42話
俺とカバンがダダンの商館にやってきて、受付から案内に付けられた元、強面の男に連れられて奥へと進みながら、商館の様子を見ていた。
初めて来た時も人が多いとは思ったが、今は人口過密度を調べたいような調べたくないような盛況ぶりで辺りには喧騒が溢れ返っていた。
「盛況だね。ダダンさんの仕事が上手く回り始めていると、こないだロレンスから聞いてたけど見るのと聞くのでは大違いだな」
「はい、おかげさまで。ですが、それが理由で今、少し大変な事になっており、ケンタロウ様と面会をダダン様が求められておられました……」
怖い顔なのに落ち込んだ顔はホラーな感じで恐ろしい。
しかし、おかしいな?
こないだ、ロレンスが来た時に聞いた時は左団扇がうなってるとか言ってたような気がするが?
言葉の使い方は違うが言いたい意味は伝わると思う。笑いが止まらない状態だと俺は思っていた。
「何かあったの? 俺が聞いてた話だと、かなり上手くいってると聞いてたけど?」
「ええ、確かに上手くいってました。ですが……続きはダダン様からお聞きください」
元、強面が話してる間にダダンの部屋に着いたので、主人であるダダンに続きを託し、ドアをノックして返事の後にドアを開いて俺を招いてくれる。
中に入ると資料が山積みになったディスクの向こうで葉巻を咥えたダダンが髪のない頭を掻いていた。
入ってきたのが俺と分かると表情を明るくして飛び出そうとするが、俺が煙草の煙が嫌いと言ってたのを思い出してか慌てて戻り、灰皿で火を消して捨てる。
「おお、会いたかった。昨日の朝に出向いたら、どこかに出かけてたと聞いて思わず舌打ちしてしまったぞ?」
眼帯のオヤジに目を輝かされて「会いたかった」って言われて鳥肌が立った事実は闇に葬る。
決して、怖かったからではない。ただ、気持ち悪かっただけだ。
「ごめん、ごめん。正直、上手く回ってる商売をする事に必死でダダンさんが俺に会いに来るとは思ってもなかったよ。でも……会いに来た。何があったの?」
苦笑いをする俺だったが、ダダンの喜びようを見て、寂しかったから会いたかったなんて冗談はなく、真剣に深刻な問題が発生しようとしてるのが分かった。
ダダンは見た目はマ○ィアのボスだが、生粋の商人である。そんなダダンが今あるアドバンテージが有効な内に遊んでる訳がない。
俺がセイドンのセガールサタンが強権を発動させてきたのか、と問うが一瞬の迷いは見せたが首を横に振る。
「いや、出所はセガールサタンかもしれんが、ワシが問題にしてるのはそこじゃない」
セガールサタンであれば、早急に俺に会いたいとは言わずに自力で対応したと重い溜息吐く。
では、なんだろう? と思う俺がダダンに先を促す。
「王都の商人連合、それに抱きこまれた王都の鍛冶ギルドがワシの所の商品には関税をかけると脅してきてる」
なんだって!
関税というぐらいだから貴族も一枚噛んでいるのは間違いない。最悪、国が関与している可能性も捨てられない。
アウトローギルドの恩恵でセイドンのアウトローは勿論、それを直接、間接的にもアウトローとアウトローギルドの両方の力を振るえる商人が次々、台頭してきて焦ってきてるのだろう。
しかし、どうしたら……
暗い顔をするダダンは疲れ目、おそらく碌に寝てないと思われ、目の下にクマを作っていた。
「坊主、分かっておるだろうが、力技でいく時じゃないぞ? そんな事したらワシ等が完全な悪者じゃ。今の段階で目には目をする時ではない」
分かってるっ!
そんな事言われなくても、気付けないほど馬鹿じゃない!
