月の石持つ鍵に交わす約束
満月と一緒に鍵探しを始めた一日目。しばらく時間が経ち、気づけば夕方になっていた。
そこでわたしは、大事なことを思い出した。
「満月、鍵ってどんな形?」
それも知らなければ、探しようがない。しかもみつけたところで、それが満月の鍵だと気づけないかもしれない。
「鍵自体は、普通のと変わらないんだけど、飾りに丸いムーンストーンがついてるんだ。月にかざすと、同じようにほわって光って綺麗だよ」
ムーンストーンって、確か宝石の名前だ。昔は月のかけらだと信じられていた、というような話をどこかで聞いたことがある。
「早くみつけて、和泉にも見せてあげたいなぁ」
「うん。頑張ってみつけよう」
しかし、暗くなってきたので今日の鍵探しは終了だ。夜の方がみつけやすいらしいのだが、暗いと危ないからと言って、満月が反対したのだ。
*
「今日の夜ご飯はオムライス~」
「……! 和泉。このおむらいすって、三日月みたいだねっ」
形が月に似ているという理由から、満月は卵料理を気に入っているようだった。だからこのメニューなのだ。
まだ会ってそれほど経っていないけれど、満月の好きな物を知ることができたのは、うれしい。
「満月、ムーンストーンって白色だっけ?」
「色々あるみたいだけど、僕らの鍵についてるのは白だよ」
白くて丸い石のついた、綺麗な鍵。一つだけだが、確かな心当たりがあった。
「ちょっと待ってて」
階段を駆け上がり、二階のわたしの部屋に。机の横に掛けているカバンに、ストラップのように鍵がついている。
きっと、探し物はこれだ。
「満月! みつけたよ、鍵!」
ぴこっ! と満月のうさみみが持ち上がったと思えば、ぱたぱたと動き出した。
「それだよ和泉! どこにあったの?」
「わたしのカバン。前に拾って、いつでも持ち主がみつけられるようにつけてたの。それに、すごく綺麗だったから……」
実を言うと、気に入っていた。
でも、わたしが探していた返すべき鍵の持ち主は満月だった。ならば、答えは一つだ。
「返すね、満月」
「ありがとう」
大切なものを受け取って、満月はお礼を言ってくれた。
鍵一つ分の重さが、わたしから彼に移る。
「また、会える?」
「うん、また来るよ。だから、待ってて」
「約束だからね?」
子供のように、わたしは念を押す。
だって、離れている間は話は当然連絡も取れない相手なのだ。
「約束するよ」
「……うん」
月の綺麗な夜、わたしは外に出て遠い空を見上げる。またうさぎが落ちてくるのなんかを待つために。