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幼女魔王はただひたすらに我が道を行く  作者: あおいろ発泡飲料
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聖女たる妖精の姫君、魔王の娘ポジションに収まる

妖精の聖女がいてもいいじゃない。


姫君が可愛すぎて息するのがつらい。あ、息する必要なかった。 By聖女の下僕その1

ふっふっふ…やっと、今日、この日がやってきたわ!

そう!念願の!幼女魔王の謁見が叶う日が!賢者はカカオの実やコーヒーの実と引き換えに小麦やそれから作られる麦酒(ビール)を流通してもらえるようだけど、私たち妖精は魔界産の米を流通してもらうわ!あの花の蜜とは違った甘み…きっと海蛇龍(うみのじゃりゅう)の卵の燻製と合うわよ!

期待に胸を膨らませて、グランという先代魔王の右腕の魔人が転移で連れてきてくれた魔王城――なんだか前より新しくなってるわね…しかも見たことない技術がふんだんに使われてるわ。これ作ったのが幼女魔王って、どれだけ邪神に愛されてるのよ?――の謁見の間にいる幼女魔王と対面した。


「はじめまして!私は妖精の姫であり聖女であるアメルよ。よろしく魔王様」

「はじめましてだの。私はエルシャファン・ドゥ・ツェルストゥロン。気軽に"エル"でも"エルシャ"でも"アーロン"でも好きに呼んでくれて構わぬぞ」

「じゃあエルね。私のことも好きに呼んでくれて構わないわ」

「ではアメルよ。何故私との謁見を望んだ?妖精たちは特に魔界に魅力を感じておらぬと思うておったが」


その認識は間違いじゃない。確かに、私たち妖精は魔界のものに対してほとんど興味を持っていなかった。

でも!去年エルフの里で食べさせてもらった米を炊いたものがほんっとうに美味しかったの!それ以来、食わず嫌いをやめていろいろ食べるようになったのよ!妖精って基本、花の蜜とか甘いものしか口にしないのよねえ…


「魔界産の米って美味しいんでしょ?だからそれをこっちにも流してほしいのよ」

「それは構わぬが、代わりに何を流通してくれるのだ?」

「蜂蜜からじゃない、花の蜜から作る蜜酒(ミード)よ!魔族の口に合うかはわからないけど、いろんな花が存在する妖精の国で作られる蜜酒は、そのままでもよし!炭酸水と割って飲むもよし!凍らせてもハーブを浮かべても紅茶に入れても美味しいんだから!」

「なるほど、蜜酒か…この城で働くおなごは皆甘いものが好き故、喜びそうだの。それに、酒精が強くないものであれば民も好んで飲むかもしれぬ」

「あら、魔界の民って酒精が弱い方がいいの?」

「魔力が弱い者はそうだの。この城にいる者たちは皆魔力が強い故、酒精が強いものを好むが、弱い者は酒から得られる魔力の強さに耐え切れず、調子を崩してしまうのだ。食べ物と違って、飲み物はするすると胃に入ってしまうからな」

「そうなのね…じゃあ、いろんな種類の蜜酒を融通してあげるわ。あ、あと。賢者に聞いたのだけど、魔界でお菓子職人が増えてるんですって?」

「うむ。そうだが」

「じゃ、米とお菓子を流してちょうだい!私たち妖精が甘いもの好きって知ってるでしょ?」

「…なるほど。米の甘さに惹かれたか。ならばそちらで作る多種類の蜜酒と引き換えに、こちらも様々な菓子と米を出そう」

「交渉成立ね!」


ふっふっふ……これでみんなに米の美味しさを伝えることができるわ!

よし、次は私にとっての本題に入るわよ!


「それと話は変わるのだけど、エル、海蛇龍の卵の燻製は今あるのかしら?」

「あるぞ。…もしや食うのか?」

「ええ!私、食わず嫌いをやめたの。そうしたら、いろんな美味しいものが世の中に溢れてるって知ったの!海蛇龍の卵の燻製はちょっと前にマーメイドたちが試しにって作って食べさせてくれたのだけど…本当に美味しかったわ…あれは米と合うわね!」