憤るような気持ちをカバンを握るようにして返事をするが、俺もカバンが分かって無くてそうしてるのではなく、思考が簡単になり力づくで解決するようにならないように諭してくれていると理解している。
何だかんだ言いながら、カバンはいつも俺の心配をしてくれているのは良く理解していた。
俺も必死に考えを巡らせる。
利権を守る商人達のせいで循環しない経済の打破、それに対する関税への対策。
やっとアウトローギルドが良い流れを作り始めたのに、収束しかねない……
くそぉ、どうしたらいい? こんな事なら美砂達を連れて……
違うだろ!? 俺は旦那であり、そしてギルドマスターだ! 1人では何もできないではいけない。
歯を食い縛る俺の心情を察したカバンが優しく語りかける。
「坊主、ワシが付いて居る。お前がお前である限り、ワシはいつでもお前の味方じゃ!」
そんなカバンの言葉を聞いた俺は食い縛ってた歯の力を弱める。
ありがとう、カバン。頭に登りそうになってた血が収まったよ。
優しくカバンを撫でるように叩くと今度は頭に血を巡らせる。
落ち着け、剣太郎。
自分の中にアイディアがないのなら、借りものでもいい、何か捻り出せ!
「のぅ、坊主。違う世界に飛ばされた奴等が坊主の世界の商品を売る事で大儲けしたりする話があるが、それを真似たらどうじゃ?」
「それは悪い話じゃないけど、関税をかけられたら損をするのはセイドン、特にダダンさんの所に所属する商人だ」
俺がブツブツ言ってると思ってるダダンは邪魔したらいかんとは思っているようだが、若干心配げに見つめる。
商人連合、関税、このままだと敵対関係になりかねない貴族。
何か、ないのか!
そう考えてると俺は思わずといった風に言葉にする。
「織田信長……そうだ、信長の真似をすればいい! 楽市楽座を城主ではないけど、俺達がやればいいんだ!」
「ほう? また面白い事を考え始めたのぉ」
俺の言葉を聞いたカバンは楽しそうに笑い始める。
ダダンも俺が何やら面白い事を考え付いたと気付き、表情を明るくすると身を乗り出してくる。
「その楽市楽座とはなんだ?」
「分かり易く言うと関税もかからず、商人連合とは縁を持たない場所で商売すると言う事だ」
そう俺が言うがまだ分かってないダダンに俺は続ける。
「なぁ、王都から近ければ近い程いいんだが、広大な土地を買う手段はあるか?」
「ん? まあ、買うのは難しくないし、今は貴族も戦争がないから懐が寂しいらしく大丈夫だと思うが?」
自分でそう答えていると段々、ダダンの表情に理解の色が灯り始めるがすぐ渋い表情になる。
「確かに俺達がそこで商品を売って、王都の商人が運ぶのなら関税はかからんだろうが、ワシ等の商品は鮮度が良いだけで商人連合に目を付けられてまで取引しようという商人は多くないぞ?」
「そうだな、だけど、俺達からしか手に入らない商品があるとしたら? それがとても魅力的なら?」
「なるほどのぉ、そこで先程のワシのアイディアが生きるという事じゃな?」
俺の言葉を吟味するダダンに聞こえないように「それともう1つ考えてる」と楽しげにカバンに伝える。
考えが纏まったらしいダダンは自信を取り戻したように笑い、俺を見つめてくる。
「ワシは土地を押さえたらいいんだな?」
「ああ、できる限り大きい方がいい。欲張るならセイドン並でもいいぐらいだ」
そう言う俺は、土地の代金は出す事と運用方法はこちらに一任するように伝える。
肩を竦めるダダンはオッサンの流し目で俺に言ってくる。
「一等地は空けておいてくれるんだろうな?」
「アンタ次第さ?」
笑みを浮かべる俺に握手を求めてくるダダン。
俺はダダンの手を握り返すと後は頼むと伝える。
「目玉商品についての目算は立ってるし、アウトローギルドとしても新しい仕事の供給になる。今ある仕事では出来なかった女子供、腕っ節に自信のない男にもできる仕事を提供できる」
「ふっ、ワシはついでか。ついででも構わん、この状況を打破する為に力を貸してくれ」
任せておけ、と笑みを浮かべる俺は、ワクワクしているカバンを連れて早速、アウトローギルドに戻る事にした。
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