第ニ話 旧友との再会
お前は…
…お前の名なんて忘れるわけない。
相之助「おおおお、お前は!!!あ、『秋映 奏太』…!!」
奏太「えぇ!名前フルネームで覚えててくれてたの!?嬉しすぎる!!」
奏太は相之助の手を両手でギュと握りしめた。
相之助「冷たい…で触れられる…。なんでお前ここに居んだよ。」
奏太「?何言ってるの?死んだよ?相之助君が見えてるだけだよ!」
相之助「知ってるわ!!あっ…すまん」
奏太「ほんと…昔のまんまっ。あはははは」
奏太はあの頃と同じように笑った。俺は笑えなかった。
相之助「怨んでねぇのかよ」
奏太「誰を?」
相之助「お前をひき逃げした奴とか…お、俺とか」
怨んでるに違いない。なぜならこいつはここに居る
。ということはこの世に未練を残し成仏できないままで居るってことだからだ。俺は奏太の顔を見るのが怖かった。
奏太「何下向いてんの?僕は誰も怨んでないよ?てかなんで小学生からの友達を怨まなきゃならないのさ!」
相之助「俺はもうすぐお前が死ぬんじゃないかって薄々感づいてた。なのに言わなかった。あの時、一声かけてやればお前はまだ生きられたかもしれないのに…」
奏太「バッカだなぁ!本当にあの頃と変わってないでやんの!!」
え?
奏太「相之助くんよく言ってたじゃん!!『人を怨むな。そして運命はちゃんと受け止めろ』って!」
俺そんなこと言ってたのかよ…恥ずかし…
奏太「…あのね?…僕を引いたトラックのおんちゃん、心筋梗塞で僕を引く前からとっくに死んでたんだってさ。怨むなと言われる前に、これじゃ怨めないよな!おんちゃんかわいそうだったもん。」
奏太は俺に、ニッと無理矢理笑ってみせた。
俺より断然背丈は低いのになんだか大きく感じた。
相之助「お前らしいな…。でも、誰も怨んでいないのになんで浮遊霊なんかになってんだよ。」
奏太「?」
相之助「事故死の怨みで成仏できなかった場合、大抵は呪縛霊になったり…その…事故った死体の状態…いわゆる怪我した状態の霊として現れることが多い。だけどお前は健全なまま霊になってるから本当にトラックを怨んでないってことはわかった。俺のことも怨んでないっていうのもわかった。んじゃなんで成仏されずに浮遊霊なんかに…」
奏太「…そんなのは理由は一個だけだよ。『相之助くん』」
相之助「へ?やっぱり俺じゃん。」
奏太「いや、相之助くんさ、僕の死以来、友達とか作らなかったろ。僕せいだろ」
相之助「ちがっ」
奏太「違わない!!!」
相之助「…」
奏太「はぁ。これだから成仏できないんだよ。相之助くんが自分で自分を殺人犯だと思い込んでいるうちは。」
…今まで俺はその罪悪感にかられながら生きてきた。だけどこいつは…
奏太「やっぱり、僕の言葉だけじゃ僕は成仏できないんだなぁ。他に理由があるのかな?」
相之助「…」
奏太「相之助くん。僕が成仏できるまでずっと友人でいてくれませんか?」
と言うと奏太は俺の手を握ってきた。あれ…霊のはずなのに手がまるで生きてる人間のように温かい…
ふわぁっ!
奏太は光に包まれて、僕に微笑み、目を閉じた。
ーーーーー
光が消えると奏太の姿はなかった。
まさか成仏…いやだ…嫌だ!!
相之助「奏太!!奏太!!そうたぁぁ!!!!」
奏太「そんなに必要とされちゃ照れるよ…あは」
まだ奏太の声が聞こえる!
相之助「奏太!今どこに居るんだ!?」
奏太「相之助くんの手の中だよ」
え?俺の…?
握っていた手を開くと花豆のような白い石が乗っかっていた。
これが親父の言っていた霊の石…『霊石』?
