15話
ほとんどできていたのに寝込んでいた為、遅れました。
今回の話は、ほとんど説明ばかりになりますので、分からなくなったら見に来るぐらいでもいいかもしれません。
俺達は食後のお茶を楽しんでいた。
そろそろ頃合いかと判断して3人に声をかける。
「少し、落ち着いたところで、街に着いた時にしてた話の続きをさせて貰っていいかな?」
「うんっ、ずっと気になってたのぉ」
「そうなのだ、私は、いい加減に話せと言うべきか悩んでたぐらいなのだ」
エルフ姉妹の返答を横で聞いていた美砂は、困った顔をして頬を掻く俺を見て微笑みを浮かべる。
身を乗り出す2人に、まあまあ、と落ち着かせると俺は話を始めた。
「今の俺は仕事をしていない。それは何故かは3人は分かってるよな?」
俺の言葉に3人は頷いてみせる。
美砂と出会った時とほぼ同時期にこちらの世界に来ていた為、とても仕事を探すような状態ではないことは3人とも理解していた。
「そこで、俺は冒険者ギルドのような仕事をしようと思っていた訳だが……」
「ああ、あのアウトローの互助会みたいな組織の話の? でも、それはないと言ったのだ」
チャロンの言葉に俺は「分かっている」と頷いてみせる。
それを分かったうえでの話だと、理解したようで再び、聞く体勢になった3人を見つめて話を再開する。
「モンスターがいて、ダンジョンがあって、やっぱりないのはおかしいと思うんだ。勿論、チャロン達の言葉を疑っての話じゃないからな? モンスター退治の依頼する者や、ダンジョンを探索する者は普通にいるんだろう?」
「はい、確かに、私のお父様も依頼をしているのを何度か目にしています」
俺の言葉に美砂が実家で何度も目撃していた事を証言し、チャロンもクリカもそういう事があることを知っていたので頷いてくる。
「見たり、聞いたりの話で構わない。依頼内容と中身が違ったり、依頼料で揉める事は多いか少ないかは、ともかく、問題は発生していたんじゃないのか?」
「はい、例えば、討伐する相手が依頼した内容以上のモノがいて、失敗したり、成功を収めて依頼料の上乗せで揉めるケースは多々あります」
「ダンジョン探索で得たアイテムの所有権で揉めたケースなら私も聞いた事があるのだ」
美砂とチャロンが思い出すようにしながら話してくれた。
やはり、そういう問題は付きモノのようで間違いはないようである。
「でもぉ、商人さんがアウトローさんを信じられないから私達にお願いしてきた事もあるのぉ」
「おっ、クリカ、そうなんだ、これは何も一方通行の話じゃない。確かに、立場的には依頼する側の方が強い事が多いんだが、逆もない訳じゃない。つまり、何が問題になってるか分かるか?」
考え込む3人を見つめて、俺は思う。全部、答えを言ってしまっても問題はないかもしれないが、今後、手伝って貰う事を考えるなら自分で判断できるようになって貰いたい。
3人の中で一番に理解の色を示したのは、やはりと言うべきか、美砂であった。
「信頼関係でしょうか?」
「そう、お互いに信頼しきれないし、裏切ったところで余程でない限り、罰される訳でもない。なら、お互いのグレーゾーンで自分の有利な話になるように動くのは当然だ」
俺は、美砂の言葉に頷き、答えが出かけていたチャロンは、同じように頷くだけだが、クリカはイマイチ分からずに首を傾げる。
「例えばだ、今、クリカが飲んでる果物のジュースに水で薄めて出せば、売る側は得するよな? でも、味でその差を説明できなかったら文句を言う事もできない。まあ、水で薄めるところを押さえたとかすれば話は変わるけどな」
それで、クリカにも理解したようである。
まあ、余談ではあるが、モノによっては水で薄めたほうが美味しく、飲みやすくなる場合もあるから、なんとも言えない事もあったりする。
「そこで、今の例えを利用して説明すると間に人が入って、そのジュースに水は入れられてませんでした、と保障する第三者がいたらどうだろう?」
「その為の互助会という事なのだ?」
「つまり、旦那様はその組織を立ち上げようと言われる訳ですね?」
理解の早い2人はその先の展開を口にする。説明が省けて助かる。
当然のようにクリカは着いてこれてないようであった。
「クリカ、村で言うなら、長老のような事をケンタロウはやろうとしてるのだ。交渉事の時に間に入って纏める役目なのだ」
クリカは、驚いた顔をして「ケンちゃん、長老になるのぉ? スゴイのぉ!」と勘違いをした発言が出るが、頭を抱えたチャロンが「後で、ちゃんと説明しとくのだ」と言ってきたので任せる事にした。
