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神様のかばん  作者: バイブルさん
2章 駆け出しギルドマスター編
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43話

 ダダンさんの商館を出てアウトローギルドへと帰る道すがらカバンに待ち切れないとばかりに質問される。


「なっ、なっ! 説明してくれぇ。どうせ、ワシが資金提供するんじゃろ? 投資家にはちゃんと説明する義務があるはずじゃぁ!!」

「ちゃんと説明するって! もう、この欲しがりサンめっ!」


 俺も思い付きにしては面白い事を考えたと嬉しかったのでカバンをツンツンと突いて戯れる。


 あはは、と笑い合うが冷静なると一人でカバンとイチャつくような俺は変人であった。



 げふん、げふん



 若干顔を赤くしながらもワザとらしい咳払いをしてから小声で話し始める。


「とりあえず、俺の世界での物を売るのは石鹸あたりからでいいと思う」

「まあ、王道じゃな。港町じゃから海藻も獲り放題だしのぉ」


 この世界には石鹸はまだなかった。木の灰を水で溶かして浮いた灰汁を利用して石鹸の代わりにされていた。


 ちなみに、家のギルドの子達はカバンから出したボディソープなどを利用している。

 なので、より綺麗になるだけでなく良い香りがするので男共は骨抜きでお願いされたら大抵の事は喜んで了承する馬鹿な集団が結構いたりする。


 数少ない女アウトローはギルドメンバーだけに支給されていると知って奴隷志願してきた子もいて、今も少し問題になっている。



 これをすれば、そういう子達の暴走の歯止めにもなるしね!


 えっ? 違うよ? これ以上面倒を見るのが増えて嫁の行き先がなかった場合引き取らないといけなくなったら嫌だ、なんて思ってないから?


 嘘吐きましたぁ!!!


 既に10人ぐらいいるのにこれ以上、爆弾を抱えたくないであります!!



 声もなく突然泣きだした俺を通りの人達は、うわぁ、という感じの顔をして距離を取り出す。


 カバンは訳知り顔? で俺を慰めるように言ってくる。


「なんか分からんが、傷口抉ってスマン……」

「ええんよ、カバンが悪いんやないんやでぇ?」


 何故か関西弁で答える俺は袖で涙を拭うと話の続きを始める。


「まあ、気を取り直して、最初から説明するな?」


 俺はカバンに、土地は楽市楽座の城下町をイメージした感じで申請さえすれば好きに露店を構えて良いというシステムにする事を伝える。


「しかしのぉ、王都の外で露店をしていいですよ? と言って誰がするんじゃ? 後、石鹸をどうやって広めるのも問題じゃのぅ」


 まだ説明し始めなのに欲しがりサンのカバンが我慢できずに聞いてくる。


 話の腰を折るカバンに苦笑いを浮かべる。だが、一番の協力者のカバンの理解度が低いと困る俺はアウトローギルドに着く前に話をしていおく必要性を感じたので露店で飲み物を買ってメインストリートの隅の壁に凭れる。



 飲み物を飲むようにして話せば、独り言を言ってるのが分からないだろう? 俺ってかしこーい!


 なんて、馬鹿やってる場合じゃない!



「色々、考えてるけど、土地を買ったら人を入れる前にメインストリートなどをしっかり作ろうと思ってる。そうなると工事にやってくる人に食事や酒を振る舞う人が出てくる。勿論、荷物を搬入する人もな」


 俺の言葉にふむふむ、と相槌を打つカバンに話を続ける。


「工事の人は王都から近くの場所を開拓するのだから通う人が大半だ。そこで新鮮な海鮮物などをセイドンの適正価格・・・・で並べられてるのを見ればどうするだろう? 勿論、移動費は加算されるが獲れたて新鮮な物は王都じゃ水増しで高くされてる商品を?」

「まあ、家族や自分で食べる用に買って帰るじゃろうが、商人じゃないからそんなに大量には買わんじゃろ?」

「でも宣伝にはなると思わないか?」


 俺はカバンに目を向けてコップで隠れる口許は笑みを浮かべるのに気付いていると思われるカバンは、むぅ、と唸る。


 例えば、家族に買って帰った場合、ご近所様の目に入る事になるだろう。それを見た近隣の主婦が王都を出たすぐの所にある楽市楽座に行けば手に入ると分かれば行きたいと思うのではないだろうか?