「ほうほうほう。そうかそうか。では付いてまいれ。ついでに他のツマミも用意するぞ」

「ありがとう!話がわかるわね!あ、これ、うちで作った最高品質の蜜酒よ」

「……ほう。葡萄の花の蜜で作った酒か。ワインとも異なる芳醇な香りがなんとも言えぬのぉ……」

「凍らせるのが私的にはおすすめだけど、葡萄の紅茶に垂らして飲むのもいいわよ」

「試してみよう。礼を言うぞ」

「いーえ、こちらこそ!わがまま言っちゃってごめんなさい」

「構わぬ。食べ盛りの者たちに私が作ったものを食わすのは、趣味のようなものなのだ」

「あら、じゃあ私たちの仲ってことで、いつでもお邪魔しちゃっていいかしら?」

「歓迎しよう」

「ありがとう!」


……嬉しいのは嬉しいのだけど、どうして私、幼女魔王に頭を撫でられてるのかしら。確かに人間の三歳児くらいの幼女魔王に比べて、私はその頭一つ分の大きさしかないけれど。子どもを微笑まし気に見つめるお母さんみたいな顔されてるけれど。…まあ、悪い気はしないし、細かいことは気にしない!

でも、なんで一緒に連れてきた下僕たちが私を羨ましそうに見ているのかしら?不思議だわ。






魔王の手料理は破壊力がすごすぎた。なんなのよこのツマミとお菓子の種類と高級食材の贅沢さ加減!海蛇龍の卵の燻製だけでも、前食べたのよりうんと美味しかったのに、海蛇龍の白身のカルパッチョに、巨鳥(おおとり)の腿肉のから揚げ、崩山獣(やまくずしのけもの)の背肉の干し肉、果てには世界最強の食材と名高い黒龍(くろのりゅう)の卵で作った出汁巻き卵!黒龍の卵って小さい山ほどの大きさなのに、どうやって入手したのかしら?

さらにはその卵を使ったプリンに、魔界産の米を使ったもちもちのパンケーキ、エルフの里から流通してもらえるようになったカカオの実から作られたちょこれーとも、この世にこんなに美味しいものがあるのかと思うくらい、本当に美味しかった。特にちょこれーとは下僕たちが泣いて喜ぶくらい美味しくて、ぜひともこれを妖精の国に流してほしいとお願いした。エルは喜んで頷いてくれた。


「アメルの食べっぷりは見ていて気持ちがいいのぉ」

「妖精の小さな体のどこにこれだけの量が入っているのか謎ですが…」

「ふっふっふ、グラン。私たち妖精は、魔族と同じく食物を、物質を、魔力に変換するのよ?」

「ああ、なるほど。妖精には美食家が多いと記憶してはいましたが、魔族と同じ食の仕組みでしたか」

「そういうこと!まあ、魔族みたいに魔力の塊ってわけじゃないけどね。一輪の花と魔力でできるのが、私たち妖精だから」


だから、魔族みたいに人間、エルフ、ドワーフのような親子の概念というのがない。私たちには排泄機能も生殖機能もない。それはマーメイドとセイレーンも同じだ。あの子たちは魚や海鳥が死んだ瞬間の魔力解放によって生まれる存在だから。

そのはずなのに、エルは私たちを、自分の子どものように見ている。ふと見ると、よく愛おし気に、優しい顔で微笑んでいる。見た目は幼女なのに。

でも、悪い気はしない。むしろ、エルフたちを見て憧れすらあった親という存在に嬉しく思う。

あ、また頭撫でられたわ。


「グラン」

「………せめて、幼女じゃなくて少女くらいにはなってください。見た目的に幼い姉妹にしか見えないです」

「そこは大人の女性になれとは言わないのね」

「いまいち大人の女性なるものの想像ができぬのだ。というより、私には似合わぬでの」

「…そうね。喋り方は古臭いのに、大人なエルってのが想像できないわ」

「そうだろうそうだろう。ほれ、この姿はどうだ?」


エルが一瞬で少女とも大人の女性ともつかない姿になった。六対の翼はそのままに、わずかに膨らみを増した胸元を、へそが見えるまで大きく開けたドレスが、幼さと色気を醸し出している。右側が短い斜めに切り揃えられた後ろ髪は気だるげにうねり、これまた右側が短い斜めに切り揃えられた長い前髪に隠された蠱惑的な青く縦長い瞳孔の黒目が美しい。全体的に黒一色なところが、余計に仄暗い美しさを演出していた。


