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神様のかばん  作者: バイブルさん
1章 ギルド設立編
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25話

 さあ、出発だ、という段階で港の近くの建物という以外の情報を聞いてなかった俺は冷や汗を流す。


 聞くの忘れてるよ!


 恥ずかしいけど聞きに戻ろうとしたら、美砂に止められる。


「旦那様、どうされたのですか?」

「すまん、場所を聞くのを忘れてた」


 隠すともっとみっともないと思い、赤面覚悟で吐露する。


 すると、大きな胸を張ったクリカがドヤ顔しながら紙を俺に見せてくる。


「ケンちゃんが怖い顔した人と金髪の子と話してる間に違う人に聞いてきたのぉ!」

「おお、ありがとう!」



 ごめんよぉ! まったくやる気がないような事を思ってて、ちゃんと自分ができる役割を待って待機しててくれたんだな!



「クリカ、嘘はいけないのだ。飴が目に入ったから貰いに行ったら、ついでに渡されたのを私は見てたのだ」

「お、お姉ちゃん、言わなければバレなかったのにぃ!」



 くぅりぃかぅぁ~~!!!



 お仕置きに頬を両手で挟んでグリグリすると堅いモノが当たる。どうやら飴玉のようである。


「飴ちゃんが壊れるのぉ!」


 確かに割れると早く溶けるから楽しめる時間は短くなるよな。でもなぁ……


 俺の視界には飴が割れるという事だけでマジ泣きしそうになってるクリカに嘆息する。


 正直なところ、怒ってた訳ではないのであっさり解放する。


「飴を貰った事を怒ってたんじゃないからな? 嘘吐いた事が駄目なんだぞ?」


 そういうと素直に謝るクリカに「もう怒ってないから」と笑いかけて手を引く。


「偶然とはいえ、クリカのおかげで地図も手に入ったし、行こうか?」


 苦笑する美砂とチャロンと照れ笑いをするクリカを連れて、俺達は港がある方向へと向かった。



 地図を頼りに港で建物を探す事になるかと思われたが、あっさりと見つかった。


 逆にこれで合ってるのかと嫁達と顔を突き合わせて確認し合ったほどである。


 汚いとかではなく、想像以上にデカったのである。市役所とは言わないが町役場ぐらいには……


 レンガ造りの3階建て、俺達は間抜けにも口を開けながらその建物を見上げた。


 最初に我に返ったのは美砂であった。


「ごほん、旦那様、ここで見ていても仕方がありません。一度入りましょう」


 軽く揺すられて呆けてた事に気付き、慌てて頷くと俺達4人は中に入る。


 中に入って俺はまた呆ける。


 外から見た限りである程度想像出来ていたが広すぎる。


 嫁の3人は耐性が出来たようで美砂はこの広さを眺めながら、考え込んでいる。


 チャロンは照明に使われている魔法装置などが気になるようで見て廻っている。


 クリカはリードを離された犬のように駆けまわり、気付けば階段を昇っていく姿が見えた。


 頼もしい嫁達である。


「しかし、この広さは互助会としては申し分ないじゃろうが……」


 考え込むような反応を見せるカバンに声をかけようとするが、美砂とチャロンが近寄ってくる。


「かなり良い魔法装置がアチコチに使われてるのだ。もしかしたら、ケンタロウが払った金額より高い物だったかもしれないのだ」


 そう言ってくるチャロンにびっくりする。



 どうしよう、俺、ドヤ顔しながら「足りるか?」と言っちゃったよ!



「まあ、仕方があるまい。ワシもここまでは予想外じゃった」


 嘆息するカバンが俺を擁護してくれて嬉しくてカバンを撫でておく。


 精神的なダメージを被った俺が溜息を零していると美砂が言い難そうに口を出してくる。


「旦那様、これだけの建物となると私達だけでは管理ができないかと思われます。かと言って、私達だけで廻す為に使う所を制限してしまうと……」


 その続きは言われなくても良く分かった。


 新装開店したばかりのパチ店で、至る台に部品取り寄せ中や調整中と張られた張り紙などで使えなくされてる店を見て、不安になるものである……と、どっかの馬鹿が体験したらしいと聞いた。


