うさぎの落とし物
休日の朝は、ゆっくり遅く起きるに限る。しかも、親には起こされない。早起きする必要のないこういう日が、学生には大事なのだ。
そんなわけで毛布の中を満喫している時、目の前に見るからにふかふかしたうさぎ耳があったらどうするか? もちろん、握る。
きゅ。
「何~? 耳握らないで……」
わざわざ力を入れないで握ってあげてるのに。
みー。
「引っ張らないで~」
文句の多い……。ってあれ? なんでわたしの布団の中にうさみみがあるの?
そういえば昨日、うさぎを助けてそれで……。
「わぁっ!?」
「わ……っ? どうしたの和泉、急に大声出して」
至近距離で、きょとんとする満月。
近い。その距離、およそ二十cm。
「い、いつのまに、わたしの布団に……?」
いや違う。ここはわたしの布団じゃない。
「……? 夜中に、和泉の方から僕にくっついてきたんだよ? 昨日夜は寒かったから、あったかい方に来ちゃったんだね」
確かにうさぎをはじめとした小動物は暖かい。しかし、彼はうさみみが付いているとはいえ、同年代(に見える)だ。
「ごめん。……そうだ。朝ご飯にしよ? ね?」
「う、うん」
なんか、若干押し切ってしまったような気がする(いや、確実に押し切った)。
*
「和泉和泉、これ何?」
「目玉焼き。食パンにのせて食べて」
満月は、家に来るまであまりパンを食べたことがないらしい。他にも、ちょっとした料理を珍しがっていた。
「月みたいな形だね」
言われてみればそうかもしれない。新発見だ。ただの目玉焼きなのに。
「そういえば満月、帰れるの?」
遊びに来た友人に尋ねるような気安さで、わたしはその質問を口にした。
「鍵がいるんだけど、この前落としちゃったんだ。めったに使わないから、そのまま放っておいちゃって……」
「どこで落としたの?」
「穴。だから、この辺りのどこかにあるはずなんだけど……」
みるみるうさぎ耳はくたーんと元気をなくす。それだけが理由ではないが、わたしは何かできないかと考えた。
「じゃあ、わたしも探すの手伝うよ!」
ほんと!? と、勢いよく立ち上がりかけた満月だったが、足を怪我しているのだ。がくんと体勢を崩してこけた。
「……もちろん、怪我が治ってからね」
鍵探しは、明日からだ。