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神様のかばん  作者: バイブルさん
1章 ギルド設立編
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2話

 女の子の悲鳴に誘われて、木々を抜けた先を見た時、剣太郎の最初の感想は、「テレビの撮影?」である。


 何故ならば、目の前で展開されているのは、落ち武者のような者な2人が挟むように少女を追い詰めていたのである。


 その周りには同じような落ち武者風の死体が3つほどあり、着流し風の姿をしたおっさんが刀に寄りかかるようにして必死に立とうとしている。だが、あの様子では立つのは無理だろう。


「あのおっさんが、3人を仕留めたのか、凄いな」


 剣太郎も剣を扱う者、1人で相手にできる限界も理解していた。実力が対等であれば、1人で5分5分、2人で運が良ければ、3人で逃げるしかない。それ以上となると逃げるのも困難である。


 と思わず感心しかけたが、よくよく考えれば、道場の近くでこんな殺人現場など有り得ない。


 でも、と俺は思う。あの血の流れ方やおっさんの必死さに演技でやってるなら、凄い俳優さんだと思いつつ、見ているとおっさんが叫ぶ。


「お嬢様、逃げてくだせぇ!」


 つい、殺人現場かと思っておっさんに意識を向けていたが、じりじりと追い詰められていた女の子が岩を背に逃げ場を失うのを見て、注目した。


 着流しのおっさんの格好もアレだが、お嬢様と呼ばれた子の姿も時代かかった格好をしている。

 武家社会が崩壊した後の女学生といった格好をする少女を見つめる。


 長い黒髪に赤い大きめのリボンをしており、小柄と言っていい身長ながら、胸はそれなりにありそうである。

 切れ長の瞳は強い意思を秘めていそうだと感じさせる。


 近くに寄らないと分からないだろうが、きっと、サクランボのような可愛い口をしていると俺は勝手に決める。


「芸能人でも見かけないレベルの可愛い子じゃないかっ!」


 俺は、カメラはどこかな、と辺りを見渡すが見つからず、首を傾げる。


 カメラを捜していた俺の耳に、少女の短い悲鳴を聞き、そちらに目を向ける。


 すると、少女の胸元を服を掴まれて、サラシで撒いた胸が露出する。


 俺は驚愕する。


「サラシを巻いてる状態であの胸のサイズだと……」


 もし、今、俺が思っている通りであるなら、おそらく150cmを超えたぐらいの少女が持ち得るのかというほどの巨乳の可能性が生まれる。


 自分を抱くようにして震える少女を見て、先程から感じている違和感が強く成ってくる。


「おいおい、このままいったら良くてR15、最悪R18の世界に突入する作品を撮ろうしてないか?」


 俺は自分でも分かり始めている。目の前で転がる落ち武者風の男達が本物の死体である事に。

 だが、それを認めるのを拒否している、平和な国に生まれ、そういうモノと無縁に生きてきたのだから。


「とはいえ、万が一、撮影なら止めたら怒られそうだな……」


 などと最後の足掻きをするが、落ち着いて考えれば、ここは私有地、つまり、俺の家の土地である。そこで許可なく紛らわしい撮影をしたり、ここにいることすら不法侵入を訴えられる立場であると気付いた俺は懐からあるモノを取り出す。


 最近、買ったばかりのスマホである。


 スマホで、110をダイヤルをして、警察という国家権力に頼ろう!


 トゥ――、トゥ――


 むむむ、発信音が鳴らない?と俺はスマホの画面を見つめると圏外マークが付いているではないか。


「おかしい、俺の道場でもバリ3だったのに!」


 なんて、ぐだぐだしている間に恐怖からか、諦めからか分からないが座り込んでしまった少女をむさ苦しい男が囲む。


「ああっ、もう、どうにでもなれっ!」


 相手の死角を突くようにして、廻り込み、少女を血走った目で見つめて、周りが疎かになっている2人の背後から襲いかかる。


「メーンッ!!」


 最初の一人はボロイが兜のような物を着けていたので、背中から木刀で上段から遠慮なしに叩きつける。


 不意打ちで、油断していた男は、歯と歯を強く打ち鳴らす音をさせるとそのまま、地面へ倒れて行く。


 叩き付けた音で反応した残りの男は俺と倒れた仲間を交互に見つめ放心してるところを遠慮なく鳩尾へ突きを入れる。


 悪漢を倒して、胸元を晒された少女の衣服をそっと直すというイケメン度が高い技を笑顔を意識してやる。


「お嬢さん、もう大丈夫ですよ」

「えっと、有難うございます。その助けて頂いたのは助かりましたが、できれば、会話は顔を見てお願いできませんか?」


 おっと、先程から桃のように瑞々しくて素晴らしいモノしか目に入らないと思っていたら、どうやら俺は胸に語りかけていたようだ。


 俺は、「失礼っ」と言うと名残惜しかったが視線を上に上げる。上げた先には頬を真っ赤に染めて困った顔をした美少女の顔を見てしまい、呆けてしまう。


 先程は、芸能人レベルと言ったが間近で見ると芸能人でもいなさそうなレベルの美少女である事に気付き、自分の頬も熱くなるのを自覚した。


 この恥ずかしいのを耐えるようにする眉を下げる顔を見て、俺は萌えてしまった。


 お互い思惑は違うが呆けるように見つめていると、少女が何かを言おうとした瞬間、息を飲み、後ろを指差す。


 俺は意味が分からず、首を傾げると後ろから、おっさんの断末魔が聞こえて、慌てて後ろを振り向く。


 振り向くとおっさんは背中から剣で刺されて、口から血を吐きだしながら倒れるところであった。


 それを見た少女が悲鳴を上げると同時に俺に目掛けて炎の塊が迫る。


 俺は反射的にバットを振る様に木刀を使い、炎を目掛けて打つ。


 それが功を奏したのか炎は消えるが、同時に木刀の先端から半分も消し墨にされる。

 使い物にならなくなった木刀を放ると、辺りを見渡すと先程の落ち武者と違い、今度は、異世界物で見かけそうな冒険者風の男達が10名ほど現れる。


 俺が倒した落ち武者もその音で目を覚ましたようで、起き上がる。だが、起き上がったのを見た、冒険者達は、問答無用に落ち武者を後ろから斬り捨てる。どうやら仲間ではないようであるが、同時に俺達の仲間でもない。

 おそらく、商売敵を始末しているように俺には見えたので、後ろの少女は、厄介な星の下に生まれた子か、相当、事情がある子なんだろうと思う。


 そして、ここまでの事実が揃うとさすがに現実を受け入れる必要があるようだ。ここは家の森じゃない。まったく違う場所、世界すら違うようだ。


 頬を伝う汗を拭い、前を見据えながら、少女に問いかける。


「アイツ等はお知り合いだったりしない?」


 顎で前の奴らを示す。


「いいえ、初めて見る人達です。冒険者のようですから、山賊ではないのでしょうが、こういう事をするような人達ですから、似たような者なのでしょう」


 可愛い顔して結構、言うべきことは言う少女に思わず、口笛を吹きたくなったがそれどころではない。


 相手は10人、どう考えてもまともに勝てる訳がないのに、獲物の木刀は失われた。しかも魔法みたいなのも使えるとなると絶望だ、と唇を噛み締めていると、凄く近い所から声が響く。


「坊主、ワシを使え」


 俺はどこからするオッサンの声をキョロキョロと辺りを見渡す。再び、声が聞こえて、発信源を辿ると俺は驚いているのか、呆れているのか自分でも分からないが問いかける。


「えっ? お前なの? お前はカバンだよな?」


 俺は目を点にして驚いた。

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