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神様のかばん  作者: バイブルさん
1章 ギルド設立編
22/46

21話

 早く書けたので今週は土曜に更新

 ダダ―ンの商館に入っていくと強面の男に呼び止められる。


「失礼ですが、こちらには何の御用で?」


 明らかに不審者と判断して万が一の可能性を残した定番のセリフで声をかけられる。


「ここの商館の主に会いたい。商談が目的だ」


 俺は中途半端な嘘を付けば、全てが失敗に終わると感じて素直に答える。


 決して、この強面の男が怖かったという事実は確認されていない。


 うん、ごめん、嘘吐きましたぁ――! 


 本当はメッサ怖いです――――!!


「主のダダン様にですか? それは無理です。あの方はお忙しい。替わりの者を呼びますのでそちらに……」


 ダダン? ダダ―ンじゃなくて?


 頬を引き攣らせる俺をジト目で見つめるチャロンと咳払いをする美砂を直視できない。


 間に挟む事で情報が曲がるのも恐れるが時間がかかるのは良しとしない俺は強面の男の言葉に被せる。


「忙しい? それはこの街、いや、この国の有数、一番を狙うような大事な商談ですか?」


 そう言う俺の顔を目を細めて見つめる。


 正直、チビってしまいそうなほど怖いが今は強気でいかないと腹と目力を意識する。


「貴方が持って来ている商談はそれに匹敵すると仰りたいと?」

「ああ、その通りだ。もし疑うなら、他の商館に話を持って行くよ。俺はてっきり、この街で2番と言われている事に屈辱に感じていて、手ぶらで来るほど自信を持つ相手の商談と言われれば対応するぐらいの気概があると思ったけど勘違いだったみたいだ」


 強面の男に軽く会釈して「すまない、邪魔をした」と言って去ろうとすると呼び止められる。


「少し、お待ちをすぐにダダン様に確認を取って参りますので」


 そう言って頭を下げてくる強面の男に鷹揚に頷いてみせる。


 すぐに近くの女性に待合室に案内の指示を出すと去っていった。



 待合室でお茶を出されて、一口飲んで大きな溜息を吐く。



 危ない橋を渡った……



 営業マンの親父が以前言っていた話で聞いて貰えないと思った時に一か八かに賭ける手段として聞いた話である。

 自分の手持ちのカードの価値を高いモノと思わせる事で耳を傾けさせるという話を思い出した俺が咄嗟に取った行動だったが今のところは上手くいったようである。


 そんな心情を理解しているらしい美砂がハンカチを取り出して俺に差し出してくれる。


 額に滲む汗を拭うと少しスッキリして落ち着き、「ありがとう」と美砂に礼を言う。


 しばらくすると部屋をノックする音と共に先程の強面の男が入ってくる。


「ダダン様がお会いするそうです。ご案内します」


 そう言うと歩き出す強面の男を追いかけるように俺達も着いていく。


 二階に上がると豪華な造りの扉の前に止まると強面の男がノックすると入室していくので続いて入る。


 正面の立派なデスクに座る男に目を向ける。



 ヤク○ですやん! もしくは、マフィ○のボスですやん!!



 商談の最強の武器は交渉きょうはくです、と言われても疑う余地がない。


 もしかして人選を間違ったかと内心慌てながらも強面の男と思っていたが正面の男と比べたら普通の人がソファに座るように勧めてくる。


 その容姿は目付きのキツイ「立つんだ、ジ○―」と叫ぶ眼帯をした人のような人物である。


 葉巻を咥えて火を付けるダンペ……もとい、ダダンは俺に視線を向ける。


 吐き出される煙に顔を顰める俺に話しかけてくる。


「大きな口を叩く商談を聞こうじゃねぇか」

「まずは自己紹介を。私は橘 剣太郎。このセイドンでアウトロー達の仕事を斡旋する仕事を立ち上げようとしている者です」


 そう自己紹介する俺に、ああっ? と顔を顰めるダダンであるが時間を置くと聞くのを止められそうなのでそれに反応せずに続ける。


「そのアウトローに依頼する仕事を集めている段階なのですが、そのアウトロー達にとあるカードを支給しようと思っておりますが、そちらに興味がありそうな機能だけご説明します」


