32話
先週、更新できなくてごめんね?
アウトローギルドもだいぶ安定してきて、カウンター業務の配置転換をする事にした。
アウトローの依頼受注、達成報告などをするカウンターには美砂、チャロン、アオの3人が担当として配置し、商人用カウンターには、クウコとラキシを担当にした。
会員登録は、だいぶ落ち着いたので、アウトロー、商人の登録先を統一した。
来る人数も少ない事もあって、まだ不慣れな子をカウンターに置く事で、慣れさせる目的だ。
スムーズに処理されていくカウンター業務を眺める俺は安堵の溜息を吐く。
とりあえず、走り出しは良好だが……
そこまで考えると頭を抱えながら、アウトローのカウンターを見つめる。
見つめた先にいるアウトローに柔らかい笑みを浮かべるアオの姿を見て嘆息する。
「かっかか、朝の事を思い出して居るのか? 確かに今日も面白かったのぉ」
「面白いのは見てる側だけだ! 俺はマジで疲れる……」
奴隷の子達は、仕事も落ち着いてきた事と日数がそれなりに経った。
俺の人となりを理解し始め、酷い事をしてこない相手だという確信と強要してこないと信じて貰えたようでそれぞれの素の顔を覗かせ始めた。
例えば、クウコは俗に言う風紀委員キャラというか世話焼きな姉のようで、あれこれと口を挟む傾向がある。
今朝、美砂にネクタイをしっかりと締められて、この格好に慣れてなくネクタイをこっそりと緩めるとすぐに気付き、
「駄目ですよ? マスターはギルドの顔なんですからね?」
そう言いつつ、見上げながらニッコリと笑い、キュッと少し強めに締めると俺の返事待ちをする。
「りょ、了解」
「はい、良いお返事です」
そう言うと、だらしなく見えない程度に少しネクタイを緩めてくれる。
他の例を上げるとツキノだと、暇があると縁側でボゥとするお婆ちゃんのように座る姿を見かける。
時折、膝にミケを抱えていたりする。
ミケは見た目通りのアホの子でクリカと同類であった。
そんななか、異端とも言えたのがアオであった。
今も見つめる先には、アウトローに対して、クスクスと上品に笑い、目もぱっちりとさせて美少女ぶりを発揮していた。
聞く所によるとアウトローの評判はすこぶる良いらしい。
まあ、確かにあの姿しか見てなければ、俺も似たような感想を抱いたと思う。
だが、事実は悲しいかな、アレが虚像である事を示していた。
今朝の出来事を思い出してみよう。
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早朝、美砂達が朝食作り、クリカは外に走りに行く為にベットから出ていくのを寝ぼけ眼で見送り、2度寝を敢行していた時の話だ。
どれくらい寝てたか分からないが、突然、顔を叩きつけられる感覚が襲いかかり、俺は飛び上がる。
慌てて周りを見渡すと眠そうな目をさせたアオが俺を見下ろしていた。
受付に居る時や、他人と接する時にはパッチリさせている目だが、通常モードはいつも眠そうにしている。
良く見ると手には枕が握り締められており、あれで顔を叩かれた事を知る。
「なんで枕で叩くんだ!」
「美砂がご飯だから起こしてこい、と言ったから」
ダルそうに答えるアオを見て、どうして他人と身内の差がこれほど酷いのだろうと泣きたくなる。
歯を磨いていると邪魔とばかりに足蹴にして「退いて」と押しやったり、トイレに駆け込もうとしたらドロップキックして先に入られたりと、やりたい放題に俺はされている。
これが他の女の子にもしていたら、強い態度で注意ができるのだが、酷い事するのはどうやら俺限定のようなのだ。
だから、アオはちょっと変わった子だとは認識されているようだが、女の子同士では良好な関係を築いていた。
「あのさ、俺もアオ達に奴隷なんだからとは言う気もないし、畏まって欲しいとも思ってないけど、一応、俺は上司なんだから、少しは優しい起こし方してくれてもバチは当たらないと思うんだけど?」
そう言うとヤレヤレという顔を見せると、ベットの足元のシーツから侵入してくる。
徐々に俺に近づいて来て腰を掴まれたと思ったら俺は慌て出す。
「待てぇ、いきなり過ぎて突っ込むの遅れたけど、何してる? それと何故ズボンを降ろそうとしてるんだぁ!」
必死にズボンを押さえながらシーツの隙間からアオが相変わらず眠そうな目をこちらに向けていた。
「つまりあれでしょ? ご主人様に対する正しいご挨拶をしろと?」
「それ、どこの世界の常識? 奴隷になるとそれが普通になるの? そう教えられてるの?」
本当なら早めに他の子達にもクギを刺さなくてはぁ!!
「いや、そんな事ないし、教えられてもない」
「じゃ、なんでするの?」
俺が噛みつくように言うが、相変わらずズボンを引っ張り続けるアオが首を傾げながら言ってくる。
「アンタの目がそう言ってた。後、美砂達が毎夜毎夜、アンタに求められて大変と言ってた」
「激しく待てぇ!! お前の目は節穴だ、そんな事思ってすらねぇーよ! ってか、美砂達が影でそんな事言ってるの? 毎回、殺されそうになりながら襲われてるのは俺のほうだ!」
マジ泣きしながらアオを睨むように見つめるとドン引きされた顔をして、やっと手を離してシーツから出てくる。
「まさか、夜な夜な聞こえてくる、か弱い男の声はアンタのだったの?」
「お願い、それは忘れてぇ!!」
もう俺を辱めないで、お願い!!
「坊主も大変じゃのぉ」
カバン! この危機的状況を脱する奇策を!!!
「ないな」
やっぱりカバン使えねぇ……
「さてと、遊ぶのはこれぐらいにして……」
「あ、遊んで? どこからどこまでが!?」
動揺する俺を放置するアオはシーツを奪うとある場所を凝視する。
アオの視線の先を見つめると、元気良く『おはよう!』してるヤツがいた。
慌てて手で隠そうとするが、蔑んだ目で見つめるアオが言ってくる。
「さっきの今のこんな短い時間でこの変化、アンタ半端ないね」
「朝と若さが憎い!」
俺は枕に突っ伏して、さめざめと泣いた。
呆れた声を後ろから言い放つアオ。
「どうでもいいけど、それを静めて朝ご飯食べちゃってね? 片付かないから」
俺は力なく「はい」と枕でくぐもった声を上げた。
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「いやですわ、お口が上手なんだからアレクさん」
「いやいや、本当、良かったら今度、食事でもどう?」
そう言われたアオが少し悩む素振りを見せるが首を横に振る。
「ごめんなさい。私、ここのギルドマスターに買われた者なので……」
「そうか、それは残念だ。良くして貰ってるか?」
アレクという、おっさんは未練たらたらという顔をしながら問いかける。
アオは顎に指を添えて考え込む素振りを見せる。
「うーん、皆さんがいるから毎日楽しいですよ?」
「なら、救いはあるようで良かったな」
おい、待て、それは暗に俺は酷い人と言ってないか?
受付業務の傍らで談笑する姿を恨めしそうな目で見つめる俺は泣きそうであった。
「いやぁ、アオという子は良い買い物じゃったな? 仕事はできるし、坊主の扱いにセンスの輝きが見える。逸材じゃな!」
無言でカバンを叩くと俺は静かに涙を流し始めた。
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