第一章 ラノベ同好会(後編)
「ごめんなさい。昴くん悪気があってしたことじゃないの」
そんな新川に「絶対あっただろ! 」と反論する俺。「だから聞いて!私たちは昴くんにこのラノベ同好会に入ってほしいの! なぜ私たちがこんなにまで言うのかというと、ライトノベルに偏見を持っているこの世の中を変えたいと思っているからなの! わかるでしょ昴くん! だいたい昼休みに起きた騒動もライトノベルに偏見を持たれていたことが発端だったわけだし」今までになく真剣に話してくる新川美空。
だが、俺もそのことに関しては少し感じていた。『なぜライトノベルだけ偏見を持たれるのか? 』という新川の意見には、俺も同意だった。だが、しかし、なぜこんなにも新川美空がラノベに偏見を持たれていることを嫌っているのかが、俺には今一つ理解できなかった。
だから俺は、新川美空に一つ質問をしてみた。
「なんでラノベに偏見を持っている奴を毛嫌いしてんだ? 」すると、物凄い顔をした新川が「なんでってあなたは気にならないの! 」と返してきた。
だから俺は、一言で「無視すればいいじゃんか」と答えた。
すると新川美空は、大きく「はぁ~」とため息をつき「あなたねぇ。無神経すぎるにもほどがあるわよ」「お前が神経質なだけだろ」と突っ込む俺。
「私は小学五年生のときに苦い経験をしているの。多分、その経験が私がこうなってしまった最大の原因だと思うの。あれは、いつものように席に座ってラノベを読んでいたときのことだったわ。クラスメイト二人がいきなり寄ってきてラノベのカラー挿絵見せてほしいと言ってきたの。だから私は、続きが気になる中クラスメイトのためだけにカラー挿絵を見せてやったの。親切だと思わない! 」
睨みつけながら言ってくる新川に「そうだな」と同情する俺。
「そのカラー挿絵見せた瞬間、勝手にクラスメイト二人が泣き出して、親切に見せてやった私が先生に怒られたのよ! おかしいと思わない! 」
俺が、小学五年生のときに見た光景と全く同じ話を聞き、ちょっと違和感を覚えながらも、同情しながら「それはドンマイだったな」と苦笑いをしながら答えた。すると、新川が「同情するぐらいなら、ラノベ同好会に入ってりなさい! 」と俺の顔を睨みつけながら、一言言った。
すると、新川と俺のやり取りを見ていた源五郎という生徒がニコニコしながら「砂川殿が、この同好会に入ってくれるとにぎやかになるでごわすなぁ」と笑顔で言った。
俺は、早く家に帰りたかったから「この話はいったん家に持ち帰ってから明日までに考えておく」と言った。