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神様のかばん  作者: バイブルさん
2章 駆け出しギルドマスター編
37/46

36話

「ケンちゃん知ってる人?」

「うん、クリカは俺と同じ回数会ってるんだけどね?」


 えっ? とマジ驚きするクリカに俺が見つめる者が膝を着いて啜り泣く。


 ついでのように、やっとお姫様抱っこから解放して貰えた。


 その啜り泣きに反応した犬が顔を舐めるのを眺めながら声をかけた。


「この辺を探索しにきた者を追い払ってたのはお前達、山賊の親分(仮)か?」

「その通りだが、その呼び方止めろっ!」


 犬に慰められて立ち直ったと思われる山賊の親分(仮)は涙ながらに叫ぶ。


「だったらいい加減、名乗れよ? あっ、そういう事か。子分に見捨てられてるから、ただの山賊、ピン山賊(仮)」

「ピン言うなっ。俺には相棒がいるからピンじゃねぇ!」


 クリカは覚えてないようだが、何か思い出しそうになってるようで悲しみで前が見えなくなっていた。


 ミケもまた涙を流しながらピン山賊(仮)にオヤツのニボシをプレゼントしていた。


 受け取ったピン山賊(仮)は、ニボシを振り翳して叩きつけるかと思われたが、何やら見えない戦いをしているようで震える拳をそのまま下ろしてくると自分の口に放り込むと涙ながら咀嚼を始める。


 言葉が通じる相手から優しくされるのが久しぶりで嬉しくて堪らないのが溢れて、「このニボシがしょっぱくて涙が止まらねぇ!」と叫ぶピン山賊(仮)を直視できない俺。


「まあ、なんというか、不憫じゃのぉ」


 カバンの声も若干震えているように聞こえる辺り、この場にいる者達に同情されまくりであった。


「なあ、アンタもいい加減、人の世界に戻ったらどうだ? 犬と1人と1匹だけで生活してるのも大変だろう?」

「ふっ、何も変わってないと思ってるようだが、それは勘違いだ!」


 俺の言葉を即否定したピン山賊(仮)は、指を口に咥えると高い音を鳴らし、辺りに響き渡らせる。


 すると近くの林の藪が揺れたと思ったら飛び出してくるモノがあった。


 飛び出してきたのは、ピン山賊(仮)の隣にいた犬とそっくりな姿をしているところから同種だと思われる。


「まさか、数が増えたと言いたいのか!」

「ちが――う!!」


 ピン山賊(仮)は、強い言葉で俺の言葉を否定すると悲しげな瞳をしながら俺から目を逸らし地面をジッと見つめる。


「相棒に彼女ができました……」


 その言葉と共に俺の涙腺が決壊した。


 クリカとミケに至ってはお互いを抱き締め合いながら声を上げて泣いていた。


 俺は、ただ黙って涙を流し、ピン山賊(仮)を見つめる。



 無理、こいつと戦うなんて俺にはできない!



「ぼ、坊主、このままコイツを野放しにしてはいかん。なんとしても連れ帰って、お友達を作ってやらねば……勿論、言葉が通じるヤツな?」



 ああ、カバン、俺も全力で同意だぜ?


 だって、ピン山賊(仮)を慰めながら、犬が「よろしくお願いします」と言うようにこちらに頭を下げてる。

 ここで引き下がる理由なんてない!


 きっと、美砂達に事情を説明したら全力で協力してくれるはず!



「なぁ、アンタ、俺と一緒にセイドンに行こう。アンタはきっと犬と友達になれるぐらいだから特殊なスキルが発現してるはずだ」


 必死に説得しようとしていたら、思わぬ、説得する材料を手に入れた俺。


「今、俺達はアウトローギルドというのを立ち上げた。そこで自分の能力が見れるカードがあるんだが……」


 そう言うとピン山賊(仮)に警戒されない距離まで近づいて俺のカードを手を伸ばして見せると、ちょっと興味は引けた。


「自分が発現させたスキルは他人にインスタントスキルとして教える事ができる。アンタのスキルはレアスキルのはずだ。みんなが、ピン山賊(仮)さん、ピン山賊(仮)さん、と声をかけて、そのスキル教えてください! と言ってきて一躍人気者だぞ?」

「に、人気者?」


 ピン山賊(仮)は、ゴクリと生唾を飲み込む様を見せると少しずつ、こちらに近寄ってくる。



 さあ、人の世で生きよう!


 悲しみの向こう側に到着した事で得た才能を無駄にしてはいけない。



 近寄ってくるピン山賊(仮)に手を差し出す。


 笑みを浮かべて手を取ろうとしたピン山賊(仮)だったが、我に返ったように手を引っ込ませる後ろに逃げる。


「危ない、騙される所だった。もう人は信じないと決めていたのに……」

「騙してないって、今、言った事は本当にある事だし、俺の予測通りなら本当にアンタは人気者だぞ?」

「クリカもお友達になってあげるのぉ!」

「ミケもにゃ!」


 俺達の必死の説得も長年付き合ってきた子分達に裏切られた傷は深かったようで、被り振ると犬に跨る。


「騙されてやらないからなっ!」


 などと叫び、マジ泣きするピン山賊(仮)は、犬に出発するように伝えると明後日の方向へと去っていく。


 残った1匹が、「また次の機会にお願いします」と言わんばかりに、クゥーンと鳴いて頭を下げるとピン山賊(仮)を追いかけて走り去っていった。


 それをクリカとミケの2人と見送った俺は決意した。





 アウトローギルドの掲示板の端に常駐依頼が張られている。



 捜索情報依頼。


 犬型モンスターを連れた山賊風の男を探してます。見つけても決して捕まえようとせずに、ギルドマスターまでお知らせください。

 報酬は……

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