40話
こっちで間違いを起こしてしまいました……
カバンに言われて入った狭間を抜けるとそこには小さな部屋に繋がっていた。
その部屋には出入り口が狭間のみで見渡すほどの大きさの部屋ではなく、大きな壺が2つあるだけであった。
「ここでの時間の流れは外とは違うからノンビリしてる場合じゃないぞ。右側の壺に入ってるモノを一掴みしてワシの中に入れて、すぐに出るんじゃ?」
「すぐにか? ちょっと左の壺とか壁の材質を調べたりしたいんだけど?」
と言いながらも右側の壺に近づく俺にカバンは、「浦島太郎になりたかったら好きにするのがいい」と言われて壺に右手を突っ込んで一掴みしたタネをカバンに入れる。
「よし、すぐに出るのじゃ」
「本当にそんなに早い時間の流れなのか?」
ブツブツ言う俺を急かすカバンに適当にハイハイと答えながら狭間を通り抜けて出る。
出ても滝裏の洞窟な為、時間の流れが分からないがカバンが「大きな時間の誤差はなかったようじゃな」と言う言葉に嫌な予感に襲われる。
「なぁ、大きな、というのはないと言ってるけど、小さい誤差はあるんだよな? どれくらい?」
「そうじゃな、予定より半日経ってる程度じゃ」
歩いていた足を止めて俺はカバンを見つめる。
えっ? あそこにいたのって3分もいなかったぞ?
なのに1日半経ってる?
「マジで?」
「大マジじゃ。だから急げと言ったじゃろ?」
いやいや、ないないから!
仮に3分いたとして1日半だから、1分で720分、12時間か……
なんちゅう危険な場所に連れて行かれたのかと思うが、俺の為だったと思い出し苦虫を噛み締めたような顔をする。
「ごめん、チンタラしてたから」
「気にするな、半日程度誤差じゃ。だから3日ぐらいで帰ると言ったじゃろ」
俺が適当に対応すると読んで、日数に余裕を持ってくれる俺の相棒、カバン……
ヒシッと抱き締めると縋りついて泣く。
「ありがとう、ありがとうな! ぴったしの時間を書き置きしてきたら地獄を見せられるところだったよ!」
「なっ、なっ? ワシ、英断じゃろ?」
3日後に帰ると書くように指示してくれたカバンに敬礼!
泣く俺にカバンが言ってくる。
「多分、そろそろ夕方から夜になる時間のはずじゃ、夜が明けたらすぐに出発した方がいいじゃろ」
「そうだな、せっかく拾った命は大事にしないとな? 搾り殺されないようにタネを取りに来たのに本末転倒だ」
きっと他の人から見れば羨ましがられる死因だろうが、何度となく生死を彷徨った俺は断言する。
『楽な死に方なんてないからっ!!』
至ってマジである。
同じ苦しいなら俺は老衰希望であった。
結論、人間、死んだらアカン! である。
カバンと仲良く滝裏の洞窟を進んでいくと待ってたと思われるミゼット達に心配されたが適当に誤魔化し夜が明けたら移動すると伝え、俺達は滝裏の洞窟で一夜を過ごした。
次の日の早朝に俺達はすぐに滝裏の洞窟から出発した。
来た時に要した時間と同じぐらいでセイドンに到着する。
港に向かい、我が家、兼、アウトローギルドである入口の扉を押し開いて入ると既に営業しており、朝のピークを超えているようで受付で静かに座っていた俺の嫁である美砂とチャロンが飛び出してくる。
俺の前に来ると心配そうに両手を組む美砂が見上げてくる。
「心配しました。置き手紙1つでいなくなられて……今日、帰って来られなかったら捜しに出るところでした……」
どうやらギリギリセーフであったようである。
美砂に3日といえば3日しか待ってくれないようだ。
気の短いと思われるかもしれないが、俺が見える位置にいれば近寄ってこなくても事情さえ知っていれば何日でも黙って待っていられる美砂だ。
ただ、それをした反動は凄まじいモノがある事は考えなくても軽い体験は済ませた後の俺は決して疑わない。
もうちょっとで高名な先生を呼ぶハメになりかけたしぃ!
