5話
気持ちを入れ替えて頑張らせて貰いますので、よろしくお願いします。
俺は、陽が昇り始めた縁側で太陽を見つめる。
結局、一睡もできず、陽が昇る前にいそいそと頬を恥ずかしそうに染めた美砂が衣服を手繰り寄せて、手早く着替えると「私はなんて、はしたない事を……」と言うと小走りで出て行った。
せめて、3時間、いや、2時間でいいから我に帰るのが早かったらと悔やまずにはいられない。
「女の子って怖い……」
目の下に隈を作る俺は、きっと見えちゃ駄目な星が見えてる人と間違われるだろうと思うと涙なしでは語れない。
すると、俺の隣に持ってきたカバンが語りかけてくる。
「昨日は、お盛んだった……30分前まで絞り取られてたから、昨日というのは語弊があるか」
そう言われた俺は、堪えてた涙をルールーと声を出し、泣き崩れる。
マジ泣きする俺を見て、さすがに悪いと思ったのかカバンはフォローしてくる。
「まあ、男はなんだかんだ言いながら夢を追いかけるところがあるから、ショックなのは分かるが、あの娘も小僧にべた惚れして暴走したんだ。それを受け止めてこその男だろ?」
そう言われると悪い気がしない俺はチョロイ。
いやぁ~と照れる俺が持ち直したのを確認したカバンが話しかけてくる。
「まあ、新婚さんで浮かれてるところ悪いんだが、気付いてなさそうだから教えておく。スパロンと言ったか? あの男がおとなしく引き下がると思ってるのか?」
そう言われた瞬間、浮かれてた気分に冷水を浴びせられる。
確かに、あの野郎があれで素直に引き下がるとは、とても思えない。
「やっぱり、何かしてくると思うか?」
「当然だろう? あの男はあの娘の体だけが目的だった。初めてじゃなくてもいいと思って、あの崩れ達を雇ってたのだからな」
言われてみれば、あの野郎はそのつもりだったと思い出す。だから、俺と美砂が初夜を迎えていようがいまいが、どちらでもいいと思っているのだろう。
考え込む俺にカバンは、今すべき事を教えてくれる。
「これは小僧だけの問題じゃない。お前とあの娘で悩む問題だ。夫婦とはそういうモノだろう?」
「そうだな、俺一人が悩んで考えてたら、只の独り善がりだ。ありがとうな、カバン」
なんとなく俺はカバンが苦笑したような気がした。
早速とばかりに美砂を捜す為に立ち上がると再び、カバンが声をかけてくる。
「娘を見つけて相談したら、なるべく早くここから立ち去ることだ」
「何故だ?」
首を傾げる俺にカバンは、「手がかかる小僧だ」とぼやき、説明してくれる。
「あのスパロンという男がどこまで辛抱強いか分からない。アレがここを襲って戦いになれば、後ろ盾のないお前は一発でお尋ね者だ。やるなら人里離れたところが色々望ましい」
そう言ってくるカバンは俺に「それに……」と繋げてくる。
「おそらく、向こうは人数をモノをいわせてくる。となると小僧の戦い方は決まってくる。人目は少ないほうがいいだろ?」
「そうだな、流れ弾で余計な被害は出さないほうがいいしな」
なるほどっ!と俺は手を打つ。
「止めたワシがいうのもなんだが、そろそろ、娘を捜しに行ってやれ。今頃、お前が追いかけて来てくれるのをずっと待ってるはず」
「えっ? そうなの、なんで?」
カバンがいう事がさっぱり分からなかった俺が聞き返すと本当に呆れたように「さっさと行けっ!」と怒られる。
俺は、訳が分からなかったが、言われるがまま、美砂を捜しに向かった。
捜し回ると庭にある池の鯉を虚ろな瞳で見つめる美砂を発見する。
余りに悲しそうな美砂の姿に尻込みする俺をカバンが「早くいけ」と急かしてくる。
ゆっくり近づいて、傍に行くと声をかける。
「あのさ、美砂、ちょっといいかな?」
俺の存在に気付き、顔を強張らせると逃げ出す美砂。
それを茫然と見つめる俺にカバンが怒鳴る。
「逃がすなっ! 掴まえて引き止めろ、男じゃろっ!」
その言葉に押されるようにして、飛び出すと美砂の手を掴んで引き止める。
泣きそうな顔を向けられ、この後どうしたらいいか分からなくなる。
「離してくださいっ! 私みたいな淫らな女など捨て置いてください……」
「えっ、えーと」
「仕方がないの。どうしたらいいか分からんようだから、今回だけは助けてやるからワシの言葉に続け」
俺は、必死に顔に出さないように耐えているが、心で「カバーン、一生着いていくでぇ――!」と叫んでいた。
『いや、離さない。俺はお前の旦那だから』
「自分の欲望を優先して旦那様を苦しめるような嫁など……」
カバンは、笑顔を浮かべて首を振って、そっと抱き締めろ、と指示してくるので、言われるがままにする。
『夫婦っていうモノはお互いを晒していくモノじゃないのだろうか? たまたま、最初がお前にとって恥ずかしいモノだったに過ぎない。それに、アレは俺への想いが止められなくて仕方がなくなんだろう?』
「も、勿論でございます。ですが、ですが……」
再び、カバンからの指示がある。きつく抱き締めて、耳元で囁くようにという細かい指示が飛び、素直に実践する。
『俺もこれから、お前に呆れられる姿を晒していくかもしれない』
「剣太郎様に私がそのように思う日など有り得ません」
俺は、嬉しくて思わず、「ありがとう」と囁く。
『俺達は、お互いを赦し、受け入れ、認め合っていこう。もう一度言うよ? 俺の嫁に来ないか?』
俺の言葉を聞いた、美砂はビクッと体を震わせると体から力を抜いて、身を俺に委ねてくれる。
「はい……お願いします」
嬉し泣きをしている美砂にキスをした後、親指の腹で涙を拭ってやる。
「さて、後はスパロンの事を警告して、すぐに家を出る準備をするように伝えてやるんだな」
俺は、カバンの言う通りに美砂に伝えると潤んだ瞳でポゥ――とした表情で何を言っても頷く美砂。
「すぐに準備して参ります」
そういうと嬉しそうに屋敷のほうへと走るように行く後ろ姿を見て、安堵の溜息を零す。
「カバン、ありがとう。お前のおかげで全部、上手くいったよ」
俺は、カバンに返し切れない借りができたと頭を掻きながら照れる。
だが、カバンの反応は芳しくなかった。
「……むぅ。そう全面的に喜ばれると心が痛むな」
カバンの言葉を聞いて、俺は固まる。
「おそらく、あの娘は一生、お前だけを愛していくようにはなるじゃろう。だがな、初夜の時ですら、あの娘にしてみれば、精一杯ブレーキを踏んでる状態じゃった。さっきので、ノーブレーキでくるぞ?」
「えっ? えっ?」
俺は認めたくない現実に直面して思考と閉ざす。
カバンは、もう知らねぇ、と思ったのか開き直った声で言ってくる。
「小僧は若い。だから、ワシから言える事はただ一つ」
俺は、感情が籠らない瞳でカバンを見つめる。
「死ぬなっ!」
その言葉と同時に俺は、カバンを地面に叩き付けた。
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