 つまり、もっと一般的な話になれば、コンビニに行ったら商品陳列棚が半分以上使われてない店を見た時、どう思うかである。


 胡散臭いと思われて終わりである。


「美砂が言いたいのは、最初は無駄だとしても、人の配置しておく事で見栄・・を張る必要があると?」

「はい、その為には人を雇い入れないといけませんが、旦那様のしようとする仕事上、誰でも良いというものではありませんので……」

「まあ、そうじゃな、人を集めたいだけなら、ダダンに頼むのもありじゃが、その危険性はお前の嫁は気付いておるようじゃな」


 カバンが危険性について説明してくれた。


 要約するとこうだ。


 どこかから一括で雇い入れると入れた所の派閥ができる。最悪、乗っ取りを考えるかもしれない危険性があるらしい。


 勿論、カードやカード製造機なのを奪っても使えなくする事は簡単であるが、そんな危険を孕んだ組織になるのが見えてる方策を取るのは下策も下策である。


「何か手はないか?」


 そう聞かれた美砂は綺麗な眉を寄せて悩む。


「まったくない訳ではありませんが、善し悪しがあります。今夜、ゆっくりと練り直してみますので、明日までお待ちください」

「美砂、いや、みんなには頼ってばかりだ、ありがとう」


 この場に居る美砂とチャロンを見つめて俺は心から礼を言う。


「ワシにはないのかのぉ?」


 分かってるよ、とばかりに苦笑しながらカバンを軽く叩く。


 美砂達に任せるのが賢いとは思うが、だからと言って何も考えないの違うよな、と思っていると走り去ったクリカが帰ってくる。


「ケンちゃん、ケンちゃん、大変っ!」


 そう言うと俺の手を引いて階段の方へと引っ張られる。


「とりあえず落ち着け、クリカ」


 落ち着かせようとしても、大変と騒ぎながら引っ張る。良く見ると笑っているから深刻な事ではなく、ビックリする類の話なんだとは思われる。


 美砂とチャロンに目を向けるとチャロンが嘆息する。


「見た方が早そうなのだ」


 仰る通りで、とばかりだったので俺は抵抗するのを止めて、手を引かれるがまま、階段を昇っていった。



 クリカに連れられて3階にやってきた俺達は虚を突かれたように辺りを見渡す。


 そこにあるのは柱と外と仕切りにされてる壁と窓ぐらいであった。


 つまり、広い空間があるだけで部屋すら存在しない多目的ホールのよう場所であった。


「これは、これから部屋を作る所だったのかもしれませんね」


 美砂が床に引かれた線をなぞりながら言ってくる。


 確かに線の通りに壁を作ればいくつか部屋ができそうである。


「でも、着工前なのだ。今なら好きに間取りを作れる……」


 そう言うチャロンは美砂を見つめると頷かれて満足そうに笑う。


 2人は俺をジッと見つめてた後、お互いに目を交わし合うと俺に再度向き合う。


「ケンタロウ、この3階を私達の家にするのはどうだろう?」

「別にいいんじゃないか? ああ、でも、これだけ広かったら20人は余裕で住めそうで逆に大変じゃないか?」

「いえいえ、その辺りも配慮した造りにしますので安心して私達にお任せください」


 妙に連携が上手いと思えるほど2人が反論を封じるように言ってくるのがちょっと気になる。

 だが、父さんが家を建てると言いだした時、母さんが間取りを決めると強行したし、父さんも任せると言っていた。

 こういう事は嫁に任せるのがセオリーなのかもしれないな。


 ならば、俺も父さんのように言う事にしよう。


「基本的に任せるけど、俺の書斎を作ってね?」

「はい、分かりました」

「任せるのだ」


 凄く嬉しそうな2人と祭だと騒ぐのが礼儀と言わんばかりに「任せてっ!」と騒ぐクリカに苦笑を浮かべる。


 当時、父さんに何故、書斎? と聞いた。父さんは本など好きではなかったはずである。


 その時の父さんの返答は、


「それは、ひな……剣太郎、男にはいくつになっても秘密基地が必要なんだぞ?」


 であった。


 父さんは始めになんて言おうとしたのであろう……?


 何てことを悩んでいると美砂に言われる。


「間取りもそうですが、必要な家具なども私達の方で選んでおきますので、お暇になられると思いますので、港でも見てこられたらどうですか?」


 いつになくプッシュする美砂に首を傾げながら、確かに家具とかに興味はないので、頼まれてくれるというなら任せよう。


「じゃ、お言葉に甘えようかな? ちょっと散歩気分で見てくるよ」

「「「いってらっしゃい」」」


 嫁3人に見送られた俺は階段を降りて、外に出る。


 辺りを確認して歩き出そうとするとカバンが話しかけてくる。


「坊主、気付いておらんのか?」

「えっ? 何が?」


 まったく分かってなかったので素で答えると嘆息される。


「普通、新居の家具や間取り決め、で旦那を外すというのはおかしいとは思わんか?」


 カバンに言われて、想像すると確かに、決定権は旦那に無くとも一緒に探してるほうがシックリくる気がする。


 じゃ、なんでだ?


「美砂達が俺を謀ろうとしてると?」

「いや、ワシもその可能性は欠片にも思っとらんよ」


 カバンが何を言いたいか分からずに更に質問を重ねようと思ったら、港の船の前辺りが騒がしい事に気付く。


「なんかあったのか?」

「さあのぉ、行って見た方が早いじゃろ」


 確かに、とは思うが先程の疑問も気になると踏み止まっているが、後で聞けばいいかと思うと騒がしくなってる場所へと俺とカバンは向かう。


 そして、カバンへの質問は手遅れになってから思い出す事になる未来が確定した瞬間であった。

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