最初は美砂と同じように心配そうに眉を寄せていたチャロンであるが、後方にいるミゼットとセレナの存在に気付いて、最初とは違う意味で眉を寄せる。
「ところで後ろにいる女はなんだのだ?」
「もう旦那様は、一人でお外に行かれると女の子を拾ってくる病気にでも罹られましたか? キッツイ薬膳茶をお出ししましょう」
半眼のチャロンと瞳に虚無を宿す美砂の2人に見つめられた俺は魂が抜けるような感覚、いや、実際に抜けているかもしれない。
ここ数カ月で何度も体験済みで体が慣れてるかも?
そんな自分を客観的に判断して『ああ、これが蛇に睨まれたカエルか』と呑気に考えていた。
「坊主、早く言い訳せんと死ぬぞ!」
「はぅ!」
カバンの言葉で意識を覚醒させた俺は慌てて言い訳を始める。
「ち、違うって! 自分の用事をする為に向かった先で出会っただけなんだ! 聞くとアウトローギルドを利用するか悩んでたからちょっと説明して、道案内しただけだ」
頑張ってボディランゲージまでしながら一生懸命に本当だと強調して伝えるが疑わしい視線を向ける2人がミゼットに向ける。
「と、旦那様が仰ってますが?」
美砂に質問されたミゼットは頬を赤く染める。
「ご主人様の逞しい棒(木刀)でメロメロにされました」
口をパクパクさせる美砂を余所にチャロンがセレナを見つめると頷いてくる。
「概ね間違ってません」
「誤解を誘発させ過ぎだろう!!!」
そう叫ぶ俺の両手を美砂とチャロンが抑えにかかる。
暗い笑みを浮かべる美砂がミゼット達に話しかける。
「ギルド登録はあちらになります。アオ、お願いね?」
「助けてくれぇ、アオ!」
「承りました、奥様。マスター、私は長いモノに巻かれる派です」
美砂の頼み事には迷わずOKを出し、俺のはサラッと流される。
チャロンもクウコに後を任せると伝えると頷き、クウコは俺から視線を逸らす。
待って、俺はここの主人だよな? なんで、あっさり見捨てられてるの!?
この後の事が手に取るように想像できる俺は足がカタカタと震え出す。
「クリカ! 来るのだ!」
「はぁーい! お姉ちゃん!」
アウトローギルドの扉をバンと開くと飛び出してくるエルフの少女が俺の前に着地する。
「く、クリカ、俺は悪くないぞ?」
「大丈夫、クリカはケンちゃんを信じてるのぉ」
「よし、ケンタロウをいつもの所に連行なのだ」
そう言われたクリカは、元気良く「ハーイ」と返事すると俺を担ぎ上げる。
暴れて逃げようとするが絶妙のバランスで降りれないように調整されて身動きが取れない。
「信じてるんじゃなかったのかよ!」
「信じてるのぉ。だから、何でも話したくなったら『パパイヤ~ン』と叫ぶといいの」
それ信じてないやーん!!
連行される俺を目を点にして見送るミゼットと面白いものを見つけたとばかりに笑みを浮かべるセレナの姿が遠くなっていく。
3階に連れていかれて俺達のベットの上に放り投げられた俺は身を縮めて震える。
一枚、また一枚と服を脱いでいく美砂達を怯えた瞳で見つめる。
「まだ明るいぞ? お仕事に戻ろうね?」
必死にそう言うが妖艶な笑みを浮かべられるだけであった。
それぞれが美の化身かと言いたくなる裸体を晒してベットに乗ると雌豹のポーズでにじり寄ってくる。
目尻に涙を浮かべる俺は大きく息を吸った。
「パパイヤ~~~ン」
1階の階段から心配そうに上を見上げるツキノが大きな体を縮めながら静かに合掌して俺の冥福を祈ったらしい。
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