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神様のかばん  作者: バイブルさん
1章 ギルド設立編
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18話

 俺をクソガキ呼ばわりする馬ぐらいの大きさの犬のようなモノを従えた山賊の親分(仮)を見つめる。


 自信が溢れるドヤ顔をしながら胸元をはだけさせる。あらわになるその胸元には三本の裂傷痕を見せる。


「俺様の名前を言ってみろっ!」


 色んな意味で言っちゃならないセリフをサラッと言う山賊の親分(仮)を睨みつけながら口を開こうとする。

 しかし、一向に名前が浮かんでこない。


「えーと、えーと……なんて名前だったっけ?」

「このクソガキィ! あれほど激しいバトルを繰り広げた俺様の名前を知らないとはどういう了見だっ!」


 激昂する山賊の親分(仮)の頭の上にポンと犬が肉球で優しく抑える。


 その癒し効果か、激昂していた山賊の親分(仮)は落ち着きを取り戻す。


「すまねぇ、相棒。我を忘れてたぜ、もう少しでアイツのペースに巻き込まれるところだった」


 そう言うと犬の首に抱きつき、種族を超えた友情が見え隠れするが、俺達は置いてけぼりを食らう。


 山賊の親分(仮)が犬とじゃれついている風景を眺めながら、この場から去ってもいいかな?と思い、実行に移そうとした時、我に返った山賊の親分(仮)はこちらに指を突き付けてくる。


「相棒のおかげで命拾いしたな、もう一度だけ聞いてやる、俺様の名を言ってみろっ!」


 再び、胸元の傷を見せる山賊の親分(仮)は俺の返事を待つ。


 必死に思い出そうとするが一向に記憶にない。


「いや、あんたの事を忘れてる訳じゃないんだぞ? ポポロンでクリカの胸を揉もうとしたセクハラ男だろ?」

「セクハラ男って言うなっ!」


 一回落ち着いた山賊の親分(仮)であったが再びヒートアップする。


 睨みあう形になった2人に美砂が話しかける。


「あのぉ、名前、名前と仰いますが、貴方は旦那様に名前を名乗られた事はありませんよ? ついでに言わせて貰えると旦那様の名前も御存知ですか?」


 美砂の突っ込みに山賊の親分(仮)は、「んんっ??」と呟き、妙に可愛らしさが滲む顔をすると汗を掻き始める。


 必死に思い出そうとしてたが聞いてもない名前が浮かぶはずがなかった事に気付いた俺は項垂れそうになる。

 確かにこちらも名乗った覚えはない。まあ、チャロンとクリカの呼ぶ名前で知られている可能性はあるだろうが、そんなところに意識を向けているようなタイプには見えない。


「ええい、そんな細かい事はいいんだぁ!」


 細かいって言い出したのはお前だろうという突っ込みはしないであげる事にする。


「俺と相棒の力でお前のタマ取ったるでぇ!」


 犬の首元をポンポンと叩く山賊の親分(仮)を見つめて不思議に思う。


「そういえば、手下ぽいのが2人いたと思うけど、どうした?」


 すると明後日の方向を見つめる山賊の親分(仮)


 あれ?なんか聞いちゃ駄目な事を聞いたんだろうか?


 だって、こちらから見える山賊の親分(仮)の横顔に涙が伝ってるのが見えた。


「お前に2度も土に埋められて、相棒に掘り起こして貰った後、『もうアンタとは縁を切らして貰います』と言って去っていった……」


 なんかちょっと悪い事をしたような気がしてくる。


 ガチで悲しみを抱えた人のような目をして指を突き付けてくる。


「アイツ等とは10年の付き合いで、唯一の友達だったんだぞっ!」


 ごめん、本当にごめんっ!


 溢れだす涙を抑えられず、漏れそうになる嗚咽を手で必死に抑える。振り返ると嫁3人も憐憫の表情を浮かべている。


 山賊の親分(仮)の流す涙を拭うように犬が舐める。


 慰めるようにする犬を見つめる山賊の親分(仮)は感謝するようにハグする。


「俺には……お前がいたよな?」


 全力で謝るから、マジで許して!


 もう土下座しそうになってた俺の目の前では山賊の親分(仮)が犬に跨る。


「相棒と力を合わせたら、もう俺には死角はねぇ! 覚悟しやがれっ!」


 そういうと犬は俺を中心に旋回を始める。


 俺はタイミングを見て「夏の日の思い出」と叫んで発動するが、その直前でコースを変える犬。


 野生の勘ってやつか!


