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秋の夜に落ちてきたうさぎ

初投稿なので、お目汚しになるかもしれませんが、楽しんでいただければ幸いです。

 なんとなく、月を楽しむのなら秋かな。と思う。特に理由はないが、秋の月が綺麗な夜は外に出て、月を見て過ごすことが多いからかもしれない。

 風流なんてよくわからないが、月ともみじの組み合わせは、美しいと思える。


 その日もわたしは、そんな風にして満月を見上げていた。


「ぅわっ!?」

「わぁ!?」


 突然、すぐ近くの木がガサッと大きな音をたてると同時に、誰かの声が響いた。驚いてわたしも声をあげてしまった。


 続いて、どさっと何か重いものが落ちる音。


「い……たた」

「……大丈夫?」


 夜の暗闇に加え、この公園は木が茂っていて街灯の下以外はとても暗いため、その人の姿までは見えない。だが声からして男の子、それも、わたしと同じ高校生くらいだろう。


「うー……大丈夫じゃない……」


 声を頼りに、わたしはその人がいるとおぼしき所へ向かう。たぶん、こっちから聞こえたような……。それに、木の下あたりにいるはずだ。


 それほど歩かないうちに、人影をみつけた。


「さっきの、あなた?」

「うん。僕」


 まず、何をすればいいのだろう。来たはいいけど、その次は?


「どこか痛い? 歩ける? あっちにベンチがあるんだけど……」

「肩、貸してくれたら歩けると思う」


 言われるまま、わたしは彼を支えながらベンチへ連れていく。今いるこの公園は、電灯が少ないため、こんなに近くでも彼はよく見えない。


「ありがとう。君のおかげで助かったよ」

「ううん、どういたしまし……てっ!?」


 わたしは思わず、地面に座り込んでしまった。そんなわたしを不思議そうに見る彼の頭の上で、先端だけが黒い白のうさぎ耳が揺れていた。


「え。な……に? うさぎ……?」

「ん? そうだよ」


 彼が首を傾げると、耳も一緒にくてんとなった。そして、ぴょこんと元の位置に戻る。


「驚かせちゃった? ごめんね」

「あ……大丈夫だと、思う」


 ぺたんと申し訳なさそうに半分に折れる耳は、どう見ても本物だ。コスプレなどではない。


「あなた、これからどうするの?」


 落ち着くと、そんなことが気になってきた。


「そうだ。どうしよう……」


 耳が、ついにへたんとなる。

 それを見て、何かできることはないかとわたしは考える。


「とりあえず、どこか他の場所に……痛っ。うぅ……」


 立ち上がろうとした彼は、落ちた時に足を挫いたらしく失敗してしゃがみ込む。


 何か支えでもない限り、自力で立つことも難しそうだ。


「よかったら家に来ない? ここから近いし」


 放っておけなかったのだ。つまりは。


「……! ありがとう。君って優しいんだね」


 頭上で満月が、何かのはじまりのように輝いていた。



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