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神様のかばん  作者: バイブルさん
1章 ギルド設立編
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4話

 美砂に連れられてやってきた場所はやはり、元の世界だとは思えない場所であった。

 江戸時代かと思わせる建物があったと思えば、メルヘン童話から飛び出したような建物まで色々あり、剣太郎の常識からすると頭が痛い街並みに顔を顰めていると美砂に心配される。


「どうされましたか? ご気分でも?」

「いや、田舎者だから、人が多いところでは落ち着かないだけですよ。すぐに慣れます」


 そう言うと美砂は、「ここは自由都市ですから人だけは多いですからね」と笑うと納得したようである。


 実のところ、剣太郎から見れば、人も少ないが、田舎者と言う事にしておけば、物を知らなくても、「田舎者だし」と思って貰えるかという算段で咄嗟に吐いた嘘である。


 美砂が、「そろそろ、我が家に着きます」というので頷いて角を曲がるとある家の前に長蛇の列があるのを見て、驚いて見て、美砂に聞いてみる。


「何? この行列」

「そ、その、多分、私に求婚にこられた殿方達です……」


 俺は驚いて列に並ぶ者達を見てみると確かに若い男ばかりだった。


 そして、美砂の存在に気付いた者が騒ぎ出し、取り囲われる。


「ずっと待たされてると思っておれば、在宅ではなかったのであるな?」

「美砂殿、私の嫁にきてくれ」


 などと言葉攻めにあっていると、金髪碧眼の男が群がる男達を掻き分けてやってくる。


「君達、散りたまえ。もう君達がその女に媚びを売る理由は無くなっているのだからね?」

「何を言う。それは貴公のほうであろう。篠山家は正妻しか認めておられん。正妻が決まってるラインアンダー家のスパロン殿には縁のない話……」


 そう言ってくる男に余裕の笑みを浮かべるスパロン。


「それは古い情報だよ。その女は既に傷モノにされている。良く見たまえ、あの衣服の乱れと服の綻びなどを、彼女は山賊に弄ばれたのだよ? もう正妻なんて無理な相談さ」


 それを見た男達は、先程まで優しげに見つめていた目を汚いモノを見るような目をして唾を吐き捨てると、1人、また1人と美砂から離れていく。

 美砂はただ、唇を噛み締めて耐える。


 それを見ていた俺が叫ぶ。


「彼女は穢れてない。そうなる前に俺が助け出したんだからっ!」


 俺が必死に叫ぶが、聞く耳を持つものはなく、去っていく。


 最終的に残ったのは、当の本人、スパロンと3人の男だけであった。下手したら100名は居たように見えた者達があっさり掌を返したのを剣太郎は唖然として見ているとスパロンは笑い出す。


