋から出てきた。
姫花「…海の香り…。素敵です!。
ここが奏太さんと相之助さんの思い出の…」
奏太「…ちがう……。ち、ちがうよ…。」
相之助「お前…い、言いたいことはわかるけどさ、元の場所でも形でも無いけど、ここが今の海原え…」
奏太「ちがうんだよ!!!!!!」
相之助「奏太!!!」
奏太は涙を流しながらふわっと居なくなってしまった。
相之助「奏太…」
姫花「わ、私…やっぱり無理を言ってしまったようですね…奏太さんや相之助さんの気持ちも知らずにズケズケと…」
相之助「いいんだ。…いいんだよ。どうしようもねぇことで謝るな。あがいたって、どうすることもできない…。受け止めるしかねぇんだよ。」
姫花「相之助さん…」
相之助「俺はテレビとかで見てたし、ここへ来るときもある程度の心構えはあった。だが奏太は霊だ。何もしらねぇ。噂でしか聞かない自分の故郷の現状を今すぐ受け止められる方がおかしいんだ。あいつの記憶にはまだ昔の故郷があるんだからな。
…うん。心がある証拠だ。あいつの地元愛がある証拠だよ。」
姫花「…相之助さんはまだ若くていらっしゃるのに素敵な事をおっしゃるのね。」
相之助「そんな事ねぇよ…。奏太じゃなくても俺だってまだ…」
これ以上喋ったらダメなような気がした。
これ以上喋ったら、…泣いてしまいそうな気がした。
新しい駅を見ているのに、どうしても昔の駅の景色がフラッシュバックして、重ねようとしてしまう。どう重ねて見ようと重なるはずがないのに。
そんな自分がいたから奏太を追いかけられなかったんだ。
姫花「追わなくても良いのですか?奏太さんを…」
相之助「いいんだ。あいつもそこまでバカじゃねぇ。それに、行きそうなところなんて分かんねぇしな。あいつとは生きていた時だけで数えると、『親友歴1週間』だ…。分かるわけねぇ……」
姫花は返す言葉がないのか、すこしの間会話が無くなった。
相之助「なぁ姫花。個人的で悪いんだが、小学校行っていいか。」
姫花「え!あ、もちろんですよ!連れて行ってくださいっ」
相之助「すまないな。アレ以来ここにはきたことがないんだ。」
そして、俺はタクシーを捕まえて、後ろに乗った。
運転手「にいちゃん。どごまで?」
相之助「あ、今は取り壊されているんですが…。海原第二小学校の跡地まで行きたいんです。知ってますか?」
運転手「あー第二の方でいいんだね?あそこは本当に何もないけど。なんか用事かい?」
相之助「はい。第二のほうで。母校なんです。
あの一件以来行ってなくて。」
そして運転手のおじさんはタクシーを走らせた。
その道はところどころ俺の記憶と重なる。
友人の家。昔使われていた線路、毎日のように行ってた駄菓子屋さん、よく遊んだ公園。…今はどれもない。跡地があるだけ。
そんなことを考えながら外を眺めていたら運転手のおじさんから話しかけてきた。
運転手「君は幽霊じゃないよね?」
何を言っているんだこの人は。
相之助「そんなわけないじゃないですか。まぁ、俺は見える方ですけど。」
運転手「ほぅ!霊感があんだね?んでは、にいちゃんは幽霊じゃないな!疑って悪かったね。幽霊はな無口な人が多いんだ。」
本当に何を言ってるんだこの人は。
この人も見えるのか?
運転手「いやぁ…数えられるほどしかまだ経験ないけんどよ。ここらへんは被災地だからか、タクシーを捕まえて故郷に帰りたがる幽霊がおおいんだわ。」
幽霊を乗せる!?車に無理矢理乗り込んでくるケースはあるが、普通のお客さんのように振る舞うのは珍しい…俺が無知なだけか?