 そう言うとクリカに声をかけて、窓際にある壺の所に行くように指示する。


「ちゃんとお返ししますので、少々、あの壺をお借りしますね?」


 話が見えないらしく、進める為にとりあえず頷いた様子のダダンを見た後、クリカに指示する。


「その壺を仕舞ってくれ」

「はぁ―い、分かったのぉ」


 そう言うと壺に手を触れると忽然と壺が姿を消す。


 それを見たダダンは目を見開き立ち上がり、元、強面の男はクリカににじり寄る。


「慌てないで、借りるだけって言ったでしょ。クリカ、元に戻してあげて」


 俺の言葉を聞いたクリカがニコニコして、元、強面の男を恐れも感じさせずに気楽な声で、エイッと掛け声と共に壺を戻す。


 驚いた様子で壺とクリカを交互に見る。


 懐から自分のカード出して見せる。


「このカードに収納できる機能が付いたモノを配布する予定になっております」

「そんな事ができ……るんだな、今、目の前で見せられたばかりだしな」


 苦虫を噛み締めるような顔をしてみせるダダンは吐き出すように紫煙を吐く。


「それで? アウトロー達にそのカードを支給するから依頼すれば荷物の運搬が楽になる。それは否定しねぇが、それだけだったら国有数どころか街1番も怪しくねぇーか?」

「勿論、そこだけだったら、いかにアウトロー達を抱き抱えられるかが勝負の分かれ目、現状、財力が一番の商人が余計に力を付けて差が開く一方」


 そう説明する俺に分かり切った事を言うな、とばかりに苛立ちを隠さず紫煙を吐き出す。それに俺は咳払いをして続ける。


「だけど、そこに俺達の建ち上げようとしている場所に仕事を落としていってくれる商人に配る商人用のカードを支給したらどうだろう?」

「その仕舞えるカードが商人にも? どれくらい入るんだ!」


 自分達にも恩恵があると知ると食い付いてくるが、両手の掌を向けて、落ち着くように話す。


「俺達が立ち上げる、仮だけど、冒険者ギルドと言わせて貰う。そこに依頼する側で契約する顧客のランクというモノを用意する予定です」


 早く続きを言えとばかりに身を乗り出すダダンに苦笑しながら続きを話す。


「ランクは1~10まで作る予定で、10が低くて、丁度、俺が持ってるぐらいのカバンの容量が入る程度です。9でリュック。そして、1で馬車一台分です」

「1となるとだいぶ魅力的だが、最初がかなりキツイだろ?」


 それを言われるのは分かっていた俺は余裕の笑みを崩さずに答える。


「10だと行商人が少し嬉しいぐらい程度の容量ですが、このカードに入れたモノは鮮度が落ちません」


 はぁ? と言ったまま固まるダダン。


 人間、固定概念を崩されると固まるモノというのが目の前のダダンを見ていると良く分かり、思わず笑いそうになるが耐える。


「つまり、この港町で採れた海鮮物をそれに仕舞って1週間かかる街まで運んでも入れた時の状態で持っていけると言ってるのです」

「そんな事ができたら莫大な利益が出るっ!」


 ブツブツと語るダダンを見て、釣り針に食い付いたと判断するが、釣り好きだった爺ちゃんが言っていた。慌てて、引き上げると食い込みが足りずに逃がすと。


 なので、次の段階へと行く。


「さて、ここからが本題です」

「何! 今までのは前振りだと?」


 震える指で持つ葉巻の灰を灰皿に叩いて落とすと咥える。


 余裕に見えるように意識して、横柄に頷いてみせる。


「このランク制度を用いて、5以上の者の傘下のいる商人には最初からランク10ではなく9スタートを切れるようにするつもりです」


 黙り込むダダンを気にせずに俺は言葉を続ける。


「ランク6までなら財力がある者なら1年とかからずにいけるでしょう。ですが6を超える条件は厳しくさせて貰う予定になっております。今のところの俺の見立てだと、最短で5になれるのは3年」