「そして、やってきた主婦層に質は悪いが汚れを落とすだけなら充分の安い石鹸を見せれば更に噂が勝手に拡散する」

「なるほどのぉ、それは分かるがいくら街から近いといっても危険がない訳じゃない。尻込みする主婦もいるじゃろ?」


 カバンが言うように主婦が腕っ節が強いとは正直思えない。



 ジブリ作品のような、おっかちゃんみたいのが溢れていればいらない心配なんだけどなぁ~



 と馬鹿な事を考えて口許を綻ばせてるとカバンに「どうするんじゃ?」と問われる。


「そうだな、アウトローの仕事を増やせそうだよな? 1時間に1回アウトローが付いて来てくれる護衛依頼的な? 利用数が増えれば馬車にしてもいいし、これで信用を得れればアウトローと一般の人の間に信頼関係が生まれるかもしれないし」

「短期で見れば、それでもいいじゃろうが、長期的に見ればそれでは金がかかるだけでジリ貧じゃないかの?」


 カバンがさすがに無制限に金を出す気はないとお小言を寄こしてくるが俺は手を振って「そんなつもりはない」と否定する。


 空を見つめながらカバンに言う。


「そう時間がかからずに王都と俺達が作る楽市楽座を繋ぐ街道を作る事になる」

「じゃが、商人連合じゃったか? あそこが利権を守る為に貴族共を利用してでも潰してくるじゃろ?」

「するだろうな、だが、その時には商人連合の力は削がれた後だ」


 俺が自信に溢れる顔をしているのを見たカバンがフタをパタパタさせる。まるで腕を組んで指で二の腕を突いているように見えるのが面白い。


 しばらくそうしてるのを見ているとカバンに「どういうことじゃ?」と聞かれ、俺は意地の悪い笑みを浮かべて詳細を語るとカバンに呆れられた声で言われる。


「坊主、お前、だいぶ黒くなったのぉ……」

「こっちの世界に来て生き残る為に必死に頭を使っていたら、こういう事を考える事もできるようになってきたよ……」


 俺の頬に一滴の涙が流れる。


 なにせ、その理由の9割が自分の嫁に対抗する為に使ったという事実を認めたくなかったのであった。



 有り得ないからね? 異世界に来て、モンスターや化け物に心配するより、夜、ベッドに入ってくる嫁に生命の危機を感じさせられるって?


 おかしくないか! ハーレムってウフフじゃないのかよ!


 出てこいや! 責任者!!