相之助「その話、詳しく聞かせてくれませんか?」
運転手「にいちゃんは物好きだねぇ」
運転手さんは気前よく話してくれた。
運転手「ふっふっふ…。
経験した中で1番怖かった話をしようか。」
姫花と俺はゴクリと喉を鳴らした。
運転手「俺は元々農家だったんだが塩水でダメになってな。んで震災から2.3年後今のこの職業についたばりだったごろん話だ。
熟年の運転手から、「気をつけてちゃんと走れよ」と言われてな、まぁ、とりあえず地元の人間だから道とかには心配ねぇと、だから大丈夫だと言ったらさ、
そしたら、
「いや、常連のお客さんで、その人は厄介もんだからちゃんと乗せてやんないと痛い目見るから本当に気をつけろよ!」と真面目な顔して言うもんだから、俺はめんどくさいお金持ちな客なのかなと軽く、はいはい。とそん時はかるく流したんだ。
そしてある夜。終電に乗ってきたであろう若い女の人が乗ってきて、どこまで?って聞いたら、『着いたら言うので』って暗い声で言ったっきり話しかけても無視されてよ。俺は彼氏にでもふられたのかなとか思いながらも車を走らせたんだ。
そしたら着いた場所が塩水に浸かった場所で何もないところだったんだよ。おかしい…まさかとおもって、後ろを振り返ると後部座席にはだれものっていなかった…。ありゃゾッとしたね。」
その霊は、今はないけど、家があったのかもしれないな…暮らして居た家が。
…家に帰りたかったのかもしれないな。
相之助「それは怖いですし驚きますね」
運転手「そうなんだよ。それに、その運賃は運転したこの俺が払わなくちゃいけねぇって事になってんだ…いやまいったね。」
相之助「なんでですか!!!」
運転手「霊を乗せたやつが責任を取れ。って感じなんだろうな。」
タクシーのおじさんもこりゃたいへんだ…
運転手「んで、話はこれからが本番で、」
んお!?
運転手「運賃は自己責任って聞いて、嫌になってよ、次からは絶対に乗せないと決めたわけよ。」
うんうん。そりゃそうだわな
運転手「そして、それから3週間後くらいに、またあの霊の女が乗ってきて『着いたら言うので』って前回同様いうわけ。俺は言ってやろうと決心して、
『申し訳ないんですが、このタクシーはあの場所までお客様を乗せないでくださいって規定になっていてお乗せできない事になってるんですわ。すみませんね。ですので…』って言ったら、
後部座席にはとっくに女は居なくなってて、諦めたんだなとホッとした瞬間、耳元で
『…なんで?』
って声がしたんだよ。その瞬間っ!フロントガラスから逆さになった女が俺をガン見してきて、俺は叫んで驚いて怖くて怖くて外へ出ようとしたんだが、鍵を閉めてないはずなのにドアが開かなくて、俺は焦って焦ってひたすらガチャガチャ開けようと試みた。ハッとフロントガラスを見ると居なくなってて、居なくなったのか?とおもった瞬間。
足首を掴んできて、こっちにゆっくりと這ってよってきてさ、俺は金縛りで動けなくなって、顔の近くまで這ってきて、恐怖で頭が真っ白になった瞬間、
ガチャっと熟年の運転手が「どうした?」とドアを開けてきて、その瞬間体が軽くなってや、女は居なくなってたんだよ。
あれは本当に今でも忘れられない恐怖体験だったな。あの顔を今でも覚えてる。10センチくらいまで近づいてきたからな。いやぁ…こわかったなぁー…。」
相之助「こ、怖いっすね…」
…うん…。想像以上に怖かった…。
きっとその女は自分が霊だと、死んだ事に気づいてない上に家がもうない事すらも気づいてないんだな…。帰りたくても帰れない。何度帰っても帰ってもまた駅に着いてしまう。だからまた乗せてもらう。
…そう思うと可哀想だなと思ってしまった。いつまでその連鎖はつづいてしまうのだろうか…。
相之助「そ、その霊は今どうしましたか?」
運転手「そりゃもう祓ってもらったさ。でも、まだまだこういうお客さんいるんだよ。最近だとお婆さんの霊…。尽きないなぁ…。あの女の霊の一件以来断るの怖くなってや、乗せて行ってしまうんだよ。まぁ、熟年の運転手さんはそれが1番いいと言ってくれたがな。」
…でもそのお金は…。いや、これ以上は言わないでおこう…。
運転手「ほれ。着いたぞ。俺ん話ばりして悪かったなぁ。久しぶりに楽しかったわ。」
相之助「いえ!!こちらこそ!嫌な記憶思い出させてしまってすみませんでした…」
運転手「やーやーやー!!俺が話したくて話したんよ!気にするこったない!んじゃ!俺はもどるがんねわ!また来たら俺んタクシー使ってけろな!」
相之助「もちろん!!」
運転手のおじさんは笑顔で窓から手を振ってくれた。
話は怖かったけど、霊には霊の事情があるんだろうな。
…で、ここが俺の母校…『海原第二小学校』があった場所か…。たしか…ここの緩やかな坂道から自転車を押して登ってその上にある駐輪場に停めて、学校へ…。…肉眼で見るとほんとに実感する。
『もう何も無い』事に…。
そして、子供の霊はもちろん、たくさんの霊が居た。
うん。そりゃ霊いるよね。うん。どこにでもいるんだけどさ。ここの地帯は特にだな…。
姫花「運転手さんの話…同じ霊だとは思えない怖さでした…今やっと声が出ましたよ…ふぅ…。ここが相之助さんの小学校の跡地…。ん?隣の建物はなんですか??」
相之助「ああ。昔はイチゴの工場だったんだが、今はどうだろう…やってんのかな…。米マーク書いてあるからお米も始めたのかな。綺麗になってるし、なにかしらはやってるんだろうなぁ…。まぁ!とりあえず工場だったんだ!」
姫花「なるほど。そうなんですねぇ!