「君が真実を言ってようがなかろうが、もしかしたら? と思うだけで、彼ら達のような者は、あっさり手を引くのさ。まして、目の前にそうかもと思える材料があればね」


 殴りかかろうとする俺を美砂が止めてくる。


「剣太郎様、有難うございます。ですが、良いのです。まずは我が家へお越しください」


 俺は美砂に引きずられるようにして、美砂の家へと向かうが、目端に涙を浮かべる美砂に言うべき言葉が思い付かない自分自身に腹を立てながら、おとなしく着いて行った。



 家に到着すると使用人が先程の話を聞いていたようで、美砂の家族には知られていた。


 なので、帰ると同時に美砂は詰め寄られる。


 散切り頭の男が父親のようで、どうやら美砂は母親の血が濃かったようで、母親は美人であったが、今は憂いが隠せない表情をしており、陰りが見える。


「穢されたとは本当なのか、美砂!」

「貴方、真実がどちらといえ、聞き方は考えてください」


 しかしだな、と奥さんに文句を言っているところに美砂が答える。


「父上、そのような事はないのですが、証明する術がございません……」

「それで先程より気になっておったのだが、隣の男は誰だ?」


 美砂が、「私を助けてくれた方です」と言ってくる。


「そうか、それは有難う。だが、今は立て込んでおる。礼は今度にしてくれ」


 遠回しに出直せと言われ、美砂が文句を付けようとするが、父親に遮られる。


「もうお前が傷モノと騒がれ始めておる。時間が経てば、妾すら危なくなるから、すぐにでもセリを始める」

「つまり、セリの筆頭がラインアンダーと言う事になるんだな?」


 そう俺が聞くと、お前には関係ないと怒鳴りたかったようであるが、俺が助けたと思い出したようで苦虫を噛み締めた顔をした後、


「おそらく、そうなるだろうな」


 そこで、俺はある事を確認する事にした。


「セリに参加するのは財力さえあればいいのか?」




 俺は客室に案内されて、周りに人がいない事を確認した後、カバンに話かける。


「なぁ、カバン。できるか?」

「思いきった事をやろうとしてるのは分かってるのか? 小僧はまだ、この世界の事を分かってないのだろ?」


 そう言われて、反論の余地はない。だが、俺は考えを改める気はなかった。


「もう一度聞く。できるか?」

「かっかか、言うだけ無駄だったか。舐めるなよ、ワシは『神様のカバン』だぞ? 造作もないさ」


 そうか、と笑みを俺は浮かべて、セリが始まる夜まで精神統一をして、色々覚悟をした。



 そして、セリが始まる夜、大広間に呼ばれた俺は、辺りを見渡すと花嫁衣装を着せられた美砂を見て、商品を梱包されたように見えて、悲しみに目を伏せる。


 集まった者は、俺を含めて4人、あの時、残った3人から1人脱落者が出たようである。


 それを不満そうに見つめる美砂の父親が、声をかける。


「では、娘、美砂の引き取り相手を決める、セリを始める。皆様方の心意気をお見せください」


 中央にある大きなテーブルに置いていくシステムのようである。


 最初に俺の左の男から金塊を1個置いていく、次の男が2個。そして、ラインアンダーが10個置くのを見た2人は首を振ると出ていく。


 美砂の父親は顔を顰める。


 俺は何の気負いもない顔をすると金塊を11個置く。それを見たラインアンダーは、「ほう、意外と見た目に反して頑張るな」と余裕ぶって、更に10個上乗せしてくる。


 どうだ、とばかりにドヤ顔するラインアンダーに笑顔を向けて同じように10個載せる。ラインアンダーは頬をピクリと引き攣らせる。


「何故、そんな小さなカバンから金塊がごろごろ出てくるんだ?」

「教えて貰えると思ってるのか? その疑問は最初の金塊を出した時に突っ込めよ、馬鹿野郎」


 顔を紅潮させるラインアンダーは再び、追加してくるので、俺は同じだけ追加する。


 お互い金塊を出し合って、各自100を超えようとしている。


 それを見ていた美砂の父親は予想外の展開にホクホク顔に変わる。


 再び、出すように付き人に告げようとするが、付き人に「これ以上使われると正妻の家のほうに漏れる情報を抑えられません」と忠言してくる。


「大丈夫だっ、後、30ぐらいなら……」


 そう言ってくるラインアンダーの目の前に金塊を30積んで見せる。


「まだやるかい?」


 笑みをラインアンダーに叩きつけてやる。


 ラインアンダーは、歯軋りをすると踵を返して、家を後にする。


 俺は美砂の父親に振り返る。


「問題はあるか?」

「ない。娘をよろしく頼む」


 ホクホク顔した父親に軽く嫌悪を感じるが、もう会うつもりはないので気にしない事にする。


 俺は茫然とする美砂を連れて、元いた部屋へと戻った。



 部屋へと戻ると、美砂が辛そうに言ってくる。


「私を助ける為に散財させて申し訳ありません……」

「気にしないでくれ、俺がしたいと思った事をしただけだから」


 実際に懐を痛めた訳でもないし、本当に持ってたとしても同じ事をしたと俺は確信している。


「でも、もういいのです。傷モノの女を嫁に貰ったと後ろ指を差される生き方を背負わないでも良いのです。私を捨てて、ここから去っても……」


 涙を流す美砂も綺麗だったが、泣かれるのは辛い俺は、喋り続ける美砂の唇を唇で塞ぐ。

 目を白黒させる美砂に俺は微笑む。


「美砂、俺っちのとこに嫁にこねぇーか?」


 カッコ良く決めたかったが、照れ笑いが漏れてしまい、決まらない俺をジッと見つめる美砂は、ホロホロと嬉しそうに涙を零す。


 そして、正座をした美砂が三つ指を着く。


「不束な女ですがよろしくお願いします」


 俺は、そんな美砂を抱き締めて、もう一度キスをすると敷かれていた布団にそっと押し倒す。


 結婚衣装は脱がしにくくて、美砂に手伝って貰うという情けない場面もあったが無事に脱がし、サラシを取った時に現れたメロンな美乳に目を奪われる。


「こんな綺麗な物をを抑えつけるのは良くないな」

「えっと、有難うございます。旦那様がそう仰るなら補正するだけに留めます」


 俺はそれがいい、と頷くと男の役目を全うするために全身全霊を込めて頑張る事にした。



 それから2時間ほど経っただろうか? 俺は初夜を全うした。きっとできたと俺は思う。俺主観ではあるが満足もして貰えたと感無量を味わっていた。


 すると、隣でムクリと起き上がる美砂の存在に気付く。


 そちらに目を向けると、目をぎらつかせ、舌舐めずりをしながら雌豹のポーズをしてにじり寄る美砂がいた。


「美砂? えっと、美砂さん? どうして、そんな目をしてにじり寄ってくるのかな? ねぇ、なんとか言ってくれない?」



 そして、夜の帳に少年のか細い悲鳴が響き渡った。

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