41話
シーツを引き寄せ、乱暴された少女のように涙で枕を濡らす俺から受け取った神々のタネを見つめる美砂達は堂々と裸身を晒しながら頷いていた。
「なるほど、旦那様はこのタネを取る為にその狭間に行かれる途中でミゼットさん達に遭遇して、何故か懐かれたと?」
「こんなタネで体力が向上するのか疑わしいのだ。上がるならすぐに何故食べないのだ」
チャロンが言う事はもっともだが、カバンに徐々に食べるように注意されていた為である。
急激な変化をさせるとヘタすると人間を辞めてしまう恐れがあるらしい。
その説明は既にしてあるが、チャロンは未だに疑わしいようだ。
タネを一緒に見つめるクリカが首を傾げる。
「あれれ? どこかで見た事があるのぉ?」
「まさか、このエルフが挟まっていたという狭間と言うのは……」
戦慄を感じているのか声が震えるカバン。
確かに、クリカが掛かっていた時間の流れの話と合致はするが、そんな偶然があるのだろうか?
未だにシクシクと泣く俺に僅かなりの罪悪感を感じたのか、チャロンが言ってくる。
「信用しなかった私達が悪い所もあったがいつまで泣いてるのだ」
「『パパイヤ~ン』して全部、話したのになんで2時間も解放されなかった!?」
そう俺の涙の主張を受けた嫁3人は綺麗に顔を背ける。
「あれ? 言ってた? 済まないのだ、聞き逃してたのだ」
「申し訳ありません、真偽を究明する事に意識を割いてた為に視野教唆になってたようで……」
「美砂とお姉ちゃんに「ケンちゃんがパパイヤ~ンしたよ?」って言ったら、今、構う事じゃないのだ、とお姉ちゃんが言って、美砂が、勢いって大事だと思います、と言って無視しよ……」
息の合った美砂とチャロンがクリカの口を封じると完璧の笑顔を俺に向けてくる。
「そんな事実はありませんよ、旦那様?」
チャロンもウンウンと頷いてみせる。
どうしてだろう? 笑ってるはずなのに笑ってるように見えないのは……
静かに枕に突っ伏す俺は呟く。
「もう、お婿にいけない……!」
「いや、嫁3人いて今更、何をいっとる?」
俺の呟きを拾ったカバンに突っ込まれる。
ちゃうねん、言葉の意味や真実より、弾ける想いってあるやん?
チロッと責める視線を美砂達に向けるが暖簾に腕押しであった。
色々諦めた俺が寝るつもりで「もういいよ……」とシーツを頭まで被ろうとした時、引っかかりを感じる。
ん? と声を洩らし、更に引っ張るが逆に引っ張り返されて胸元まで露出する。
シーツの先を見つめると美砂が掴んでいた。
あれ? なんで美砂が寝るのを邪魔するんだ? 確かにちょっと早い時間ではあるが?
「えっと、美砂さん、どうしてシーツを引っ張るの?」
「それはですね、先程までのは尋問だったりしましたが、ここからは夫婦の営みが開始されるからです」
先程から完璧な笑顔を向ける美砂を俺は「マジか!」と驚愕の表情を浮かべる。
チャロンとクリカに目を向けるとにじり寄ってくる2人。
確かに言われてみれば、美砂達が2時間で解放したというのもおかしな話であった。
そう、美砂達の基準で明らかに少な過ぎる時間であった。
更に引っ張られるシーツを死守するように胸元キープしながらにじり寄ってくる3人を見つめる。
目尻に涙を溜める俺は短く息を吸う。
『パパイヤ~~ン』
本日2度目の叫びが響き渡った。
▼
次の火の朝の開店前のギルドホールでは朝礼が行われていた。
木刀を杖のようにして震える足を支える俺をギルド職員である奴隷の子達は俺から目を逸らす。
いや、例外がいた。
アオは鼻で俺を笑うように見つめ、ミケは事情を理解してないのか「足がプルプルしてるのにゃ」と呑気に笑っていた。
その鼻で笑っているアオが俺に報告をしてくる。
「マスター個人に言伝を預かってます」
「誰から?」
責めるように半眼で見つめるが、見捨てた事実など屁とも思ってないようで普通に答えられる。
「ランク1のダダン様です。できるだけ急ぎ、マスターと直接会いたいそうです」
「ダダンさんか、無駄に顔が怖いから会いたくないけど、くだらない事で会いたいと言うような人じゃないし……会いに行ってくるよ」
「ダダン様にギルドに直接来て貰い、会議室を利用されたら?」
俺が会いに行くと言うと美砂が提案してくれるが首を横に振る。
「呼んだら来てくれるだろうけど、ギルドにいるとミゼットに襲撃をかけられて面倒臭い事になりそうだから」
そう言うと美砂達、嫁は昨日、俺から説明を受けて事情が分かり、苦笑いを浮かべる。
溜息を吐く俺は肩を竦める。
「なんで、開店前に裏口からダダンさんのところに向かうよ」
そう言うとすぐに裏口に向かう俺にみんなが「いってらっしゃいませ」と見送ってくれる。
剣太郎が出ていくのを見送った美砂達が開店する為に入口の鍵を開けてドアを開く。
すると金髪の女の子が飛び込んでくる。
「今日からお仕事を始めます。頑張りますので、ご主人様、朝のご褒美を!!」
そう叫ぶミゼットが剣太郎の姿をキョロキョロと捜すのを見つめる美砂達始め、ギルド職員一同、苦笑いを浮かべた。
「ご主人様、いえ、マスターの言う通りになりました」
クウコは、逃げるように出ていった剣太郎を思い出してか上品に口許を手で隠して笑みを浮かべた。
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ギルドの裏口からダダンさんの商館を目指す俺はカバンに話しかける。
「ダダンさんの用事って何だろ?」
「そうじゃな、いくつか思い付く理由はあるが、そろそろじゃないかの?」
何かに気付いている素振りを見せるカバンに首を傾げる俺。
俺の様子からまったく気付いてないと気付いたカバンは溜息を吐く。
「セイドンで一番の商人だった者が動く頃合いじゃとワシは思うんじゃがのぉ?」
なるほど、と相槌を打つ俺は、いずれ遭遇する事態だとは気付いていたので驚きはしないが、他の事に気を取られていて正直言うと忘れていた。
「じゃ、何か仕掛けてきたのかな?」
「さあのぉ? その辺は考えんでも、あの強面が話してくれるじゃろ」
それもそうだな、と納得した俺はカバンと共に向かったダダンさんの商館の受付で面会希望を伝え、奥に通された。
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