…にしても…今は奏太さん不在…。そしてこの霊の数…。大丈夫ですか?」
うっ…。1番不安だったところを突かれた。
相之助「姫花は防御系に変身できるか?」
いうと同時に姫花は奏太ほど大きくはないが、手に持つタイプの軽い盾に変幻した。あ、アルミ製じゃないだろうな…ってくらい軽い…。心配だ!!!!
姫花「私はこちらの専門ではないので、浮く力は失われ、私の体力も耐久値も奏太さんほど保ちません…。ですから、攻撃でなんとかするしかないかと…。
攻撃の方でしたら盾変幻よりも遥かに長く変幻してられます!特に銃の類でしたら!」
こりゃ心配だ。
とりあえず姫花を元の姿に戻した。
姫花「私は、接近系銃と、遠距離系銃の双方に変幻出来ますので、相之助さんのご都合でお使い分けください!」
相之助「あぁ。わかった。」
とりあえず変幻させてみようか。まずは接近系。
よく見る拳銃だな。そして、遠距離系。
…!?
なんだこれは…うまく説明は出来ないが、一言で言うと、『スナイパー』…。かっこいいな。
照準を合わせるための覗き穴があって、テレビでしか見た事ないような武器が今ここにある…。さすがにそこまで重くないが、拳銃に比べると遥かにデカイし長い。
…これ、姫花か?あの美しい見た目とは裏腹にゴツいものに変幻するもんだな…。頼もしいっちゃ頼もしい。
そして姫花が戻った。
姫花「接近戦、遠距離戦どちらでも可能ですのでどうか使ってくださいっ!」
相之助「気になってたんだが、なんでそんなに自己アピールがすごいんだ?」
姫花はギクッとした表情を浮かべた。
姫花「…泉さん(龍之介)があまり私を使っていただけなかったので…。『銃は使い心地悪いしあまり好きじゃない』と言われてしまったものですから…
私も好きで飛び道具になったわけではないのに…ううっ…」
親父ぃ…あんたの霊石泣いてるで…。なんてこと言ってくれちゃってんの。
相之助「まぁまぁ姫花!泣くな!俺は飛び道具好きだから!特に銃なんてカッコよかったぞ!うん!」
姫花「本当ですかぁ…?ぐすっ」
相之助「あぁ!もちろっ…。!」
姫花は瞬時に拳銃に変幻し、俺は後ろから襲ってきた霊に一発ぶち込んだ。そして霊は叫びながらスッと消えていった。クリティカルってところか。さすがだ。
相之助「ふぅ…間一髪…。」
姫花「お見事です!間一髪ではありません!まだまだ余裕のようにお見受けられましたが??」
相之助「まぁな…。普通の武器だったら襲われてただろうな。
反応してから拳銃を取り出し、そして照準を合わせて打たないといけないところを、
霊石なら、悪霊を感じた瞬間に俺の手元に変幻した拳銃がもうあって、拳銃を悪霊に向けた瞬間、照準は霊石がやってくれるから俺は打つだけだもんな。
そう考えると華麗で、絆を感じるよ。」
姫花「これが、霊石と操術者の『信頼と連携』によってなされる事です!!!お見事でございます!私を信じてくれたおかげです!」
相之助「いやぁ、ホントつくづく実感ねぇ成敗だな。にしても、一発撃って急所。さすがだな。一瞬だったわ。」
姫花「相之助さんに褒めていただき本当に嬉しいですっ!!!」
姫花は久しぶりに使ってくれたのが嬉しかったのか元に戻った後、クルクル回った。
でもやっぱり防御ねぇとこえぇな。今のは俺が反応できたからいいが…不意打ちだったら…。
母校も来れた事だし。奏太探しついでに昔の通学路歩いて帰ってみるか。
奏太…本当に今どこにいんだよ…。
続く。
第6話もありがとうございました!
奏太とはぐれてしまった。
第7話とよろしくお願いします!