「3年だと? 確かに魅力的な話ではあるが時間がかかり過ぎる。とはいえ、無視できる話でもない……」


 悔しげに語るダダンが俯くのを見た俺の頬が緩む。


 それを見ていた美砂が声を出さずに俺の太ももに触れる事で注意を促してきてくれる。

 慌てて、顔を引き締めると最後の詰めをミスらないように気も引き締める。


「そうですよね、先見の明がある人なら渋々、取引してくれるかもしれません。ですが、それを判断できる人物はそうは多くない。どうしても分かり易い例を求められます」


 何を言うんだ? とばかりに訝しげに俺をダダンは見てくる。


 トドメの言葉を俺は笑顔で言い放つ。


「俺達も仕事を立ち上げても紹介する仕事がなかったら格好が付きません。なので最初に大口の仕事を約束してくれた方、先着・・1名にランク1のカードを提供しようと思っております」


 俺の狙いに気付いたダダンは歯軋りをして怒鳴りたいのを耐える。


 ここで怒鳴り散らして、俺が去ってしまえば、その恩恵は別の者の物になる。そうなると大きなアドバンテージを逃す事になるからである。


 深い溜息を吐くように紫煙を吐く。


「確かに喉から手が出るような話じゃねぇか。お前、ケンタロウだったか? が言うように1人だけにするつもりなのは疑う気はねぇ。だがよ、そうも言ってられない状態になるのを阻止する対策はしてるのか?」


 そう言ってくるダダンの瞳に剣呑な光を見た俺はダダンが指を鳴らすと同時に叫ぶ。


「美砂、チャロン、クリカ!」


 俺が叫ぶよりも動き始めていた3人は隠れていたと思われる明らかにカタギじゃない者が飛び出してくるのに合わせて動く。


 クリカにかかってくる2人の男は右ストレートと廻し蹴りで壁のオブジェにする。


 1人の男の手首を握るチャロンは、ドレインタッチをしながら3人ほど固まる男達に向けて火球を突き付けて身動きを封じた。


 扉から駆けこむように入ってきた10名の男共は美砂が腕を引く動作だけで糸に絡め取られ、空中に浮かされる。



 美砂……いつの間に仕込んでたの?



 嫁の驚異的な能力に旦那である俺ですら震える。


「どうです? 余計な心配だと分かって貰えましたか?」


 そう言う俺はカバンからライフルと取り出し、ダダンに突き付ける。


「試す為とはいえ、俺の嫁に手を出した事は万死に値する」


 迷いもなく引き金を引くとジュワッという音と燻ぶる煙が上がる。


 ライフルから飛び出したはダダンの顔を濡らし、葉巻の火が鎮火する。


「俺は煙草の煙が嫌いだ。次、会う時は吸ってくれるなよ?」


 ダダンも一角の者らしく水浸しになりながらも眼光は衰えず、葉巻を灰皿に戻す。


「覚えておこう。礼は失する行動だったが、そう簡単に力に捩じ伏せられないと安心した。良き取引相手として今後もお願いしたい」

「それは勿論です。今後は良いお付き合いを」


 ライフルをカバンに仕舞い、美砂に目配せをすると美砂がダダンに書類の束を手渡す。


「基本的な条件などを書いたモノです。それを精査して正式なご返事を頂きたいと思います。精査にどれくらいお時間いります?」

「1日あれば足りる」


 そう言ってくるダダンに俺は


「では、明日のお昼にまた寄らせて貰います」


 と告げると出て行こうとするが、思い出したような顔をしてカバンから再び、ライフルを取り出す。


 銃口を天井に向けながら笑って見せる。


「次、似たような事をしたら、玩具じゃなく本物で交渉させて貰うよ?」


 ライフルの引き金を引くと炸裂音と共に天井に穴が空き、天井からパラパラと貫通した事でできた木屑が落ちてくる。


「それではまた明日」


 笑みを浮かべた俺達は出ていく。


 しばらく歩くと出てきた部屋から楽しげな笑い声が響き渡った。




 そして、宿に戻ってきて、夜になり夕食の後、興奮した嫁達に押し倒される。


 今日のやり取りをした俺にときめいたらしい。


 俺は必死にカバンの知恵の交代制を訴えるが、目にアヤシイ光を宿した3人に「明日から」と声を揃えられ、今日もまた、か細い男の悲鳴が響き渡った。



 次回予告、剣太郎、暁に死す!


 本当に笑えないっ!



「はぁ、坊主の為に良い薬でも見繕っておくかのぉ」


 呆れを隠さないカバンは大きく溜息を零すように紐を揺らした。

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