「具体的にどうされるのですか? いきなり、冒険者ギルド? 作りましたと言っても混乱を招くだけかと」
「それなんだが、ここに来る途中で露天商とアウトローが揉めてたのに気付いたか?」
美砂の質問に俺は質問で返す。
顔を見合わせる3人は頷いてくる。
「確か薬草の値段で揉めてたと思うのだ」
「その通り、10束、銅貨20枚の約束を取り付けていたらしいのだが、露天商が土壇場で10束、銅貨10枚と言い出して揉めていた」
3人、いや、若干、クリカはアヤしい表情をしているが、そんな話だったと思いだしたようで頷いてくる。
「値段の相場が買う側の自由になってるんだ。その基準を俺達が決めてしまおうと思う」
「さすがに、決めると言われましても買う側が選ぶ事になりますので……」
申し訳なさそうに美砂が言ってくるが、俺はあっさりと頷いてみせる。
「だよね、それは短期的な話だ。例えば、不作で小麦の値段が高騰したとして、去年は10kを銀貨1枚で買えたとしよう。不作だから銀貨2枚と言われて買わないと突っぱねる事はできるが、必要になれば、交渉に応じる相手でなければ買うしかないだろう?」
「それはそうなのだ。だからと言って……あっ!」
驚くチャロンと静かに頷く美砂は理解したようである。
明らかに分かってないクリカに俺は質問する。
「もし、クリカが商人だとして、俺が薬草10束を銅貨30枚で採ってきますよ、と仕事受注しに行けばどうする?」
クリカは、「ケンちゃんならお願いするのぉ」と言ってくる。
それも悪くない答えだが、今、欲しい答えと違ったので言い直す。
「俺だったら、という事は俺を信用してるから銅貨10枚分は高くてもいい、という話なんだろうけど、それが良く知らないアウトローだったら?」
「それなら、お断りして、違う人に頼むのぉ」
俺はクリカの答えに満足して頷く。
「それが普通だ。だから、俺達がこの街の商人達にそう言いながら仕事を受けに行ったとしても同じように断られる。だが、それが狙いなんだ。そこで、俺達がアウトロー達にウチに所属したら薬草10束で銅貨25枚で買い取りますよ、と言えば、誰に売ると思う?」
「それはケンちゃんに売るに決まってるのぉ」
それを黙って聞いていた2人は頷き、チャロンは「やっぱりそう言う事か」と理解を示すが唸る。
「旦那様、それらを長期的に買いとれる目算があると思われますが、商人も同じ金額、それ以上を提示してきたら巻き返される可能性もなくはありません。一時的に商人のほうが高くなっても、今までの事を考えれば、いつ裏切られるか分からなくても目先しか考えない者も多数いるのも事実です」
「ああ、それに対する対策も考えてる。ようするにその程度の誤差で裏切るのが馬鹿らしいと思えるモノを提示すればいいんだ」
俺の言葉に仲良くクエスチョンマークを浮かべる3人に笑みを浮かべる。
「それを説明する為に見せたいモノがあるから、部屋に戻ろうか?」
俺は食事代をテーブルに置くと席を立つとカバンに頼むぞ、想いを込めて軽く叩くと、任せろ、と言わんばかりにカバンのフタを揺らす。
それに倣って、3人も席を立つと俺の後を着いてきて、部屋に入ると椅子替わりにベットを勧める。
対面という形で1人で座る俺は、カバンから羅針盤、水平じゃない場所でも方位を知れるタイプのもので、真ん中にダウジングに使われるような糸に吊るされた石がある物を取り出す。
興味ありげに見つめる3人に笑みを浮かべる。
「説明するより、見て貰ったほうが早いから、説明は後でな?」
そう言う俺のセリフは、ちなみにカバンの言葉をそのまま言っていたりする。何故って、カバンに出して欲しいとはアバウトには頼んだが詳細を聞く前に話が進んでいる為である。
俺の言葉に頷くのを見て、まずはカバンから取り出した金属板を装置の石の真下の受け皿に置くように言われ、そして装置の頭頂部に手を置け、と指示が出たので素直に置く。
すると、糸に吊るされた石が青く輝き出すと金属板に光を照射する。振り子が勝手に触れ出して、光が当たる所を見ると文字が刻まれ始める。
そして、光が収まると取り出せという指示通りに金属板を取る。
その金属板を3人に見えるようにして説明を始める前に書かれている内容はこうである。
橘 剣太郎 ♂
職業:剣士 レベル 1 ポイント 0
称号 神のかばんの継承者 異世界人
天国と地獄を味わった者
スキル 剣術1
ユニークスキル なし
