26話
ガチで見直し0です……
すいませんですじゃぁ~
嫁達に港の散歩を勧められた俺は、カバンと話をしてると船着き場が騒がしい事に気付き、近寄って行った。
近寄るとどうやら、船員と客との小競り合いを遠巻きに野次馬が集まっているようである。
良く見ると客の廻りには、みすぼらしい格好をした少女達が座り込み、一部の子が咳をしながら顔を赤くする赤毛の少女の面倒を見ていた。
「なぁ、こいつのは只の風邪さぁ。そんなに目くじら立てんなよ? こいつらの維持費もタダじゃないから1日も早く国に帰りたいんだっ!」
「そうは言うがな? 只の風邪にしては重そうだぞ? 長い航海で病気で船内広まるのは困ると言ってんだ。その子の病気が治ってから出直せ」
などと話していた。
その2人を見つめる野次馬達が、
「おい、あのごねてるの、奴隷商じゃねぇか?」
「ああ、間違いねぇ。こないだポポロンで奴隷市があっただろ? あの様子だとだいぶ売れ残ったようだな」
「あの咳をしてる子以外、全員、獣人種か。それは売れ残るのはしょうがないな」
それを聞いた俺は、そういや、普通の祭と思って行こうとしてたな、と苦笑する。
だが、獣人は何故売れないのだろうと思い、その話をしてた、おっさんに話しかける。
「なんで獣人は売れないんだ?」
「はぁ? あんちゃん知らないのかい? 獣人は大抵、人より強い力を持ってる。ヤケになって暴れられたら止める事ができねぇのをわざわざ買おうとするのはモノ好きだけさ」
なんて、都合のいい事を言ってるんだ、と内心思っているとカバンが俺に言ってくる。
「坊主の価値観ではそう思うのはしょうがないが、奴隷とは買う者にとって都合の良いものじゃないと意味がないからのぉ」
改めてそう言われると納得するしかないが、すっきりしない。
そう思っていると、どうやら話が上手く纏まらないようで苛立った奴隷商が近くにいた獣人の少女を蹴り飛ばす。
それを見た俺は、衝動的に飛び出しそうになるが耐える。
ああっ! むかつく! 合法的にギャフン(死語)言わせる方法はないものかよっ!
と憤ってるとカバンが含み笑いをすると俺に話しかけてくる。
「ワシとて、理屈では、奴隷とはそうだと思っておるが納得しとる訳ではないのでな、坊主、ワシの案に乗らんか?」
カバンから持ちかけられた案を聞いた俺は、なんちゅう恐ろしい事を、と思わされるがすぐに快諾する。
カバン様、そのやり口、しびれる、惚れてまうぅ!
「調子のいい坊主じゃ。まあ、そう言う訳じゃから、もうしばらく我慢して静観するんじゃ」
カバンの言う通りに俺は我慢して2人のやり取りを見守った。
「じゃ、俺だけなら問題ないだろ?」
「それは文句は言えんが、奴隷をどうする? 奴隷法で処分はできんだろ?」
分かってる、という奴隷商が周りに集まる野次馬に営業スマイルを浮かべる。
「お集まりの皆さん、良ければウチの奴隷を買いませんか? 今なら、たった銀貨1枚でお売りしますよ!」
そう言われた野次馬は微妙そうな顔をする。
「あの人の子が病気じゃなかったら喜んで買うが、獣人は銀貨1枚でもな……」
1人がそう呟くのを聞いた者達が同じように頷くと面倒事は御免だとばかりに1人、また1人と離れていく。
分かってたけど、こいつらの価値観って相成れねぇ!!
「もうしばらくの我慢じゃ、耐えろ」
そう言ってくるカバンの言葉で踏み止まり、耐える。
誰も買おうとしないのに離れていくのに焦った奴隷商は声高に叫ぶ。
「こ、ここにおりまする、奴隷12人を纏めて銀貨10枚の特価で……」
「馬鹿か? 銀貨1枚ですら購入を考えるのに、12人も面倒見てられるかよ?」
途中まで面白かったから見てた残ってた野次馬もその言葉を聞いて去っていく。
もういいよな? カバン!