奏太「僕は前、相之助くんのお父さんの石だったんだ!だから知らないことはなんでもきくがよい!!」
ただの白い石なのに感情が…表情がなぜか伝わってくる。
相之助「お、おまえなぁ…」
俺はなんだか、小学生時に友達になりたいと言ってきた奏太の顔を思い出して、ふと、笑ってしまった。
そしてその奏太は俺の霊石となった。
ーーーーー 俺が5歳の頃の記憶。
龍之介「相之助。おまえにいいもんを見せてやろう」
相之助「え!なになになに!?」
龍之介「これだよ」
歪な白い石を1つ見せられた
龍之介「相之助この石はただの石じゃないんだよ?」
相之助「うん。見てすぐ分かったよ。」
龍之介「!? それはどうしてかな?」
相之助「だって、この『石さん達』、おしゃべりしてるもん。楽しそう!」
龍之介「『達』まで…?これは驚いた…。なんてお話ししてるのかはわかるかい?」
相之助「んー。それはわかんないや!父ちゃんはわかるの?」
龍之介「お父さんには分かるよ。お前にもいずれ分かるようになるさ。」
相之助「うん!僕も父ちゃんみたいになるよ!!えへへ!」
龍之介は相之助の笑顔につられて微笑んだ。
ーーーーーー
俺は奏太を握り締めながら問いた。
相之助「なぁ奏太。」
奏太「ん?」
相之助「俺はどうやってお前を使うんだ?お守りか?勾玉的な…。」
奏太「は!?お父さんから何も聞いてないのかよ!」
相之助「お恥ずかしくも…『お前ならできる』としか言われなかったからな…。どうしよう…。」
奏太「僕を握り締めながら女々しいこと言ってんじゃねぇ!」
相之助「う…だって本当にワカンねぇんだもん。どうすりゃいいんだ!?」
奏太「はぁ。その袋。お父さんからもらった袋に僕を入れて。
多分相之助くんならなにも教わらなくとも、本能で僕を動かせることができると思う。だってあの人の息子だもんな!」
相之助「説得力ねぇなぁ…」
とりあえず親父からもらった袋に入れて腰にぶら下げた。
相之助「こ、これでいいのか?桃太郎みたいだな」
奏太「うん。それでいい。で、いざとなったら僕が…くっ!!!」
奏太が急に喋らなくなった。
相之助「ん?奏太?」
奏太「…相之助くんはまだまだ感が鈍いんじゃないの…?」
相之助「へ?……うっ!!!!な、なんだ!!?」
奏太の言葉とほぼ同時に動悸がし始めた。
ドクンッドクンッドクンッ
何かが来る…。はっ!!!この胸騒ぎは親父の部屋からだ!!
俺は急いで親父の書斎へ向かった。
バンッ!!
着いたが何も居な……
窓の奥から何かが。何かがくる…。
奏太「相之助くん…気をつけろよ…怨霊だ。」
すると、窓の奥から、頭から肩にかけてぐちゃぐちゃに潰れた血まみれの女が出てきた。
相之助「…ああ。それも強い怨みを持つ、自殺怨霊だな…。」
奏太「相之助くんそこまで分かるの?」
相之助「伊達にこの体質と付き合ってませんよ!」
女はズズズと窓をすり抜けてきた。その瞬間腕が伸び相之助の首に向かって襲ってきた。
相之助「しまっ!!!」
俺は反射的に目を瞑った。
カンッ!
金物が当たった音がした。なんの音だ?俺は大丈夫なのか?
目を開けると目の前に盾があった。自分で持ってないのに独りでに浮いてる…。
相之助「ど、どこから!?」
奏太「相之助くんスゲェな!!本能で僕を動かしたんだな!!」
相之助「え?」
奏太「とぼけられるのも今のうちだ。さぁ、次々くるぞ!!!!」
女は4本腕を生やし高速で襲ってきた。その威圧で押された。
相之助「うわっ!!!!」
カカカカンっ!!!カカカカンっ!!!
