あたしたちメリーさん
その場の思い付きで書き逃げです。
俺は今、自室で膝から崩れ落ち、放心状態となっている。大切な娘たちや、模型、RCが一つ残らず消え去っているのだ。
俺はおぼつかない足取りでキッチンへ向かい、夕食の準備をしている妻に「俺の大切なものを知らないか?」と尋ねる。
妻は悪びれもしない顔で俺にとっての死刑宣告をする。「今日のごみで全部捨てたわよ。あんな気持ち悪い物から卒業できてよかったでしょ。これからはもっと大人な趣味を持ってね。」
俺は泣いた、人の趣味を理解しないどころか貶し、人の大切な物を捨てるこんな人と結婚したことが受け入れられない。妻と同じ空間に居たくなくて俺は着の身着のままで家を出て夜の街を当てもなく彷徨う。
翌朝、俺は仕事を無断欠勤して駅のホ-ムに設置されたベンチに座っていた。もう生きていく気力を失い、自殺する覚悟が決まるのを待っていた。すると突然♪~♪~...着信音がポケットの中で鳴り響く。妻や会社の同僚、夫婦共通の友人からどんどんと電話がかかってくるためケータイの電源を切ったはずだ。しかしケータイ画面を見ると非通知と表示されている。無視すればいいのに俺は好奇心で電話に出てしまう。
「あたしメリーさん。今電車に乗っているの…」何とも古臭いいたずら電話だと思い電話を切る。
「一番線を電車が通過します。黄色い線の内側までお下がりください」とアナウンスが流れる。そして俺は覚悟を決め電車が入ってくる線路へ一歩踏み出した。
次の瞬間、強い衝撃を身体に受けるのを感じた直後に俺は意識を手放した。
俺が次に目を開けると真っ白い空間に居たよくあるなろう系異世界チート小説に出てくるあれだ。そしてテンプレ的な神様がテンプレ的な話をしてくる。適当に聞き流しているとケータイが鳴り画面に非通知と表示される。まさかと思い電話に出る。「あたしメリーさん。今あなたの後ろに居るの。」
俺が恐る恐る振り返ると大切な娘達や、模型、ラジコンが1/1スケールで立っていることに驚き喜ぶ、さすがに飛行機模型がフルスケールでって言うのには面食らったが。俺は感極まって泣き出す。
娘たちの一人、楓が「あなたを殺した妻を許さない。必ずあいつを殺してやる」と宣言する。そして他の娘たちもそれに賛同し、模型たちも賛同したようで、A-10はGAU-8を、F-2や他の戦闘機たちはM61をブゥゥンを鳴らす。
「俺は何も言わない。好きに暴れてこい」と送り出す。するとみんな一斉に消える。
神様は俺にこんな提案をしてくる「あなたにチートを授ける代わりに、大切な仲間と共に異世界転移させましょうか?」これは願ってもないことなので「お願いします」と即答する。「それでは、仲間たちが帰ってきたら一緒に異世界転移させましょう。」
みんなが帰ってきたことを確認して俺は率直な疑問を投げかける「メリーって名前の子はいなかったと思うんだけど、どういうことなの?」その答えにアリスが答える「私たち人形が捨てられたりすると、持ち主の元へ戻ろうとすることがあるの。そういう人形をメリーさんと呼ぶの。だから誰かの名前ってわけじゃないの。」と誇らしげな顔をする。俺的にはすっきりしないが納得する。
そんなやり取りをしていると、神様が「みんな揃ったみたいだから異世界へ飛んでもらうね」と言いながら俺たちを転移させる。