インスタントスキル なし
俺に向けられている金属板を凝視する3人に説明を始める。
「まず、名前はいいよな? 職業は、スキルに何があるかで勝手に変わるようになってる。レベルは、経験を積むと数字が上がっていくし、実際に筋力や知力なども個人差はあるが変動していく。上がるついでにポイントも加算されていく方式だ」
「鍛えたら力や頭が良くなるのは当然なのだ」
そう言ってくるチャロンに俺は答える。
「確かに言う通りだが、例えば、本を読みまくったり、解読などばかりやっていたら頭は鍛えられても体は鍛えられないよな? でも、これだと体を鍛えている者よりはだいぶ落ちるが多少なりとも強くなるんだよ」
つまり、逆も然りで、体を鍛えてあげた者も理解力が高まったり、物覚えが良くなったりする。
3人は驚き過ぎて、俺が言ってる言葉だとは思っても信じられないとばかりに表情を硬くする。
「他にも色々、疑問もあるだろうけど、後で聞くよ。次に称号だけど、これは客観的に見た時のその人を表す言葉かな?」
そう答える俺に、「客観的? 誰のぉ?」とクリカが聞いてくるから、俺は、「多分、神様じゃないか?」と笑ってみせる。
実際に、カバンが言うには本当に元々のカバンの持ち主の神様が適当に付けているらしい。つまり、カバンを使っている俺を見たうえで、『神様のかばんの継承者』と書いているところから、認められているようである。
再び、放心気味の3人に説明を続ける。
「次は、スキルの種類が3つあるのが分かると思う。ただのスキルは、自分で努力して覚えたスキル、もしくは、生まれ持ったモノ。ユニークスキルはある条件を満たせば、自分で選んだ世界で1つのスキルを覚える事ができる。そして、インスタントスキルだが、これは、必要数のポイントを消費すれば、ユニークとインスタントのスキルは無理だが、覚えている人に教えて貰うと覚えられる」
つまり、努力、才能であるスキルは他人に教える事で覚えさせる事がポイントさえあれば一瞬出来るという事である。
その凄さになんて言えばいいか分からなくなったらしく、美砂は頭を抱え、チャロンは、「そんな事ができる訳ないのだ!」などとブツブツ言い出し、クリカは目を廻してベットに倒れる。
カバンが、ユニークスキルを付けてみせて、証明したほうが早そうだと言うので、カバンの言う通りにし、勧められたスキルを付ける事にする。
「論より証拠だ。インスタントスキルはポイント消費さえすれば、何度でも取り外しは可能だけど、習う相手がいないから、ユニークスキルを付けるけど、ユニークスキルは一回付けると変えられないから、君達はしっかり考えて付けてね?」
そう言うと金属板のユニークスキルの欄をタッチすると同時に覚えるスキルを意識する。
橘 剣太郎 ♂
職業:剣士 レベル 1 ポイント 0
称号 神のかばんの継承者 異世界人
天国と地獄を味わった者
スキル 剣術1
ユニークスキル 魔人の体力
インスタントスキル なし
金属板を見せて付いたスキルを見せる。
「魔人の体力?」
首を傾げて聞いてくるクリカに俺は頷いてみせる。
「ああ、魔人のような体力が得れるスキルらしい。しかも、成長ボーナスで体力の伸びがいいらしい」
そう言うと俺は立ち上がり、ストレッチを始める。
いきなりストレッチを始めた俺を見た3人は「どうしたの?」と異口同音で聞いてくる。
「俺の体力が飛躍的に伸びた事を知って貰う為に全力疾走で走ってくるわ」
そう言って、出ていこうとする俺の両手を掴まれる。
左手を掴んだチャロンは頬を染めて目を潤ませて言ってくる。
「そんな方法より、もっと良い方法があるのだ……」
右手を掴んでいる美砂は恥ずかしげに目を背けながら言ってくる。
「もう遅い時間ですから、外は危険ですから……」
俺は鈍いという自覚はあるが、この状況を理解できないほどボンクラではない。だが、今になってカバンが何故、このスキルを勧めたか理解した。
「すまん、坊主。お前を助ける意味で勧めたが結果、死地に追いやる結果になってもーた……」
理解の遅いクリカもこういう事には頭が廻るようで、俺の腰に抱きつくと笑顔で言ってくる。
「ケンちゃんがどれだけ凄くなったか、私達が調べてあげるのぉ」
3人にベットに引きずられていく俺は、まるで乙女のような悲鳴を上げたが良い宿のようで防音は完璧だったと次の日に理解する事になった。
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