「おうっ、叩きつけてやれ!」
俺はカバンに手を突っ込むと金貨を1枚取ると奴隷商の額に投げつける。
上手い具合に平たい場所がデコに当たったようで良い音をさせる。
始めは喧嘩を売られたと思った奴隷商だったが、投げつけられたのが金貨と分かり、表情を明るくさせる。
「黙って、契約書を置いて去れっ!」
なんで俺が怒ってるかは分かってないようだが、気が変わられたら困るとばかりに慌てて、契約書を取り出して、近くにいる獣人の少女に手渡す。
嬉しそうな顔を隠さずに俺に頭を下げると船員に
「これでいいだろ?」
「はぁ? 文句はねぇですけどね」
そう言う船員の言葉を聞くと嬉しそうに乗船する為に船へと向かう。
奴隷商を呆れた目で見送る船員に近づいていく。
「なあ、アンタの船の船員は全部で何人だ?」
「へぇ、30名、コックなどを含めれば34名ですが、それが何か?」
あっさり金貨を払える俺が、誰か分からない以上、機嫌を損ねるのは不味いと思ったようで下手に出てくる。
客は? と聞くとさっきの奴隷商だけで、残りは荷物と答えてくる。
そう言ってくる船員に俺はカバンから紙で包んだ物を手渡す。
受け取った船員が紙を開くと錠剤が35個入っていた。
「これは?」
薬だろうとは分かってるようだが、危ない薬だったら困ると顔を顰めている。
「あそこで咳き込んでる子の病気は『はしか』だ」
俺がそう言うが首を傾げる船員に済まないと告げる。
「こっちではペトロンと言うんだったかな?」
そう言われてた船員は慌てて、奴隷の少女達から距離を取ろうとするが止める。
「今更、離れても手遅れだ。風向きからいってもな? 野次馬は運が悪いヤツ以外は大丈夫かもしれないけどね」
勿論、俺は予防接種をしてるから平気である。
カバンは初見で赤毛の少女の病気が『はしか』と見抜いた。それを踏まえた意味で奴隷商にザマァする方法を俺に伝授した。
項垂れる船員に俺が肩に手を置く。
「落ち込むなよ、落ち着いて考えろよ。そうだと知ってるのに何故、あの子達を買ったと思う? うつる可能性があるのに俺がアンタに近寄ってきてると思う?」
言われてみればと思い、手渡された錠剤を見つめる。
「そう、それを飲めば、発症前でも治せるし、発症してからでも治るが、しばらくは苦しむ事にはなるけどな?」
しかも、飲んでから1年程はその病気がうつらないと伝える。
遂にカバンに言われた言葉を俺は吐く。
「その薬をいつ飲むかはアンタ達次第だが、あの奴隷商は間違いなく船旅が始まってすぐぐらいに発病する。そしたら、こう言ってやってくれ」
『この薬、金貨10枚でお売りしますよ?』
そう言う俺の顔をジッと見つめた船員は、イヤラシイ笑みを浮かべる。それと同時に俺が本気で怒ってた事も分かったようだ。
「この薬、本当に効くんだよな?」
「間違いなく効くし、黙ってたらアンタ達は船旅中に病気になって漂流してたんじゃないか?」
確かに自分を騙す意味がないと思ったようで、頭を下げると船員は船へと戻って行った。
これで、只でさえ儲けがなかった奴隷商は大赤字、もしくは、破産だろう。
そう思うとスッとする。
さすがに見殺しは気分は悪いが痛い目には合わせてもいいだろうと俺は頷く。
振り返ると不安そうにしてる獣人の少女達がいたので笑いかけるとカバンから同じ薬と水の入ったペットボトルを取り出す。
「大丈夫だよ、君達もこの薬を飲めば治るから、ちょっと苦いかもしれないけど、水で流しこんでね」
そういうと手渡すと多少の躊躇はあるようだが、新しい主人に嫌われたらとでも思ったのか思いきって飲み下す。
苦そうにする子もいるが全員が飲むのを確認した俺は、赤毛の少女を抱き起こす。
苦しそうな表情をしつつも俺を見上げる少女は可愛らしいと分かる顔をしており、ネコ科を思わせる。
「しんどいかもしれないけど、この薬を飲んで? 今日の晩ぐらいには楽になるから」
そう言う俺はかさつく少女の唇に錠剤を押し当てると小さく口を開けてくれたので口に入れる。
そして、ペットボトルの水を赤毛の少女に飲ませてあげる。
すると、すぐに瞼が落ち、寝息を立てるのを聞いて、俺は驚くが顔に出さないように努力しているとカバンが言ってくる。
「スマン、言い忘れておった。発病しとるもんに飲ますとすぐに寝てしまうんじゃ」
そう言ってくるカバンに内心、もっと早く言ってくれよ、と泣き事を零す。
自分達も同じモノを飲まされた事で不安に感じてる獣人の少女達に、さっきカバンに言われた事をそのまま伝える。
俺は赤毛の少女を抱え上げると獣人の少女達に笑いかける。
「ここにいてもしょうがないから、俺についてきてよ。悪いようにはしないから?」
そう言って歩き出すと獣人の少女達が着いてくるのを確認して俺の新居の建物にトンボ返りする事になった。
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