「……………」

「ちょっとグラン、何見惚れてるのよ?」

「……あの幼女がここまで成長するとは、恐ろしいと思いまして」

「魔族に性欲がなくてよかったわね。この姿のエルだと、色に狂った男たちがほいほい釣れそうだわ」

「…そこまでのものかの?」

「危険な香りがぷんぷんするわ」

「遊女か何かですか貴女は」

「…単に成長させただけなのだがのう……それに、遊女と言うには魅力が足りまい。ほれ、この胸のなさを見よ」

「それ、その手の趣味の男が見たら喜び勇んでがっつくわね」

「ロリコンはお断りだ」


ろりこんが何かはわからないけど、要するに幼げな少女を好む性癖を持つ男だと理解した。


「これならアメルを抱えても違和感はなかろう!」

「さらっと娘認識しちゃってますけど、その姿でも違和感しかないです」

「む…」

「普通に見ても、お姉さんよねえ」

「むむむ…」


あ、でも小さな膨らみとは言え柔らかくて気持ちいいわ。まるで綿毛になったタンポポのベッドで寝てるみたい。


「婆になると祖母と孫だしのぉ…」

「もうそれでいいんじゃないですか?喋り方も合ってますし」

「嫌だ。私は母になりたいのだ」

「父親がどこにもいませんが?」

「……おぬしに父性はなさそうだの」

「私を父親役にしようとしないでください。大体貴女に息子認識されてるのに父親はないでしょう」

「それもそうだ」


うーん、本当に眠くなってきた。

二魔の会話を子守歌に、私は眠気を抗うことなく迎え入れた。






「…のう、この子をここで面倒見てもいいかの?」

「確かにとても愛らしい我らが姫君ですが、それはなりません。聖女様として妖精の国で仕事がありますので」

「むぅ…世の中儘ならぬ」

「…私たちで我慢してください」

「………………むぅ」

妖精聖女をご紹介。以下設定。


アメル(أمل)

妖精のお姫様であり聖女。名前はアラビア語で「希望」の意味。

スノーホワイトの髪色に蜂蜜色の目。白いガーベラから生まれた妖精。三頭身。背丈は幼女魔王の頭のサイズと同じくらい。銀色に輝く薄翅の超絶美妖精。

傲慢不遜とも取れる言葉遣いとは裏腹に、非常に素直で義理堅い。見た目に似合わず食いしん坊で、エルフ領で米料理を食べて以来、ゲテモノでも食べるようになった。美味しいは正義。

蜜酒は基本、聖女監修。そのため世に出る妖精の国産の蜜酒はびっくりするほど値段が高い。花の蜜から作られているので生産量が少なく、加えて妖精たちが消費してしまうせいであまり外にでないのも要因。でも実は、聖女には蜜酒の量を増やす魔法が使える。しかし、もしもの時のために大量に備蓄しているので、やっぱり世には滅多に出回らない。

幼女魔王に花を咲かせる魔法を習って以来、せっせと魔界に流通させる蜜酒作りに励んでいる。食べるのも好きだけど、働くのも好き。

聖女の名の通り、聖なる魔法の使い手。浄化や治癒はお手のもの。主に妖精の国の花々に使用している。そのため、妖精の国の花は他の花と違って咲いている期間が長く、採れる蜜もやや多い。時には花の蜜を狙う巨蜂(おおはち)斑毒蜂(まだらどくばち)などの魔獣に対しても使用。浄化された蜂たちは、その後肥料に変える。




妖精とは。

一輪の花と、それに凝縮された魔力が加わって生まれる種族。死ぬ時は枯れた花に変わる。サイズは大体人の頭くらい。二、三頭身。羽根は蝶のだったり、蜻蛉みたいな薄翅だったり。多いのは薄翅。

甘いものが大好きで、それさえあれば生きていける。寿命は生きている間に摂取する魔力にもよるが、大体二百年。

基本的に引きこもり。妖精の国の外には出ない。小さい体では移動するのも一苦労だから。その結果、閉鎖的になってしまっている。中には妖精以外の種族を知らない妖精もいる。

空の神から選ばれる聖女を至高の存在とし、彼女のためだけに働く。中には行き過ぎてドマゾになることも。でも聖女は大体サディストが多いので問題なし。というか聖女以外はマゾの可能性を秘めているので、ほぼ全員(マゾヒストとして)開花する。…変態じゃないよ!聖女に使われることを何よりの喜びにしてるだけで。


妖精の国とは。

妖精の住む、小さな小さな国。唯一の内陸国。魔界と人間の国の間に挟まれている。見た目的には大きな花畑にしか見えない。面積的には人間の王族の城くらい。

花の結界により、妖精以外の種族の立ち入りは絶対不可能。しかし、魔獣は別。

多種多様の花が咲く、奇跡の花畑。名産は蜜酒。ただし出回る数は非常に少ない。

交易しているところは今までなかったが、魔族と交易を行うことになった。お菓子楽しみ。

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