伸びてきた腕を全て盾でガード遮った。
奏太「相之助くんやるねぇ!」
相之助「な、何言ってんだ!?この盾はどこから湧いて出てきやがったんだ!!!」
奏太「盾は僕だよ!!」
相之助「は!?お前は霊石じゃ…!?」
奏太「本当にわかんないんだね
…はっ!!『カンッ!』
くっ!!お話はあとでだ!僕、もうそろそろキツイよっ!?幾ら何でも4本の腕を1つの盾で防ぐのはキツイ…!」
相之助「じゃどうすればっ!!」
奏太「相之助くん!!想像するんだ!この女を成敗することを!!!」
相之助「成敗…この女を止めなきゃっ!」
俺は目をクワッと見開き、人差し指と中指をくっつけ、女を囲うように5角形を
空中で書き、はぁ!!っと5本指くっつけて押した。
女「ぎゃぁぁぁー!!!!!」
怨霊は苦しんで一旦は攻撃できなくなった。
奏太「今のは…龍之介さんもやってた…」
相之助「あぁ結界術だ。強い怨霊ほど効果が薄い簡易術だが…。そいじゃ…奏太!!トドメを刺す!!」
奏太「おうっ!!!」
と言うと奏太は盾から劔に変幻し相之助の右手に持たせた。
女「ぎゃぁぁぁー!!!!!」
怨霊は結界をバリバリ食い破り腕を一本伸ばし相之助を襲ってきた。
奏太「相之助くん!!!」
相之助「はぁっ!!!!」
相之助は伸びてきた腕をスッとかわし女の溝へ一直線に劔を貫通させた。
奏太「…!!」
女は唸りながら震え、金縛りにあったかのように動かなくなった。
相之助「女…悪かったな。これで何回めだ。」
女「が…が…」
奏太「何回目?何言ってるの?」
相之助「自殺した霊は強い怨霊となり、一回では払いきれない。でもこの姿を見ると、もう10回以上は祓われているはずだ。ここまでくればもう怨念ごと消し去っ…」
女「………リュウ…」
相之助「!?」
女「…………スキ…よ」
奏太「この怨霊…もしかして相之助くんの事、龍之介さんと勘違いしてるんじゃ…」
俺は…………。
相之助「……好きになってくれてありがとう。疲れたろ。もうゆっくり眠れ」
女「…!!」
女の体は光り輝き空へ飛んでいった。
光に包まれる際、女は泣いていたかのように見えた。
奏太「あれが成仏か…改めて綺麗だな。」
相之助「俺、親父の若い頃そっくりってよく言われてたんだ。この女は親父のことが好きだったが、今の母親を選んだからショックで自殺してしまったのかな…。まぁ、予測だけどな。」
奏太「龍之介さん…罪な男だぜ…」
相之助「全くだ…。ま、たぶん俺の両親殺したのあの女だろうな。俺の母親狙ってたって言ってたし。」
奏太「え!そんな!!あ!だから龍之介さんは僕の事放ったんだ。死ぬと分かって…理由分かって納得したよ。少しは…やっぱり寂しかったからさっ」
相之助「…」
表情が落ちてる俺に気づいたのか、奏太は劔の姿から本来の姿に戻った。
そして気まづい雰囲気をひっくり返そうと話をそらした。
奏太「にしても本当に初めてなのかー!?霊石扱うのー!」
奏太は満面の笑みで俺に話しかけた。
体は小学生のくせに…人の顔色みるなんてな…俺より大人かもな。奏太のやつ。…ふっ。応えないとな。
相之助「当たり前だろ。初陣だ。そして奏太が俺の人生初めての霊石なんだから。だからいろんなこと教えろよな。」
俺は奏太にヌイっと近づいた。
奏太「わ、わーった!わーった!んじゃこれから、奏太先輩と呼べ!」
相之助「は!?何言ってんだこのガキ!!」
奏太「生きてたら同い年だもんねー!!」
相之助「う…そ、そうだな………。」
そ、そうだよな…見た目だけだもんな…
奏太は超慌ててた。
奏太「あー!!!わ、悪かったって!あははー」
仲間に奏太が加わり、人生はまだまだ未知数だ。
雪がまだ道端に積もっていて春らしさのカケラもないこの3月上旬。
俺は今後『霊能霊媒操術者』として歩んで行く。この胸の鼓動とともに ー
*To be continued…
第2話!閲覧ありがとうございます!
相之助くんはこれからいろんな事件に巻き込まれていく暗示ですね!
語彙力あまり無いですが、言わんとしてること伝わればいいかなぁと思ってます!
第3話もお楽しみに!