「クソガキ、その程度か? 所詮は無駄肉を余らせてそうな嫁を持つ凡夫だな」


 と、高らかに楽しそうに笑う山賊の親分(仮)に『夏の日の思い出』を発動するが避けられ続ける。


「そろそろ仕上げだっ」


 そういうと犬が大きく口を開けながら突進してくる。


 俺は悔しげに声と洩らし、カバンに手を突っ込み引っ張り出す。


 取り出した円盤状のモノを犬の視界におさめると真横に放り投げる。


「それ、取ってこいっ!」


 犬は急制動かけると勝ちを確信した山賊の親分(仮)を前方に吹き飛ばす。犬は飛ばされた円盤状のモノを追いかける。


 フリスビー、ワンちゃん大好き。


 吹き飛ばされた山賊の親分(仮)は地面を転がり、ふらつきながら立ち上がると嫁3人に囲まれていた。


「……私の二の腕は抓めません!」

「私のお腹が出て見えるのは体が小さいからなのだっ!」

「クリカのお尻は平均なのぉ!」


 そうか、3人もやっぱり女の子気にしてる所があるんだな


 俺は気楽な感じでそう見ていられたが見つめられる山賊の親分(仮)は堪ったものではないようである。


 逃げ道を捜す山賊の親分(仮)に後ろからチャロンが背中に手を当てる。


「ドレインタッチ」


 すると、一瞬で頬がゲッソリするのを見てドン引きする。


 それを見ていたカバンが呆れる。


「アルプの愛し子、伊達じゃないのぉ」


 どうやら、カバンが言うにはいくらユニークスキルだからといって最初からあんな強力な力を振える訳はないらしい。


 ヘナッと倒れる山賊の親分(仮)にクリカが代わって背中に手をあてる。


「気功術! なのぉ」


 そんな気の抜けたような声と共に山賊の親分(仮)の顔に生気が戻る。


「このクソチビがぁ!」


 と、飛び跳ねるように起きた山賊の親分(仮)はチャロンに襲いかかろうとするが懐に逆に入られて小さい手で額を掴まれる。


「ぬぉぉ!! 吸われるぅ」

「おお、吸う量とか調整も簡単なのだ」


 もう使いこなし始めてるの?


 俺は戦慄と共にそれを見つめる。


 吸い続けるチャロンの対面では、クリカが山賊の親分(仮)の背中を再び触れる。


「吸われてる時に回復したらどうなるかなぁ?」


 気功術を行使すると拮抗するようで現状維持をしていた。


 逃げるなら今しかないと判断した山賊の親分(仮)は2人の手から逃れると明日の為に走り出す。だが、その行き先に美砂が突然現れる。


 現れた美砂は一瞬で間合いを詰めて額に人差し指をあてると背を向ける。


 額を触る山賊の親分(仮)は「何しやがったっ!」と叫ぶ。


「ツボを押しました。動けば……ボンです」


 叫ばれた美砂は顔だけ振り返り、閉じてる手を開いてみせることで爆発を示す。


 美砂の言葉を馬鹿にした風に動こうとした山賊の親分(仮)は、すぐに顔中に汗を浮かび上がらせる。

 お腹を押さえた状態で動きを止める。


「……ずっとこのままか?」

「いえ、300秒、動かなかったら助かりますよ」


 そういうと俺に向かって何事もなかったような少女の笑顔を振り撒く美砂が、「帰りましょう」と恥ずかしげに手を取ってくる。


 チャロンもクリカもそれなりに実験の結果に満足いったようでホクホク顔をして空いてる手をチャロンが引っ張る。


 振り返ると凄まじく情けない顔をしている山賊の親分(仮)の姿に憐れみを全力で感じたがカバンが言ってくる。


「他人の心配してる場合じゃないぞ? これで確定じゃないかの?」

「何の話だ?」


 問い返す俺に呆れを隠さずに言ってくる。


「坊主は嫁達に生かさず殺さずと管理されるという事じゃ」


 そう言われた俺は逃亡を計りたくなるが両手を抑えられて逃げる事すらできそうになく乾いた笑いが込み上げる。



 そして、敢えて語るまでもない話であるが、人間って意外と簡単に死ねないという事を学ぶ事になったのは言うまでもなかった。







「200、後、100か……んっ?」


 山賊の親分(仮)の後方から相棒の犬が走ってくるのが見える。フリスビーを咥えたまま全力疾走してくるのを見て、不安に駆られる。


 興奮状態の犬は飛びかかるように山賊の親分(仮)に向かってくるのを見て叫ぶ。


「落ち着け相棒! 今はくるなっ!」


 そう叫ぶがお構いなしに飛びかかられた山賊の親分(仮)は押し倒される。


 すると卑猥な音が響き渡る。


 山賊の親分(仮)の臀部の辺りがこんもりと膨れ上がる。


「この年になって大きいほうを洩らすとか……」


 さめざめと泣く山賊の親分(仮)から距離を取り出す相棒の薄情さに我慢せずに大声で泣く。


 前回は友達を失った、そして、今回は社会的に傷を残す事になった。

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