 一口、飲み物を飲んで溜息を吐いて落ち着きを取り戻す。


「確かに黒いが結構上手い手だとは思うぞ?」

「まあね、上手くいくとは思うんだけど、でもなぁ……」


 カバンの言葉に頷く俺が言葉を濁す。


 濁す俺にさっさと言えとばかりにカバンを揺らす。


「それを成す為に楽市楽座にアウトローギルドがあるのが望ましい、せめて、出張所とか代理店でいいから作れないと頓挫しかねない訳だが……」

「そういう事か……確かにセイドンのアウトローギルドも廻り始めはしたが、ここから人員を減らす訳にはいかんのぉ?」



 そうなんだよな……少人数、1人もしくは2人となるとどうしても優秀な者がいかないといけないんだよな~



 そうなると美砂、チャロン、クウコ、アオが候補に挙がるが今、この4人が削れるとアウトローギルドが立ち行かなくなる恐れが出てくる。


 かといって、それ以外の者となると人数が最低、倍欲しくなるから無理な話であった。


 ちなみにクリカとミケは戦力外通知である。


 カバンとウーンウーンと悩んでると横合いから声をかけられる。


「それだったらミゼット様を教育されたら良いですよ。あの方は頭の中身は残念ですが頭は良い方なので優秀ですよ? ああ、おまけに私も一緒に行きましょう」


 突然、声をかけられた俺は飛び退くように離れると相変わらずの無表情な男装の麗人セレナがいた。


 驚き過ぎてドキドキする胸を押さえてながら聞く。


「どこからわいた?」

「わいた、とは失礼なこれでも女性ですよ? そこの果物屋で果物を見てるフリをしてました」


 まったく傷ついた様子も見せずに果物が売られてる場所を指差す。



 今、コイツ、見てるフリって言ったよな? そこでバッタリというオチじゃないぽい……



「えっと、どこから聞いてた?」

「いえいえ、途中からですよ? そこのカバンとイチャイチャトークをしながらツンツンしてる辺りでしょうか?」



 めっさ、始めからですや――ん!!



 キレ良い突っ込みを手の甲で胸を叩くとゴンという音が響き、俺は自分の手を押さえて屈む。



 そういや、鎧着てるの忘れてやってもーた!



 屈む俺を見下ろし、口の端を上げて「何をしてるのですか?」と小馬鹿にしてくるセレナ。


 俺が痛がってるとカバンが口を開く。


「これで確定かの。お主、ワシの声が聞こえておるな?」

「えっ? ああ、聞こえてますよ?」

「お主は何者じゃ?」


 そう聞き返すカバンの言葉を聞いて、手の甲の痛みが吹っ飛ぶ。


 だが、セレナは力みのない表情で頬を掻きながらあっけらかんと言い放つ。


「巫女らしいですよ? 聞いた話だと?」

「聞いた? 誰に聞いたんだよ!」


 立ち上がった俺がセレナに質問を投げかける。


「髭生やしたジジイが突然現れて「ワシに仕える巫女じゃ」と言われたから、何時からと聞いたら、「さっきじゃ」と1カ月程前に言われまして」



 なんだ、その適当すぎる話はセレナが嘘を吐いていると思う俺の耳にカバンの苦悩が溢れる声が届く。


「その適当さ、間違いない、あの馬鹿、神じゃな」

「えっ? マジで?」


 カバンが言うには本来のカバンの持ち主の神様らしい。


 俺はセレナを見つめるがどこにも神秘性を見出せなくて巫女のイメージが瓦礫が崩れるように崩壊していく。


「で、神はなんと言ったのじゃ?」

「喋るカバンに出会ったら協力してやってくれ、と?」



 カバンの元の持ち主、なんだかんだで心配してくれてるんだな……



「どうせ、くだらん理由で言ってきたんだろう?」

「嫁に殺されそうになるガキと右往左往するカバンを見てるのが楽しいから、と言ってたかな?」


 低く唸るような声で「あの……クソジジイがぁぁ!!!」とカバンが唸る。


 しばらく正気に戻らないと思われるカバンを放置してセレナに聞く。


「で、セレナは何で手伝う事に? 何も得はないでしょ?」

「まあね、だから、手伝ったら何かあるのか、と聞いたら「そこそこ楽しいのじゃ」と言われて私は即答でオーケーオーケーと答えました」



 うわっ、神様も軽いがセレナさんもカル!



 親指と人差し指で○を作り、ウンウンと頷くセレナに聞く。


「うーん確かにセレナは大丈夫そうだけど、ミゼットはどうなんだろう? 良い所のお嬢様だったと思うんだけど、貴族、もしかしたら王族を相手に、というオチもあるんだけど?」


 信用しても大丈夫? とはっきりと聞くとあっさりと頷いてくる。


「大丈夫です。正直、王族が絡んでるとは思いませんが、絡んでても問題泣く大丈夫です。ミゼット様は王族から放逐された身ですから立てる義理ありませんからね?」



 えっ? ミゼットが王族? この国、終わってない?



 俺とカバンは言葉を失ってジッと無表情のセレナを見つめ続けた。

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